開拓者たちの実話が元になった壮絶すぎる映画『レヴェナント: 蘇えりし者』
昨年『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』でアカデミー賞作品賞を受賞したアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の最新作『レヴェナント:蘇えりし者』。
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』とはまた趣向の異なる、開拓者たちと先住民族の抗争を描く物語なんですが、私は「イリニャトゥさん、またやってくれましたか」という感じで、新年早々、至高の映画体験を味わうことができました!
主人公は実在した開拓者
この映画は、マイケル・パンク著の同名の小説『(レヴェナント 蘇えりし者)』が元になっています。小説の主人公は、実在した開拓者、ヒュー・グラス(Hugh Glass)さん。
英題は『The Revenant』で、”revenant” は「亡霊」という意味です。
映画は “Inspired by true events” ということで、全てが現実に忠実に基づいているわけではありませんが、ヒュー・グラスさんが熊に襲われて瀕死の状態になり、仲間に見捨てられたところは、実際にあった出来事だそうです。
ヒュー・グラスさん、壮絶すぎます。
ディカプリオの迫力
このヒュー・グラスさんを演じているのがレオナルド・ディカプリオさんで、「見捨てる仲間」を演じているのがトム・ハーディさん。トム・ハーディさんと言えば野生キャラで、彼に野生キャラを演じさせれば、右に出る者はいません。この映画でも、もはや獣にしか見えません。
でも、そんなトム・ハーディさんをさらに凌ぐ野生キャラと化しているのが、ディカプリオさん。なんせ、野牛(bison)のレバーを生で食べてますから。以下のインタビューによると、演技じゃなく本当に食べたそうです。
でも、ディカプリオさんがこの映画で本当に凄いのは、セリフがほとんどないところ。特に前半は瀕死状態で口がきけないこともあり、ほとんどの演技がボディ・ランゲージでこなされています。以下のシーンでもディカプリオさんは一言も発していませんが、壮絶な演技で、もはや神がかっています。
撮影監督はエマニュエル・ルベツキ
壮絶な演技を支える過酷な自然も、この映画の重要なポイント。撮影監督は『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』でもイリニャトゥ監督と組んだエマニュエル・ルベツキさん。
この映画でもカットが計算し尽くされていて、全編にわたって広角レンズが使用され、壮絶な人間ドラマの背後に厳しい自然が必ず目に入るように工夫されています。
予告編を観た時は、ひげもじゃのディカプリオさんとひげもじゃのトム・ハーディーさんを見て「男臭そうでもっさい映画やな」と思っていましたが、この映画はもはや映画ではなく芸術作品です。イリニャトゥ監督、2年連続アカデミー賞狙えるのではないでしょうか。
追記(2.28.2016)
第88回アカデミー賞で、『レヴェナント:蘇えりし者』は惜しくも作品賞を逃しましたが、主演俳優賞、監督賞、そして撮影監督賞の3冠を達成しました!
レオナルド・ディカプリオさんのスタンディング・オベーション、感動です。