薬物中毒に関する記事で何度も目にした「relapse」の意味とは?

スーパーボウルの日の朝、ジェガーさんが友人と楽しそうに電話しながら「今日スーパーボウル観るん?」などと話しているのをにこにこ眺めていたら、突然ジェガーさんが「うそやん!」とひきつりました。



電話を切った後も神妙な顔つきをしているので、「何かあったん?」と聞くと、「ホフマンさんが他界したらしい」

「えっ、ホフマンさんって・・・!?」
「フィリップ・シーモア・ホフマン(Philip Seymour Hoffman)」
「!?」
Philip Seymour Hoffman

(By Wolf Gang [CC-BY-2.0], via Flickr

急いでニュースをチェックしてみると、本当です。しかも、原因は、薬物中毒。ここ最近、薬物中毒で亡くなる有名人があまりにも多すぎます。

いろいろ記事を読んでいると、『Philip Seymour Hoffman’s drug death: The science of addiction, recovery, and relapse.| Slate』という記事があったので、読んでみました。

すると、”relapse” という表現が何度も出てきました。

If anything, the science on relapses is even more slippery.

via Philip Seymour Hoffman’s drug death: The science of addiction, recovery, and relapse.

One truism of addiction science is that long-term abuse rewires your brain and changes its chemistry, which is why triggers (or “associated stimuli,” in scientific parlance) are major risk factors for relapse.

via Philip Seymour Hoffman’s drug death: The science of addiction, recovery, and relapse.

ポイント

“relapse” は「再発、逆戻り」という意味です。

relapse | Merriam-Webster Dictionary

  1. the return of an illness after a period of improvement
  2. a return to bad behavior that you had stopped doing

(病気にも、行動にも使われるんですね!)

つまり、一文目は「どちらかといえば、再発に関する科学はより不確実だ」、2文目は「中毒に関する科学において一つ真実なのは、長期間にわたる依存が脳を麻痺させて変質させていること。そのため、きっかけ(あるいは、科学用語でいう「関係性刺激」)が再発の主な危険因子となっているのだ」と書かれていたのでした。

やたら「科学」が登場していますが、筆者はマサチューセッツ工科大学(MIT)のアソシエイト・ディレクターで、サイエンス・ライティングを教えているそうです。

補足

というわけで、この記事によると、フィリップ・シーモア・ホフマンさんは、22歳の時に一度ドラッグをやめて以来、23年間ドラッグには手を出していなかったとのこと。

During that time, he won an Academy Award, was nominated for three more, and was widely cited as the most talented actor of his generation. He also became a father to three children. Then, one day in 2012, he began popping prescription pain pills. And now he’s dead.

(その間、彼はアカデミー賞を受賞し、3回以上ノミネートされ、同世代で最も才能あふれた俳優として広く認識された。3児の父にもなった。その後、2012年のある日、彼は痛み止めの薬を飲み始めた。そして、彼は他界した。)

via Philip Seymour Hoffman’s drug death: The science of addiction, recovery, and relapse.

国立薬物乱用研究所(National Institute of Drug Abuse)の『Extended Abstinence is Predictive of Sustained Recovery』という図によると、「5年経っても中毒でなければ、おそらくその状態のまま」だそうですが、それは必ずしも「ずっと永遠に」ということではなく、だいたい8年くらいの期間を指すそうです。

記事では、そこから筆者自身の体験談が語られていきます。

My first attempt at recovery came in 1991, when I was 19 years old. Almost exactly two years later, I decided to have a drink. Two years after that, I was addicted to heroin. There’s a lot we don’t know about alcoholism and drug addiction, but one thing is clear: Regardless of how much time clean you have, relapsing is always as easy as moving your hand to your mouth.

(私が最初に回復を試みたのは1991年、19歳の時でした。丸2年後、私は酒を飲むことにしました。そしてその2年後、私はヘロイン中毒になりました。アルコール中毒やドラッグ中毒について、私たちの知らないことはたくさんあります。でも、一つ確かなのは、どれだけ長い間関わらない期間があったとしても、再発というのは常に、手を口に持っていくのと同じくらい簡単なことなのです。)

via Philip Seymour Hoffman’s drug death: The science of addiction, recovery, and relapse.

2011年8月、筆者は長年過ごしたニューヨークを離れ、生まれ育った街ボストンに戻ります。その時筆者は39歳で、妻と1歳半の子どもがいました。本を3冊出版していて、賞も受賞していて、ちょうど MIT で教え始めるところでした。

ボストンに戻ることは、筆者にある過去を思い出させたそうです。1995年から1997年まで、筆者は IV ドラッグ中毒でした。ボストンに戻ったことで、筆者は毎日そのことを思い出したそうです。そしてある日、PCP の過剰摂取で、筆者は ER に運ばれてしまいます。

Most adults with jobs and mortgages and spouses and kids can have a glass of wine after work. For me, a glass of wine is a gateway to my past—and that past provides a pretty robust pool of evidence that there’s not much separation between my having a drink and my ending up alone in an apartment with a needle in my arm.

(仕事や住宅ローン、配偶者や子どもを抱えている大人の多くは、仕事の後ワインを1杯飲むでしょう。私にとっては、グラス1杯のワインは過去につながるきっかけになります。その過去は、お酒をたった1杯飲むこととアパートで一人腕に針をさして生涯を終えることはたいして変わらないという極めて強固な証拠をつきつけるのです。)

via Philip Seymour Hoffman’s drug death: The science of addiction, recovery, and relapse.

この文で「アパートで一人腕に針をさして生涯を終える」という書き方になっているのは、フィリップ・シーモア・ホフマンさんの発見時の状況を指しています。

フィリップ・シーモア・ホフマンさん自身、23年間もドラッグと無縁でいて、どうしてまたドラッグに手をつけてしまったかというと、処方薬を飲み始めたことがきっかけだったそう。

記事を書いた筆者も、かつて住んでいた街に戻っただけで記憶が呼び覚まされ、気がついたら ER に運ばれていた、と書いているので、本当何がきっかけになるかわからないというのがめちゃ怖いです。

一度中毒になったら、やめれば安心というわけではなく、やめ続ける努力をしなければならないんですね。

Drugs.com というサイトには、薬物関係の死因で他界した有名人の名前がずらっと掲載されています。

Yeah Age Name Occupation Cause of Death
2014年 46歳 フィリップ・シーモア・ホフマン 俳優 ヘロイン過剰摂取(未確定)
2013年 31歳 コリー・モンティス 俳優(『Glee』) ヘロインとアルコールの併合摂取
2012年 48歳 ホイットニー・ヒューストン 歌手 溺死(コカイン中毒と心臓病の併発)
2011年 27歳 エイミー・ワインハウス 歌手 アルコール中毒
2009年 50歳 マイケル・ジャクソン ミュージシャン 心不全(さまざまな薬物が検視で発見)
2008年 28歳 ヒース・レジャー 俳優 偶発的な薬物過剰混合摂取
1994年 27歳 カート・コバーン ミュージシャン 拳銃自殺(体内からヘロインなど検出)
1993年 23歳 リバー・フェニックス 俳優 ヘロインとコカインの過剰摂取
1977年 42歳 エルヴィス・プレスリー ミュージシャン 心臓不整脈(複数の処方薬の混合摂取が原因か)
1970年 27歳 ジャニス・ジョプリン ミュージシャン ヘロインの過剰摂取
1962年 36歳 マリリン・モンロー 女優・シンガー 自殺(睡眠薬過剰摂取)

ちなみに、薬物関連の死因で最も多いのは、コカイン、次いでアルコールだそうです。