全編 iPhone で撮影された映画『タンジェリン』

先日ジェガーさんと映画『タンジェリン』を観てきました。

全編 iPhone で撮影された映画

ハリウッド界隈のトランスジェンダーの売春婦のコミュニティを描くこの映画。役者自身もトランスジェンダーなんですが、私は最初2人がそうだと全然気がつきませんでした。ストーリーはなかなか強烈で、登場人物もみんな強烈です。

でも、ジェガーさんと私がこの映画を観たいと思った理由の一つは、この映画が全編 iPhone で撮影されたと聞いたから。しかも最新の iPhone 6 ではなく、iPhone 5S で撮影されたそうです。

監督が iPhone で映画を撮るコツを解説

ショーン・ベイカー監督が語る iPhone 映画撮影のコツは3つ。

iPhone をしっかり固定させる

レンズがとても小さいため、撮影中はどんなに手ブレしていないと思っていても、大画面に映し出すと若干の手ブレでもかなりクオリティが劣って映るそうです。

ちなみに監督が使った三脚は『Tiffen』という会社の『Steadicam Smoothee』というもの。

音質にこだわる

音も iPhone で録画しようとすると、ホームビデオ状態になってしまいます。監督は、音はプロのサウンドマンを起用し、後で映像とシンクさせるという手法を取っています。

実際、映画を観ていた時も、「ああ、確かにこの映像は iPhone っぽいな」と感じることはありましたが、音がとても良いので、後半は映画が iPhone で撮影された事実をすっかり忘れるくらい映画に集中することができました。

画質にお金をかけなくても、音にはお金をかけろ、というのが映像編集の鉄則です。

iPhone だからできることを模索する

iPhone の良いところは、小さくて使いやすいところ。本格的なカメラ機材ではないからこその使い方、撮影方法が iPhone にはあります。それを徹底的に研究することで、伝統的な映画撮影では実現しにくい構図などを実現させることができるのは iPhone のメリットと言えます。

個人的には、ハリウッドの日常のやや薄汚い風景に、この iPhone の少し粒の粗い映像がまたとても良くマッチしていたようにも感じました。たとえばこれがニューヨークのオシャレなビル街などだったら、逆にもっと安っぽい映像に見えていたかもしれません。これも監督たちの狙いだったとしたら、恐れ入ります。

監督たちは、iPhone の映像にさらに工夫を加えるべく、『Moondog Labs』社の特殊レンズも活用。このレンズはクラウドファンディングサイトの『Kickstarter』で制作されたものです。

監督が iPhone での映画撮影に実際に使った機器類

焦点や絞り値、色温度調整などは『FiLMiC Pro』というアプリを使ったそうです。

プロが「あえて」iPhone を使って撮影することで、iPhone の可能性がまた広がったように思います!

教材としても観る価値あり