アン・マリー・スローターの論文『女性は仕事と家庭を両立できない』で目にした「assumption」の意味とは?
あちこちで話題になっていたのに、長くて読むのが後回しになっていたアン・マリー・スローター(Anne-Marie Slaughter)の論文『女性は仕事と家庭を両立できない(Why Women Still Can’t Have It All)』を、「ブログに書くんや!」という気力でもって、なんとか読破しました。
全文→ Why Women Still Can’t Have It All | The Atlantic
その中で何度も目にした単語が、”assumption”。
The first set of reactions, with the underlying assumption that my choice was somehow sad or unfortunate, was irksome enough.
A similar assumption underlies Facebook Chief Operating Officer Sheryl Sandberg’s widely publicized 2011 commencement speech at Barnard, and her earlier TED talk, in which she lamented the dismally small number of women at the top and advised young women not to “leave before you leave.”
But looking back, I have to admit that my assumption that I would stay late made me much less efficient over the course of the day than I might have been, and certainly less so than some of my colleagues, who managed to get the same amount of work done and go home at a decent hour.
None of these changes will happen by themselves, and reasons to avoid them will seldom be hard to find. But obstacles and inertia are usually surmountable if leaders are open to changing their assumptions about the workplace.
What assumptions is the employer likely to make about the marathon runner?
Be honest: Do you think the employer makes those same assumptions about the parent?
Our assumptions are just that: things we believe that are not necessarily so.
Fortunately, changing our assumptions is up to us.
But now is the time to revisit the assumption that women must rush to adapt to the “man’s world” that our mothers and mentors warned us about.
“assumption” が出てきた文を抜粋してみましたが、思ってたよりめっちゃありました!
ポイント
“assumption” は “assume” という言葉から派生しています。
- a belief or feeling that something is true or that something will happen, although there is no proof
- the act of taking or beginning to have power or responsibility
(1. は根拠なしに本当だと思うことから「仮定」や「思い込み」という訳になるんですね!任務や義務を「引き受けること」という意味でも使われるのは知りませんでした。)
これを踏まえてあらためて先ほど羅列した例文をチェックしてみると、すべて 1. の意味で使われていることがわかります。
補足
というわけでこの論文、とにかく長くて途中「同じ行を何度も繰り返して読んでしまう病」が再発しましたが、苦労して読む価値はあったので、私なりに要点をまとめてご紹介したいと思います。
この論文は、アン・マリーさんが米国務省政策企画本部長(director of policy planning at the State Department)就任中に「女性は仕事と家庭を両立できない(Women Can’t Have It All)」という思いに至り、2年間激務をこなしたあと未練なく元のプリンストン大学(Princeton University)教授に戻ったという、彼女自身の経験を述べるところから始まります。
アン・マリーさんも、かつては「女性は仕事と家庭を両立できる」と思い、講義でもそれを促していたそう。でも実は、彼女の世代はたとえ仕事と家庭のストレスに押しつぶされそうになっても、次の世代のためにフェミニスト信条にしがみついてきたんです、と彼女は打ち明けます。
Women of my generation have clung to the feminist credo we were raised with, even as our ranks have been steadily thinned by unresolvable tensions between family and career, because we are determined not to drop the flag for the next generation.
これだけ読むと「あきらめ論」を展開しているようにも見えますが、彼女の趣旨はそこではありません。今の状況での両立は難しいけど、条件が整っていれば仕事と家庭を両立することは可能、と言ってはります。ではどんな場合に両立は可能になるのか、それを彼女は3点に分けて紹介しています。
- 一生懸命になりすぎない場合(It’s possible if you are just committed enough.)
- 適切な人と結婚する場合(It’s possible if you marry the right person.)
- 順序づけが正しい場合(It’s possible if you sequence it right.)
これまでは仕事と家庭が両立できないのはやる気が足りひんからや、と捉えられがちだったけれども、そうじゃなくて女性のやる気だけではどうにもならないような「ありふれた」問題(頻繁な出張、学校と仕事の噛み合わないスケジュール、オフィスにいる必要など)をなんとかせなあかんのや、ということを言ってはります。
これは「ただ家事に協力するだけじゃなくて、場合によっては仕事よりも家族のことを優先できる」考えを持つ人の存在が重要で、そういう人たちを後押しする社会の態勢が必要とのこと。
ここでは主に子どもを産むタイミングについて語られています。彼女のおすすめは、まずキャリアを確立させてから、35歳までに子どもを産むこと。ジェガーさんと私も同じ考えです。実際そんなうまくいくんかな〜とも思いますが。
では、どうしたらこれらの条件を揃えることができるのか。それについてもアン・マリーさん、今度は6ポイントに分けて説明してはります。
- 人に直接会う文化を見直す(Changing the Culture of Face Time)
- 家族の価値を見直す(Revaluing Family Values)
- キャリア・パスを見直す(Redefining the Arc of a Successful Career)
- 幸せについて見直す(Rediscovering the Pursuit of Happiness)
- 国を変える(Innovation Nation)
- 男性の協力を得る(Enlisting Men)
仕事をいつやるか、どこでやるか、そしてどのようにやるかについての規定をもう一度見直すべき、とのこと。今の時代、テレビ電話やメールやチャットなど、いろいろツールは揃っているので、電話会議や在宅ワークも不可能なことではありません。ただし、両立に奮闘する人だけを待遇することにならないよう注意する必要があるそう。
ここでは雇用主が育児にかかる労力を軽視しがちであることを指摘してはります。私自身、子どもがいないからか、たまに自分に想像力が足りないなと思う時があります・・・(反省)でも育児話を聞くのは好きなので、普段から積極的に耳を傾けるようにはしています。
このキャリア・パス見直し案、かなり具体的です。まず20代半ばから70代半ばまで働くと仮定して、22歳から35歳までに最初のキャリアを確立し、子どもが欲しい場合は25歳から45歳までの間に産み、子どもが8歳〜18歳の多感な時期に最も自由に動けるように仕事を調整し、子どもが手を離れた時点で権威のあるポジションに就くというもの。彼女によると、20代後半で子どもを産む人は40代後半で仕事に本格復帰後、50代後半から60代前半にかけて重要な職務に就くことが可能だけれども、先にキャリアをしっかり確立させて30代後半で子どもを産んだ人も、ほぼ同じ年齢で本格復帰できるようにするべき、とのこと。また、キャリア・パスを一気に駆け上がっていくことを目指さず、仕事から少し距離を置かざるをえない時はそれを「自分への投資期間」と前向きにとらえるようにした方が良いとも語ってはります。そのためには周囲も、彼女たちがキャリア・アップから身を引いたと考えるのではなく、一時休止中であることを理解する必要があるそう。
女性は社会で男性と同じ評価を受けるためにこれまで一生懸命努力してきましたが、同時にそのために多くの犠牲も払ってきました。これからはよりバランスの取れた人生を手に入れるために、力のある女性がまず中心になって今の状況を変えていく必要があると彼女は言っています。
優秀でやる気のある女性を手放すことは会社の資本を減らし、新人の訓練や相談に再び労力を投じなければならないリスクを含むことや、育児や趣味を通してさまざまな価値観と出会うことが、かえって仕事に良い影響をもたらす可能性があることなども私たちは考慮すべきと言ってはります。
男性がここ数十年で育児にかなり積極的になっていることや、フルタイムで働く母親に育てられた世代の登場によって、家族のサポートに理解を示す男性が増えていることを挙げ、彼らの協力のもと、女性は「男性と同じように生きる」というこれまでのキャリアの築き方を今一度見直すべき時にある、と言って締めくくってはります。
いや〜、一部抜粋しただけでもかなりあります。
彼女はとにかく、「力のある女性が積極的にロール・モデル(role model)となっていくべき」と繰り返していて、代表的ロール・モデルの一人としてミシェル・オバマ(Michelle Obama)夫人を挙げていました。
She moved from a high-powered law firm first to Chicago city government and then to the University of Chicago shortly before her daughters were born, a move that let her work only 10 minutes away from home. She has spoken publicly and often about her initial concerns that her husband’s entry into politics would be bad for their family life, and about her determination to limit her participation in the presidential election campaign to have more time at home. Even as first lady, she has been adamant that she be able to balance her official duties with family time. We should see her as a full-time career woman, but one who is taking a very visible investment interval. We should celebrate her not only as a wife, mother, and champion of healthy eating, but also as a woman who has had the courage and judgment to invest in her daughters when they need her most. And we should expect a glittering career from her after she leaves the White House and her daughters leave for college.
ミシェル・オバマさん、昨日の演説も大絶賛で株上げまくりですが、確かに彼女はライフワーク・バランスの良い参考になりそうです。
もう一人、個人的に私が気になるのは、妊娠中に Yahoo! の CEO に就任した元 Google のマリッサ・メイヤー(Marissa Mayer)さん。彼女は来月出産予定ですが、やっぱり子どもが産まれてもスーパーウーマンぶりを発揮し続けるのでしょうか。
※追記〔10/2/2012〕:9/30に男の子を出産されました!via CNN Money
女性が社会進出を果たして久しいですが、男女がお互い心地よく仕事をして満足に暮らせるように、さらに上の段階に向かう時が来ているのかなと思います。
この記事についての各国の反応は、こちらに詳しく書かれていました→ 「女性は仕事と家庭を両立できない」——世界の反応は?| クーリエ・ジャポンの現場から(編集部ブログ)
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