料理評論家ルース・ライクルさんの回想録で目にした「exhilarating」の意味とは?

先日『二郎は鮨の夢を見るJiro Dreams of Sushi)』(日本は来年2月2日公開)のインタビュー記事を紹介した時に登場した、ニューヨークのカリスマ・シェフ、ダニエル・ブールー(Daniel Boulud)氏。最初その名前を見た時はすぐにピンと来なかったのですが・・・

Garlic and Sapphires

彼の経営するレストランの一つ『Daniel』の名前を見て、はっとしました。以前読んだ本に『Daniel』が登場していたのです。

その本とは、料理評論家(food critic)ルース・ライクル(Ruth Reichl)が著した回想録『Garlic and Sapphires: The Secret Life of a Critic in Disguise』。
Garlic and Sapphires: The Secret Life of a Critic in Disguise
もともとロサンゼルス・タイムズ紙(Los Angeles Times)で働いていた彼女。その鋭い批評が注目を集めてニューヨーク・タイムズ紙(The New York Times)から誘いを受け、転職することになりますが、ニューヨーク行きの機内で隣の席の女性に「ニューヨーク中のレストランが警戒して店に顔写真を貼っている」と教えてもらいます。そこで彼女のとった作戦は、自分がルース・ライクルだとばれないように変装して(disauise)レストランに行くこと。そうして、”無名の人” として、また “ルース・ライクル” として何度も店に足を運び、影響力のある批評を次々と発表していくのです。

この回想録には、彼女が変装する過程から変装してレストランに行く様子、そして実際に彼女が書いたレビューまでが収められているのですが、『Daniel』のレビューの箇所を改めて読んでみると、出だしにこんな風に書いてありました。

A GREAT RESTAURANT is like a race-horse: it may take a while to discover its style, but once it does the ride is exhilarating.(p176)

ポイント

“exhilarating” という言葉は私はこちらに来るまであまり馴染みがなかったのですが、文章を読んでいると意外に結構出てきます。

「爽快な」という意味で、この場合は素晴らしいレストランを競走馬にたとえて、「持ち味を把握するまでは時間がかかるかもしれないけど、一度乗り慣れてみると乗り心地は爽快だ」ということを語っています。

exhilarating | Oxford Advanced Learner’s Dictionary

exhilarating: very exciting and enjoyable

※補足:exciting, thrilling or exhilarating?(”exciting” “thrilling” “exhilarating” の違い)

Exhilarating is the strongest of these words and exciting the least strong. Exciting is the most general and can be used to talk about any activity, experience, feeling or event that excites you. Thrilling is used especially for contests and stories where the ending is uncertain. Exhilarating is used especially for physical activities that involve speed and/or danger.

(強さの度合いでは exhilarating > thrilling > exciting となっていて、exciting が一番使える範囲が広いみたいです。thrilling はコンテストや物語など、結果が不確かな時によく使われ、exhilarating は体を使う活動に使われることが多いそう。だから和訳も「爽快な」となるんですね〜)

補足

実はこの文章、さらに続きがあります。

Daniel, a year and a half into the race, has finally hit its stride.(p176)

「『Daniel』は開店後1年半にしていよいよ本領を発揮してきた」という主張につながっているんですが、この “stride” は「hit one’s stride(本調子になる)」というイディオムと、馬の「歩幅」の2つの意味が掛け合わさっています。

hit one’s stride | Dictionary.com

hit one’s stride: Achieve a steady, effective pace

This expression comes from horse racing, stride alluding to the regular pace of the horse.

(もともとこの表現自体、競馬から来ているんですね。確かに馬っていきなり全力疾走するわけじゃなく、徐徐に早くなっていきますもんね!)

ライクルさんの文章はこんなふうに比喩が上手に使われていて、想像力をかきたてます。もともとはシェフを目指していたそうですが、ここまで生き生きとした文章を書くところをみると、ライターになったのは大正解だったんじゃないかと思うほど。シェフを目指していたというだけあって、調理法や食材に対する知識も豊富なので、いろいろ勉強になります。

ちなみに、辛口批評で有名なライクルさんの『Daniel』に対する評価は、満点の ★★★★ でした。

ライクルさんも舌を巻くダニエル・ブールー氏の料理、ぜひいつか味わってみたいものです。

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