廃れた成功者のプレッシャーを描く映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』

先週、楽しみにしていたアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の最新作『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』を観に行ってきました。

“廃れた” 役者 VS 過去の成功

私は最初に『バードマン』というタイトルを耳にした時、てっきり新手のスーパーヒーロー映画かと思ったのですが、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』は、「20年前にスーパーヒーロー “バードマン” を演じて有名になった過去を持つ “廃れた” 役者の物語」です。

「バードマン」制作後、俳優としてのキャリアが伸び悩むリーガンは、レイモンド・カーヴァーの短編『愛について語るときに我々の語ること』を脚色してブロードウェイの舞台に仕上げ、自ら演出・主演を手がけて再起を図ろうとします。

が、主役が急遽不在となり、代わりにつかまえた人気俳優(エドワード・ノートン)は演技以外ろくでなし。人生をかけた舞台なのに、次から次へと心配事が増えていき、リーガンはプレッシャーに追い詰められていきます。

実経験に基づいたプレッシャー

俳優としてのキャリアの新境地に挑むリーガンの抱くプレッシャーは、言ってみれば、全クリエイターが抱くプレッシャー。イリニャトゥ監督自身、監督として成功した後、やはりリーガンのようなプレッシャーに襲われたそうです。リーガンの心の中には過去の成功の象徴である “バードマン” が棲みついていて、リーガンにいちいち口出ししてくるのですが、それもイリニャトゥ監督自身の経験が元になっているとのこと。

そういう意味では、過去にティム・バートン監督の『バットマン』(1989)でバットマンを演じたことのあるマイケル・キートンさんも、リーガンと立場が似ているかもしれません。リーガンが舞台『愛について語るときに我々の語ること』にキャリア人生をかけたように、マイケル・キートンさんも『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』にキャリア人生をかけたのではないかと思うほど、演技が光っています。

ほぼワンカットで撮影

そして注目すべきは、リーガンがプレッシャーで追い詰められていく様子が、ほぼワンカットで撮影されていること。撮影監督(cinematographer)は、昨年『ゼロ・グラビティ』でアカデミー賞を受賞したエマニュエル・ルベツキさん。計算しつくされたカットで、めちゃくちゃリズム感が良いです。ブロードウェイの舞台裏のごたごたと、リーガンの人生のごたごたがワンカットでうまくつながっていて、もはや芸術的

映画館で観たばかりですが、もう1回映画館で観たいです。今のところ、今年観た映画の中で No.1 です!