ウクライナ事情に関するニュースで何度も耳にした「sanction」の意味とは?

ウクライナ(Ukraine)がいよいよ大変なことになってきていますね。これまで何度かブログで取り上げようと思って、ちらちらニュースは見ていたのですが、なんだか状況がややこしくて、今までは記事にするのを挫折していました。

Flag of Ukraine

でも、これではあかん、と思い直し、なんとかこの状況を理解することに。注意深くニュースを聞いていると、”sanction” という単語を何度も耳にしました。下の映像でも、2回登場しています。

The United States and Europe have refused to recognize Russia’s takeover, imposing the toughest sanctions on Russia since the Cold War and threatening more. (1:11)

Russia responded with sanctions of its own. (1:26)

ポイント

“sanction” はこの場合、「制裁措置」という意味で使われています。

sanction | Macmillan Dictionary

  1. [USUALLY PLURAL] an official order to stop communication, trade, etc. with a country that has broken international law
  2. official permission for taking action
  3. a threat to punish someone for breaking a rule

(国際法を破った国に対し、やりとりや貿易などを遮断するための公的命令、という意味なんですね。3. のように、個人に対しても使われます。)

つまり、最初のくだりは「米国とヨーロッパ諸国はロシアの乗っ取りを認めず、冷戦以来もっとも厳しい制裁措置を下して脅威の姿勢を強めています」、そして次のくだりは「ロシア側も制裁措置で対抗しています」と言われていたのでした。

補足

というわけで、がんばってウクライナの状況を理解したいと思います。YouTube で “Ukraine explained” と検索し、片っ端から映像を観ていると、以下のウォール・ストリート・ジャーナル紙(@WSJ)のビデオの説明が一番腑に落ちました。

これは今から約1ヶ月前の2月19日にアップされた映像なのですが、確かに1ヶ月前はウクライナの首都キエフ(Kiev)で暴動が起こっていました。ちょうどソチ冬季オリンピック(Sochi 2014 Olympics)が開催されていた時期です。

ビデオによると、ウクライナはちょうどヨーロッパとロシアの間に位置していて、経済的・政治的には欧米に傾きつつ、国の基盤はロシアに依存しているというきわどいバランスを保っているそう。それをロシアはなんとかして自国側に全部引き寄せたいと考えていて、2008年にウクライナが NATO(North Atlantic Treaty Organization:北大西洋条約機構)加盟の意思表示をした時には、「ウクライナが NATO に入ったら核兵器そっち向けるで」と言って脅していました。

大きな変化があったのは、昨年11月です。ロシアからプレッシャーを受けて、ヤヌコヴィッチ(Yanukovych)大統領が EU 加盟交渉を打ち切りました。

EU加盟には「財政赤字が対GDP比3%以下」という条件があります。ギリシアの場合、この数字の粉飾が露見してユーロが暴落しました。ウクライナの財政は、対GDP比4%台の赤字。これを3%以下に抑えようとすれば、公務員数の削減、公共料金値上げなど、ウクライナ国民が痛みに耐えなければなりません。

こうしてEU加盟交渉が行き詰ったあと、今度はロシアから甘い誘いが来ます。

「財政支援してあげるよ。財政改革しなくていいから。天然ガスも安くしてあげるし…」

 この結果、2010年の大統領選挙では親ロシア派のヤヌコヴィッチが僅差で復活当選します。ロシアから150億ドルの財政支援を提示され、EU加盟交渉を打ち切りました。

via “ウクライナ問題はなぜ終わらないのか” 「ロシアVSアメリカ・EU」の歴史的背景とは?|経済は世界史から学べ!|ダイヤモンド・オンライン

これに親欧米派が反発し、ヤヌコヴィッチ大統領の退任を求める動きが加速。次第に激化し、3ヶ月後にはヤヌコヴィッチ大統領が武力で反撃しました。それが、キエフでの暴動シーンにつながっていったのです。結局、ヤヌコヴィッチ政権は打倒され、ウクライナには親欧米派政権が発足しました。

首相を含めて主要閣僚は、過去に政権運営したティモシェンコ元首相率いる親欧州連合(EU)派の政党「祖国」などの幹部・メンバーで占められる。トゥルチノフ大統領代行(議長)も祖国幹部。政権政党の座を追われた親ロシア派の地域党は閉め出された形で、東部や南部クリミア半島のロシア系住民の不満が高まりそうだ。

via 時事ドットコム:親EU政権発足=経済重視の実務型-ヤヌコビッチ氏、ロシア領内か-ウクライナ

すると、ロシアが介入。以下は、3月3日に CNN にアップされた映像です。

これによると、ロシアの海軍が駐屯する港で、この時期に唯一機能するのがクリミア共和国(Crimea)にあるセバストポリ(Sevastopol)なんだそう。あとの港はみんな北にあるので、寒くてアクセスできません。セバストポリは黒海に面していて、そこを通ると地中海にも行けるので便利です。そこから大西洋にも出られます。ロシアにとっては、めちゃくちゃ大事な拠点と言えます。

ウクライナ自体は、西と東でぱっくり分かれています。東側は、第一言語がロシア語の人たちが50%以上のところが多数。クリミア共和国に至っては75%以上となっています。一方、ヨーロッパに近い西側は、ロシア語を話す人たちが5%以下と、めちゃくちゃ差があります。考え方や文化も、東側はロシア寄りで、西側はヨーロッパ寄り。政治に関しても然りで、2010年の大統領選の時は、東側は多くが親ロシア派のヤヌコヴィッチ大統領に、そして西側は多くが親欧米派のティモシェンコ(Tymoshenko)さんに投票していました。

なので、ロシアが介入してきても、クリミア共和国の人たちはそれを歓迎しているそうです。

クリミアの現地のレポートによると、多数を占めるロシア系住民からは歓喜をもって迎えられているという。クリミアで行われているウクライナへの抗議デモでは、参加者が口々にロシア国旗を掲げてウクライナ新政府を打倒せよという声を挙げているとAP通信が伝えている。

via ウクライナにロシアが軍事介入する理由は? クリミア半島に武装部隊が展開

市民の生活も急速にロシア化。

クリミアの中心都市シンフェロポリでは、24日ロシア国籍を取得する手続きが本格的に始まり、地元の行政機関の前では朝から住民の長い行列ができていました。
訪れた住民は、ロシアの身分証明書の申請に必要な書類を手にして並び、受け付けの職員が1人ずつ名前を確認するなど手続きを進めていました。
行列に並んでいたロシア系の女性は「もともとロシア人ですからとてもうれしいです。クリミアはようやくロシアに戻りました」と話していました。
また地元メディアは、24日クリミアでウクライナの通貨フリブナと合わせて、ロシアの通貨ルーブルの流通が正式に始まったと伝えるなど、市民生活で急速にロシア化が進んでいます。

via クリミアでロシア化進む NHKニュース

そして、3月16日にクリミア共和国で行われた住民投票の結果、クリミア共和国はロシアに編入されることが決定しました。これに対し、欧米諸国は反発の姿勢を見せています。

ロシアがウクライナ南部クリミア半島を編入した問題で、国連総会(加盟193カ国)は27日午前(日本時間28日未明)、編入を認めないとする決議案の採決を行った。賛成100、反対11で採択された。棄権は58カ国に上った。

 総会決議に法的拘束力はないが、国際社会の政治的意思を反映したものになる。

via 国連総会:「クリミア編入認めない」決議採択 – 毎日新聞

クリミア事情はまたいろいろややこしいので、続きは翌日の『ヨムエイゴ』に回したいと思います!

※アイキャッチ画像 by By UP9 (Own work made in 3D.) [CC-BY-SA-3.0 or GFDL], via Wikimedia Commons