映画『ゼロ・グラビティ』の賞賛レビューで目にした「out of this world」の意味とは?

2週間更新を休んでいる間、あまり映画は観ていなかったのですが、唯一観たのが例のゼロ・グラビティGravity)』(日本は12月13日公開予定)。

Gravity


相当期待して行ったのですが、その期待を陵駕する映画体験でした。

批評家たちも大絶賛ということで、公開当初から話題になっていましたが、改めて有名批評家たちのレビューを読んでみると、「out of this world」という単語を何度か目にしました。

e 90-minute movie has been getting universally positive reviews since its premiere at the Venice Film Festival in August — both for the acting and its out-of-this world visuals.

via Movie critics drawn to “Gravity” | CBS News

Gravity’ is out of this world.

via Movie critics drawn to “Gravity” | CBS News

ポイント

“out of this world” は「この世のものとは思えない」という意味です。

out of this world | Macmillan Dictionary

out of this world: [INFORMAL] extremely good or impressive

(良い意味で使われるんですね!”out of the world” も同じ意味になります!)

つまり、一文目は「8月のベネチア国際映画祭でプレミア上映されて以来、90分のこの映画は世界的に高い評価を受けている — 演技も、そしてこの世のものとは思えないビジュアルもだ。」、二文目は「『ゼロ・グラビティ』はこの世のものとは思えない」と書かれていたのでした。

補足

ということで、改めて有名批評家たちのコメントを紹介したいと思います。

Kenneth Turan, Los Angeles Times: “‘Gravity’ is out of this world. Words can do little to convey the visual astonishment this space opera creates. It is a film whose impact must be experienced in 3-D on a theatrical screen to be fully understood.”

(ケネス・トゥーラン @KennethTuran、LA タイムズ紙:『ゼロ・グラビティ』はこの世のものとは思えない。この宇宙のオペラが織りなす視覚的驚きは筆舌に尽くし難い。劇場の大画面で、かつ 3D で体験しなければ、完全には理解できない映画である。)

via Movie critics drawn to “Gravity” | CBS News

ジェガーさんと私も、当初はこの映画を近所の映画館で観る予定だったのですが、「『ゼロ・グラビティ』を観るなら、普通の映画館で観たらあかんで。面白みが激減するから。同じお金を払うなら、絶対に IMAX の 3D で観るべき」という友人たちの助言を聞き入れて IMAX & 3D で鑑賞しました。

今なら友人たちの助言がものすごくよくわかります。なぜなら、ストーリーはあくまでベーシックだからです。普通の映画館で、あるいは 2D で観たら、「こんなもんか」と思ってしまう危険性があります。

でも、この映画は、2D で観るようには作られていないと思います。2D で観るのはもったいないです。

では、「視覚効果」だけの映画かというと、そうでもありません。ニューヨーク・タイムズ紙の A.O. スコットさんが良いことおっしゃっています。

A.O. Scott , New York Times: “Mr. Cuaron succeeds by tethering almost unfathomably complex techniques — both digital and analog — to a simple narrative. ‘Gravity’ is less a science-fiction spectacle than a Jack London tale in orbit… All of it — terrifyingly and marvelously — evades summary and confounds expectations. You have to see it to believe it.”

(A.O. スコット @aoscott、ニューヨーク・タイムズ紙:キュアロン監督は、デジタルもアナログも両方含め、不可解なほど複雑な技術をシンプルな物語に融合させることに成功している。『ゼロ・グラビティ』は、SF スペクタクル映画というよりは、ジャック・ロンドン放流記だ。恐ろしいほど見事に全く先が読めず、期待をかき乱す。観なければ信じられるものではない。)

via Movie critics drawn to “Gravity” – CBS News

確かに物語はシンプルなのですが、この映画のすごいところは、まさに視覚効果が物語と完璧に融合しているところ。これまでの 3D 映画は、毎年クオリティは上がっていましたが、やはりどうしても「加えた」感が否めなかったところはありました。

ところが、『ゼロ・グラビティ』は、まるで BGM のように 3D を効果的に使っています。自然すぎて、全然意識しないのです。自分もまるでそこにいるかのような、浮遊感覚を味わいます。2D や家の小さい画面では、絶対に体験できない感覚だと思います。

Mick LaSalle, San Francisco Chronicle: “To compensate for what he can’t express with his face and body, Clooney amps up his personality and puts everything into his voice, and to marvelous effect…. As for Bullock, it’s a role that requires displays of warmth, relief, grief, regret and stark, shrieking terror, and she is up for every moment of it.”

(ミック・ラサール、サンフランシスコ・クロニクル紙:顔や体で表現できない分、クルーニーは陽気に、声で全てを表現している。そして素晴らしい効果をもたらしている・・・一方、ブロックの役柄は温かみや安心、嘆き、後悔、苛酷さ、身の毛もよだつ恐ろしさ、全てを必要とし、彼女は一瞬一瞬それらに立ち向かっている。)

via Movie critics drawn to “Gravity” – CBS News

これも良いコメントやな〜と思います。個人的には、サンドラ・ブロックも相当良かったですし、彼女はきっとアカデミー賞主演女優賞にノミネートされる気がしますが、ジョージ・クルーニーも本当良かったです。エンターテイメント・ウィークリー誌(@EW)のレビュー記事『Gravity Movie Review | EW.com』(10.17.2013)に、「ジョージ・クルーニーが(トイ・ストーリーの)バズ・ライトイヤーに面白いくらいそっくり」と書かれていて爆笑したのですが、宇宙飛行士の彼はまさにバズ・ライトイヤー。冒頭のシーンなんて、バズ・ライトイヤー並に飛びまくってはります。

最後に、AP 通信のジョスリン・ノヴェックさんのコメントを。

Jocelyn Noveck, Associated Press: “What you can’t know, until you’re in the theater, is just how much you’ll feel like you’re up there in space, feeling its vastness, perhaps even feeling cold. And how you might let yourself forget, momentarily, that this movie wasn’t shot on location. And how you’ll ask yourself, how did they DO this? And how you’ll then forget the question, because you’ll be caught up once again in this 90-minute thrill ride.”

(ジョスリン・ノヴェック、AP 通信:映画館に入るまでわからないのは、自分がどれだけ宇宙にいる感覚を味わい、宇宙の広大さや冷たさまでも感じるか。一瞬、この映画が現場で撮影されたものではないことを忘れるか。そしてどうやって撮ったのか不思議に思うも、また90分の絶叫マシーンに乗ってその疑問のことも忘れてしまうか。)

via Movie critics drawn to “Gravity” – CBS News

私はこの作品を観た後、自分の感じた感動と衝撃をうまく言葉に言い表せず、もどかしい思いをしていたのですが、さすが批評家の方々は言葉にするのが巧みです。

読みながら、「そうそう、まさにこんな感じ」と深くうなずいていました。

細かいところなど、突っ込みどころはいろいろあると思いますし、そういう記事もたくさん見ましたが(via TIME, etc.)、3D 映画としての完成度はすこぶる高いです。3D 映画に批判的なジェガーさんも、「初めて心から 3D 映画も良いと思ったわ」と言っていました。
ポスタ- A4 パターンC ゼロ・グラビティ 光沢プリント
この世のものとは思えない映画体験を望むなら、ぜひ IMAX で、3D での鑑賞をおすすめします!