元日本マイクロソフト CEO で慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授・古川享氏講演会レポート

私の参加している SIJP(Seattle IT Japanese Professionals)というグループで、今月緊急講演会が開催されました。ゲストは、元日本マイクロソフト CEO で慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授である古川享(@SamFURUKAWA)さん。

古川さんは、マイクロソフトが年に一度開催している世界最大の学生向け IT コンテスト『Imagine Cup 2014(イマジンカップ)』のために今回シアトルを訪れていらっしゃったそうです。

今回の Imagine Cup には世界 34 カ国から、7,491 作品の応募がありました。各国の予選を勝ち抜いた 33 チームが世界大会での最終決戦に臨みます。Imagine Cup 2014 世界大会のメイン会場はワシントン大学の予定です。世界大会の優勝チームの賞金は $50,000 (約 510 万円)。さらに、マイクロソフト創設者、ビル・ゲイツに直に自分たちの作品を伝える場が用意されます。

via Imagine Cup – 教育機関の皆様へ

講演会のタイトルは『若者たちの描く未来に期待する』ということで、私もわくわくしながら行ってきました。

古川さんは、1979年にアスキーに入社。当時大学生だったそうですが、「大学を卒業する頃にはアスキーは大きな会社になっているだろうから、(入社したくても)入れないと思うよ」と言われ、大学を中退して入社したそうです。取締役に就任し、月間アスキーの副編集長を務める一方で、プログラマも2年間経験。会場にはメールマガジン『週刊 Life is beautiful』でも有名な中島聡さんもいらっしゃったのですが、2人が出会ったのは、なんと中島さんがまだ学生の時だったそう。

慶応義塾大学大学院教授の古川享氏(元マイクロソフト会長)も「PCが8ビットのころは優秀なプログラマーの自負があった」という。だが16ビット時代は大学生のバイトに負けた。当時アスキーにバイトで入って来た中島聡さん(その後、マイクロソフトでWindows95、Windows98、Internet Explorer 3.0/4.0 のチーフアーキテクトを務めた)が書いているコードが読めなくなった」のだ。古川氏いわく26〜27歳のころである。

via 「最先端でなくていい、当たり前のことをやろう」古川享氏が若手プログラマーに檄 – TechCrunch

古川さんは1986年にはマイクロソフトの日本法人を設立し、初代代表取締役社長に就任。その後1991年に代表取締役会長就任を経て、2000年には米マイクロソフトの副社長に。2005年に退社されるまで、渡米回数は実に400回あまりに及んだそうです。

そんな古川さんが若者に伝えたいのは、「未来は予測するものではなく、自らの手で創るもの(The best way to predict the future is to invent it)」ということ。「パーソナル・コンピュータの父」とも呼ばれるアラン・ケイ(Alan Kay)氏の有名な言葉です。

古川さんは最新技術を次々に紹介しながら、予測された未来ではなく、今現在創られつつある未来をたくさん見せてくださいました。中でも私が特に面白いと思ったのは、『Nordstrom Innovation Lab』。『Nordstrom』はシアトル発祥の高級デパートで、個人的には「大丸」のような感じかなと思っています。実際、大丸とノードストロームは提携もしています。

そんなノードストローム社が実験的に行っているのが、店舗発の開発プロジェクト。以下のビデオでは、店舗で開発者やデザイナーがセールス員とタッグを組み、顧客からフィードバックをもらいながら、自分に合ったサングラスを見つけるための iPad アプリを1週間で完成させる様子が紹介されています。

古川さんが現在教授を務めていらっしゃる慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科でも、学生が卒業までに何か社会に役立つものを出すということで、これまでクラウドファンディング・サイトの『READYFOR?』や色覚補助ツール『色のめがね』などが世に出ているそうです。

色のめがね

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私は、古川さんがどうして IT 業界から教育の道に進まれたのか、個人的にとても興味があったのですが、”pay it foward”、つまり利益を自分ではなく次の人に渡すという信念を大事にされていると聞いて、とても納得が行きました。

古川さんと中島さんの関係にも、古川さんのその信念は表れている気がします。古川さんは中島さんに、「成功して欲しいからあらゆるチャンスをあげたい」と思っていらっしゃるそうです。

では、たとえば私が「成功して欲しいからあらゆるチャンスをあげたい」と誰かに思ってもらうためにはどうすれば良いのか。古川さんの答えは、「人にはない自分の優位性を語れる人間になること」。そのために必要なのは、エレベーター・ピッチができるかどうかだそうです。エレベーター・ピッチとは、たとえば私がエレベーターの中でたまたま憧れの人に会った時に、目的の階に着くまでの30秒間にどれだけ自分のことを印象深くアピールできるかということ。それができる人は、確かにどんな世界でも生き残って行ける気がします。

私は講演後、中島さんと古川さんにそれぞれご挨拶する機会が持てて、まさにエレベーター・ピッチをするチャンスをつかんだのですが、つい緊張してしまってうまく自分のことを印象付けられませんでした。中島さんの前では赤面して声が上がってしまい、古川さんに至っては、帰り際のところを「古川さ〜ん!」と追いかけてお呼び止めして恥ずかしくなってしまいました。

古川さんは「『名前を残すとしたら?』と言われたら、『私は鉄道写真家です』と答える」とおっしゃっていて、中島さんも「私もメルマガ作家・中島聡として名前を残したい」とおっしゃっていましたが、私もお二人のように、ブロガーとしていろいろな人に自分の名前を覚えてもらいたいと思っています。

そのために私も、どんな人の前でもうまく自分のことを伝えられるようになろうと思います。

追記

古川さんと一緒に出張で来られていた、ねとらぼの太田智美(@tb_bot)記者も、同じ講演会を別の視点から記事に切り取っていらっしゃいます!