映画『アメリカン・スナイパー』に関する記事で目にした「veteran」や「vet」の意味とは?

1月下旬頃からプライベートがやたら慌ただしく、現在ひーひーなんですが、どんなに忙しくても映画だけは観ています。

先日はクリント・イーストウッド(Clint Eastwood)監督の最新作『アメリカン・スナイパーAmerican Sniper)』(日本は2月21日公開予定)を観ました。

この映画は、戦争映画として歴史的大ヒットを記録中。

「アメリカン・スナイパー」の北米累計興行収入は2億4890万ドルと、スティーブン・スピルバーグ監督の「プライベート・ライアン」(1998年)をかわして戦争映画の収入記録も塗り替えた。全世界での累計興行収入は3億1620万ドルに達した。

via 「アメリカン・スナイパー」が3週連続首位―北米映画興行収入 – WSJ(2.2.2015)

同時に、賛否両論も呼んでいます。

しかし、この映画は別に必ずしも「160人を殺したスナイパーの名手」を英雄的に取り上げているわけではありません。むしろ私には、「人は戦地で160人もの人間を殺すとどうなるか」をテーマにした映画のように見えました。

『アメリカン・スナイパー』は、実在のスナイパーであるクリス・カイル(Chris Kyle)さんの同名の回顧録が原作。カイルさんはイラク戦争に4度遠征し、退役後 PTSD に悩まされていたと言われています。

いろいろ関連記事を見ていると、ワシントンポスト誌の記事が目に留まったので、読んでみました。

すると、”veteran” という単語を何度も目にしました。

Yet the troubling connection between war veterans, mental illness and acts of violence is persistent.

via Trial of Eddie Routh, killer of Chris Kyle, will be darkest chapter of ‘American Sniper’ – The Washington Post

中には “vet” と表記されているところもありました。

“More than ever before, there’s a recognition that these issues can have a profound effect on behavior and are profoundly affecting men and women who have no criminal history and no history of violence,” Deutsch said of vets with PTSD.

via Trial of Eddie Routh, killer of Chris Kyle, will be darkest chapter of ‘American Sniper’ – The Washington Post

ポイント

“veteran” は、戦争にまつわる文脈では「退役軍人」や「兵役経験者」という意味で使われることが多いです。”vet” と短く表記されることもあります。

veteran | Longman Dictionary

  1. someone who has been a soldier, sailor etc in a war
  2. someone who has had a lot of experience of a particular activity

(2. は「経験豊富な人」という意味で、日本語でも「ベテラン」と言いますね!)

つまり一文目は、「しかし退役軍人と精神病、暴力行為の関係性は根強い」、そして二文目は、「〔『Justice for Vets』の〕ドイチュ氏は PTSD を抱えた退役軍人について、『これらの問題が人の振る舞いに深い影響を与えること、そして実際犯罪歴や暴力歴のない男女に深い影響を与えていることが、今まで以上に認識されている』と語る」と書かれていたのでした。

補足

というわけで、詳しく読んでみたいと思います。

The circumstances of Kyle’s death aren’t discussed in detail in the Oscar-nominated biopic, which mostly focuses on Kyle’s career as one of the country’s most praised and skilled snipers.

(カイルの死をとりまく状況については、オスカー候補のこの自伝作の中では詳しく触れられない。映画は、我が国で最も讃えられ、最も実力があるとされたスナイパーのキャリアにほとんど焦点が当てられている。)

via Trial of Eddie Routh, killer of Chris Kyle, will be darkest chapter of ‘American Sniper’ – The Washington Post

そんなカイルの命を奪ったのは戦闘地の銃弾ではなく、若い退役軍人エディー・ルース(Eddie Routh)の発砲した銃弾でした。この退役軍人も、戦闘地に赴いた後、PTSD を患っていたと言われています。

Routh’s many troubles were the very reason Kyle and Littlefield were in contact with him. Kyle’s trip to the Rough Creek gun range that day was likely part of an effort to help Routh deal with his post-traumatic stress disorder.

(ルースの抱えていた多くの問題こそ、カイルとリトルフィールドが彼にコンタクトを取った理由そのものだった。その日カイルは、ルースが心的外傷後ストレス障害と向き合うのを助ける一貫として、ラフ・クリークの銃射撃場へ出かけていた。)

via Trial of Eddie Routh, killer of Chris Kyle, will be darkest chapter of ‘American Sniper’ – The Washington Post

2014年の調査によると、PTSD とアルコール問題の両方を抱えるイラク戦争およびアフガン戦争の退役軍人は、それらの問題がない退役軍人よりも、深刻な暴力をふるう確率が7倍も高いことがわかったそうです。

エディー・ルースの公判はちょうど今月開始予定。映画が大ヒットした影響もあり、注目が集まっています。

His lawyer, J. Warren St. John, will reportedly pursue an insanity defense. But St. John has already questioned whether he can get a “fair trial” while a blockbuster film about one of the men his client killed plays in theaters nationwide.

(彼〔エディー・ルース〕の弁護士を務める J・ウォーレン・セント・ジョン氏は、彼が狂気的だったという弁護を貫くと見られている。しかし同氏は、被害者の一人を描いた大ヒット映画が国中の映画館で上映されていることで、「公正な裁判」に対する疑問を呈している。)

via Trial of Eddie Routh, killer of Chris Kyle, will be darkest chapter of ‘American Sniper’ – The Washington Post

PTSD の症状はさまざまで、エディー・ルースの場合は躁鬱や悪夢などを抱え、8種類の薬を処方していたと報じられています。

Though not everyone does, some people with PTSD experience flashes of anger as a symptom. When anger on rare occasions turns to violence, it could be because the person is experiencing a flashback, which might to them seem like a potent hallucination, Foa said.

(必ずしも全員にあてはまるわけではないが、PTSD の症状の一つには、一瞬の激しい怒りがある。稀に怒りが暴力に変われば、それは当人がフラッシュバックを経験しているとも言え、彼らにとっては強い幻覚症状のようなものが起きている可能性がある、と〔ペンシルベニア大学の精神学者である〕フォーは言う。)

via Trial of Eddie Routh, killer of Chris Kyle, will be darkest chapter of ‘American Sniper’ – The Washington Post

クリス・カイルにも「一瞬の激しい怒り」は表れていて、映画でもその様子が何度も描かれていました。

戦闘地から戻ってきたら、元の穏やかな生活に戻れるのかと思いきや、帰還後も目に見えない戦いに挑み続けるというのは、戦争の与える影響がいかに深いかを感じさせます。

そしてイーストウッド監督は、そのあたりのことをよく映画で取り上げています。たとえば『父親達の星条旗(Flags of Our Fathers)』(2006)は、星条旗を打ち立てる有名な写真「硫黄島の星条旗」(Raising the Flag on Iwojima)の被写体となって英雄視された兵士たちのその後などが描かれる作品でした。

また、『グラン・トリノGran Torino)』(2008)は、朝鮮戦争を経験した退役軍人が主人公になっています。

私は『父親たちの星条旗』は観ましたが、『グラン・トリノ』は未見なので、そちらもぜひ観たいと思います。