小津安二郎を敬愛するヴィム・ヴェンダース監督が1983年の東京を訪ねるドキュメンタリー映画『東京画』

現在 NYFF ことニューヨーク映画祭(New York Film Festival)が開催中(9/28-10/14)で、来週10/20からは TIFF こと東京国際映画祭Tokyo International Film Festival)が始まりますが、わが家では今 YOFF を開催中です。


Setsuko Hara and Yasujiro Ozu in Tokyo Story

(映画『東京物語』撮影中の原節子〔左〕と小津安二郎監督)

“Yaujiro Ozu Film Festival” こと、小津安二郎映画祭。小津安二郎さんといえば、代表作の一つでもある『東京物語』が今年、英国映画協会(BFI)発行の Sight & Sound 誌 による「批評家が選ぶ映画史上最も素晴らしい映画トップ10(The Critics’ Top 10 Greatest Films of All Time)」で第3位、「映画監督が選ぶ映画史上最も素晴らしい映画トップ10(The Directors’ Top 10 Greatest Films of All Time)」で堂々1位に選ばれました。

この時に「そういえばうちら小津さんの作品って『東京物語』しか知らんな〜」という話になり、約3ヶ月前に YOFF をスタートさせた次第。映画史上に残る傑作を世界中から集めたクライテリオン・コレクション(The Criterion Collection)が昨年から動画配信サービス hulu で観られるようになり、その中に小津作品がたくさん含まれていたので、それを観るところから始めました。

これまで観てきたのは

  • 『東京の合唱(Tokyo Chorus)』(1931)
  • 『大人の見る繪本 生れてはみたけれど(I Was Born, But…)』(1932)
  • 『一人息子(The Only Son)』(1936)
  • 『父ありき(There Was a Father)』(1942)
  • 『晩春(Late Spring)』(1949)
  • 『麦秋(Early Summer)』(1951)
  • 『お茶漬の味(Flavor of Green Tea Over Rice)』(1952)
  • 『東京物語(Tokyo Story)』(1953)
  • 『早春(Early Spring)』(1956)
  • 『東京暮色(Tokyo Twilight)』(1957)
  • 『彼岸花(Equinox Flower)』(1958)

など。初期作品など観られないものも多いのですが、観られる作品はとりあえず全部観る予定です。

まだいくつか残っている作品があるので YOFF はまだ続く予定ですが、小休止に特別企画として、『パリ、テキサス(Paris, Texas)』(1984)や『ベルリン・天使の詩(Wings of Desire)』(1987)で知られるヴィム・ヴェンダース(Wim Wenders)監督が、小津安二郎作品の面影を求めて東京を訪ねる『東京画(Tokyo-Ga)』(1985)というドキュメンタリー映画を先日観てみました。

『東京物語』からちょうど30年後の1983年の東京。ヴィム・ヴェンダースさん本人のナレーションのもと、彼と一緒に当時の東京を見て回ると、今の東京とももちろん違いますが、『東京物語』の頃の東京とはもっと違うことに気づかされます。その中でヴィム・ヴェンダースさんが特に興味を示すのはパチンコ、ゴルフの練習場、食品サンプル、原宿の竹の子族など。

食品サンプルは、よくお店のショーケースに並んでいる料理のサンプルのことですが、これはジェガーさんも日本に行った時にめちゃくちゃ反応してたのでおもわず笑ってしまいました。私なんかずっと日本にいたのに、いやずっと日本にいたからか、特に気にしたことがなかったのですが、ジェガーさんにしてみると「なんで食べもん飾ってあるん!?ってこれ本物そっくりの偽物やん!」という衝撃だったみたいです。ヴィム・ヴェンダースさんも食品サンプルの製造会社に見学に行き、そこで1日中見学してはります。

東京を巡るだけでなく、小津安二郎作品のほぼ全てに出演している俳優・笠智衆さんや、長年にわたって小津安二郎さんのカメラマンを務めていた厚田雄春さんにインタビューもしてはります。

1993年にヴィム・ヴェンダース監督が小津監督について語っているビデオでも、笠智衆さんと厚田雄春さんのことが触れられていました。

私は日本の外に出るまで、アメリカで最も知られている日本の映画監督は黒澤明さんだと思っていて、事実最も知名度のある監督は黒澤さんだと思いますが、小津安二郎監督は映画監督や映画好きの人に特に愛されている印象があります。

私もジェガーさんも YOFF を通してすっかり小津安二郎さんのファンになりました。一通り作品を観たら、また小津さんについて書きたいと思います。