日系アメリカ人の故ゴードン・ヒラバヤシを描く独り舞台『Hold These Truths』
先日ジェガーさんと『Hold These Truths』という舞台劇を観てきました。
なんとこの作品、独り舞台。ゴードン・ヒラバヤシという実在の人物の幼少期から老年期までを、一人の俳優が1時間半にわたって、みっちり語り続けます。
Critics say Hold These Truths is a "must-see" and "indelibly and forcefully captures a tragic moment in our history."…
Posted by ACT Theatre on Thursday, August 6, 2015
日系アメリカ人のたたかい
ゴードン・ヒラバヤシさんは、第二次世界大戦における強制退去の違法性を訴えて米国政府相手に裁判を起こした人。シアトル生まれの日系二世で、第二次世界大戦が起こった時はワシントン大学の学生でした。
第二次世界大戦勃発後、政府は日本人に対して外出禁止令と強制収容命令を発令しますが、その対象にアメリカの市民権を有する日系人も含まれていたことに納得できず、ゴードンさんは強制収容命令を人種差別的として拒否。その結果ゴードンさんは逮捕・収監され、国を相手に裁判を起こすも、収監された翌年にあたる1943年に最高裁で敗訴が確定しました。
しかしなんと、それから約40年後の1987年の再審判決で無罪判決を獲得。2012年の他界後には、オバマ大統領によって文民最高位の勲章である『大統領自由勲章』が授与されました。
3脚の椅子だけで表現
この一連の流れを、たった一人の俳優が演じるというだけでなく、三脚の椅子だけを使って表現するというのもびっくりでした。
椅子二脚を横に並べて牢屋の扉を表現したり、椅子の上に立って裁判所の証言台を表現したり、椅子だけなのに演技と効果音が組み合わさることで情景がありありと思い浮かぶのが不思議でたまりません。
出る杭になる
あと印象的だったのは、劇の最初と最後に2度、日本のことわざ『出る杭は打たれる』が引用されたこと。英語だと “The stake that sticks up gets hammered down.” で、英語でも「杭」が使われます。
このことわざを親から聞いて育っていたゴードンさんが、周囲に同調せず「出る杭」になって正義を貫いたことに、私は彼の強靭なる精神と大いなる勇気を感じずにはいられませんでした。
今年の2月19日日付の地元シアトル・タイムズ紙に、ゴードンさんの妹さんによる寄稿が掲載されていたので、一部引用します。
40年という長い時間はかかったものの、アメリカ政府が日系アメリカ人の権利を認めた意味は大きいです。
第二次世界大戦中に強制収容させられた日系アメリカ人の数は実に12万人にも及んだと言われています。
なお、ゴードンさんの栄誉を讃え、現在シアトルで『Hirabayashi Place』という低所得者層向けアパートが建設中だそうです(12月完成予定)。
Seattle affordable housing project Hirabayashi Place gets $11M investment http://t.co/dMcQKq9cbk pic.twitter.com/Itu1CrNsF9
— Curbed Seattle (@CurbedSeattle) June 4, 2014
シアトルに住んでいながら、私はゴードンさんのことをあまりよく知らなかったので、今回この舞台劇が観られて本当に良かったです。