先日、クリント・イーストウッド監督の最新作『アメリカン・スナイパー』を観ました。
この映画は、戦争映画として歴史的大ヒットを記録中。
同時に、賛否両論も呼んでいます。
しかし、この映画は別に必ずしも「160人を殺したスナイパーの名手」を英雄的に取り上げているわけではありません。むしろ私には、「人は戦地で160人もの人間を殺すとどうなるか」をテーマにした映画のように見えました。
実在のスナイパー
『アメリカン・スナイパー』は、実在のスナイパーであるクリス・カイルさんの同名の回顧録が原作。カイルさんはイラク戦争に4度遠征し、退役後 PTSD に悩まされていたと言われています。
退役軍人と PTSD
そんなカイルの命を奪ったのは戦闘地の銃弾ではなく、若い退役軍人エディー・ルースの発砲した銃弾でした。この退役軍人も、戦闘地に赴いた後、PTSD を患っていたと言われています。
2014年の調査によると、PTSD とアルコール問題の両方を抱えるイラク戦争およびアフガン戦争の退役軍人は、それらの問題がない退役軍人よりも、深刻な暴力をふるう確率が7倍も高いことがわかったそうです。
PTSD の症状はさまざまで、エディー・ルースの場合は躁鬱や悪夢などを抱え、8種類の薬を処方していたと報じられています。
クリス・カイルにも「一瞬の激しい怒り」は表れていて、映画でもその様子が何度も描かれていました。
戦闘地から戻ってきたら、元の穏やかな生活に戻れるのかと思いきや、帰還後も目に見えない戦いに挑み続けるというのは、戦争の与える影響がいかに深いかを感じさせます。
イーストウッド監督と退役軍人
そしてイーストウッド監督は、そのあたりのことをよく映画で取り上げています。たとえば『父親たちの星条旗』(2006)は、星条旗を打ち立てる有名な写真「硫黄島の星条旗」(Raising the Flag on Iwojima)の被写体となって英雄視された兵士たちのその後などが描かれる作品でした。
また、『グラン・トリノ』(2008)は、朝鮮戦争を経験した退役軍人が主人公になっています。
私は『父親たちの星条旗』は観ましたが、『グラン・トリノ』は未見なので、そちらもぜひ観たいと思います。