レスリング金メダリストの悲劇を描いた映画『フォックスキャッチャー』

先日、『フォックスキャッチャー』という映画を観てきました。

実在のレスラーに起きた悲劇

1984年のロサンゼルス・オリンピックで金メダリストとなったレスリング選手のマーク・シュルツさんと、その兄で同じくレスリング金メダリストのデイヴ・シュルツさんに起こった悲劇を描く、実話を元にした映画です。

悲劇は、ある一本の電話から始まります。電話をかけてきたのは、「デュポン財閥」の御曹司、ジョン・デュポン(John du Pont)でした。

デュポン財閥とは

デュポン社は世界第三位の化学会社で、世界90ヶ国に70,000人の従業員を持つ。アメリカではロックフェラー、メロンに並ぶ三大財閥として知られている。1799年にフランス革命を避けフランスからアメリカに移住したエルテール・イレネ・デュポンが火薬工場としてデュポン社を設立。高品質、徹底した安全管理によって事業は成功し、南北戦争によってデュポン社は巨大な富を得た。第一次世界大戦、第二次世界大戦でも火薬を供給し、20世紀には化学会社に進出。合成ゴムや合成繊維など数々の新素材を開発。調理器具に使われるテフロンもデュポン社の商標である

フォックスキャッチャー

映画のタイトルである “フォックスキャッチャー” は、このジョン・デュポンが結成したレスリング・チーム。そこに加わって次のソウル・オリンピック制覇を目指さないかと持ちかけられたマークさんは、破格の年棒を提示され、まさに “This is it.” と思うわけです。ところがそこから、少しずつ歯車が狂っていきます。

個人的には、コメディアン俳優としての活動が目立っていたスティーヴ・カレルさんのコメディ要素ゼロの演技に鳥肌が立ちました。アカデミー賞主演俳優賞にぜひノミネートしていただきたいです。

監督もレスリングを経験

監督は、『カポーティ』(2005)や『マネーボール』(2011)を手がけたベネット・ミラーさん。監督自身、もともとレスリングをしていて、州チャンピオンでもあったそうです。

以下の Variety 誌のインタビューで語ってはりますが、マークの兄デイヴを演じたマーク・ラファロさんもかつてレスリングをされていたとか。道理で、やたらレスリングの動きがしなやかだったわけです。

フォックスキャッチャー』は、第67回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)で監督賞(Award for Best Director)を受賞。アカデミー賞のノミネートも有望視されています。

本物のマーク・シュルツさんが反発

一方、この作品に関してはちょっとした問題もありました。本物のマーク・シュルツさんが、Twitter でこの作品に物申したのです。

どうやら、マークさんとジョン・デュポンの間に性的関係があったのではないかと解釈した映画レビューに傷つき、そのような誤解を招く描写をしたミラー監督に立腹した様子。

多くのツイートは現在削除されていますが、以下のリンクから詳細と共に見られます。相当怒っています。

マークさんは11月に『Foxcatcher: The True Story of My Brother’s Murder, John du Pont’s Madness, and the Quest for Olympic Gold』という本を出版していますが、この本は映画とは直接関係ありません。

マークさんも、「真相を知りたかったから本を読むように」と自著を推してはります。

個人的には、どのシーンなのか全く心当たりがありません・・・!