もはやアート!装丁家チップ・キッド & ジョン・ガルが手がけるアメリカの村上春樹作品
先日発表されたノーベル文学賞(The Nobel Prize in Literature)。
夏頃に『Haruki Murakami leads race for Nobel prize for literature(ノーベル文学賞レース、村上春樹氏がリード)』なんていう記事を目にしていたので、「おっついに」と構えていたのですが、惜しくも予想で第2位についていた中国の莫言(Mo Yan)さんが受賞するという結果になりました。
でも、アメリカでも村上春樹さんはすごく人気があると思います。今年『IQ84』が発売された時は、本屋に行くと一番目立つようなところに『IQ84』が積んであったり、村上春樹さんのコーナーが作られていたり、翻訳を務めたジェイ・ルービン(Jay Rubin)さんを招いた朗読会が開催されたりと、本屋も盛り上がっていたのを覚えています。
なんと『IQ84』のブック・トレーラー(book trailer)までありました。映画にはトレーラーがつきものですが、本もこんなんあるんですね。
『1Q84』は各国で表紙が異なります。アメリカ版の表紙を手がけているのは、装丁家のチップ・キッド(@chipkidd)さん。自らこの表紙の仕掛けについて解説してはるビデオがありました。
私は『1Q84』は未読で、あらすじすら実はあんまりよく知らないのですが、「小説で描かれる2面性を表紙とカバーで表現している」「表は青豆さんで裏はもう一人の主人公の天吾さん」「表紙をめくると、脇筋(subplot)に関係する2つの月が現れる」「ページの振り方にもこだわっている」など、パッと表紙を見ただけではわからない工夫をいろいろ聞いていると、なんだか「本を読みたい」というより「本を所有したい」気持ちになってきます。
チップ・キッドさんが手がけてはるのは主にハードカバーですが、ハードカバーとペーパーバックの装丁もこれまた異なります。村上春樹さんのペーパーバックのデザインを主に手がけているのはジョン・ガル(@llagj)さん。以下、左がチップ・キッドさん担当のハードカバー、右がジョン・ガルさん担当のペーパーバックの表紙です。
個人的にはチップ・キッドさんの『ねじまき鳥クロニクル(The Wind Up Bird Chronicle)』とジョン・ガルさんの『アフターダーク(After Dark)』のカバーがめちゃくちゃ好きです。『アフターダーク』は確かドット部分が光っていた記憶があります。『1Q84』同様、本屋で見て「読みたい」というより「手に入れたい」欲望に駆られた本の一つです。
ちなみにチップ・キッドさんはハリウッドでも映画化された『ジュラシック・パーク(Jurassic Park)』や手塚治虫さんの『ブッダ(Buddha)』など、他にもいろいろな本の装丁を手がけてはります。
TED Talk でもさまざまな本の装丁について語ってはるのですが、先ほどのビデオで『1Q84』について語ってはった時はすごく真面目な雰囲気が出ていたのに対し、この TED Talk のチップさんは派手でジョーク飛ばしまくり。眼鏡も『1Q84』のビデオの時と一見同じですが、よく見るとフレームが右側だけありません。ファンタジー・コメディ系の映画に出てきそうな風貌です。
日本語字幕付きはこちら→ チップ・キッド 「笑い事ではないけど笑える本のデザインの話」| TED Talks
チップ・キッドさんもジョン・ガルさんも、公式サイトにいくともっともっとたくさんの作品が見られるので興味があったらぜひ覗いてみてください。額縁に入れて飾りたいようなものがたくさんあります。
チップ・キッドさん公式サイト→ GOOD IS DEAD
ジョン・ガルさん公式サイト→ JG
ちなみにチップ・キッドさんは大のバットマン好きでも知られています。そのため彼はスーパーヒーローの作品の装丁もたくさん手がけていて、同じくバットマン好きのジェガーさんもチップ・キッドさんが装丁した本をたくさん読んでいました。『1Q84』の装丁について解説してはるビデオも、よく見るとチップ・キッドさんの背後にバットマンが見えています。