伝統的ホラー映画の手法に基づいた映画『イット・フォローズ』
ニューヨーク・タイムズ紙の『Anatomy of a Scene』というコラムシリーズをご存知ですか?
最新映画の1シーンを監督本人が分析するというもので、最近観た話題のホラー映画『イット・フォローズ 』をデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督自身が解説していたので、さっそく観てみました。
動画の中で話されていますが、『イット・フォローズ 』は、ここ最近のモキュメンタリー(疑似ドキュメンタリー)手法を取り入れた斬新なホラー映画と異なり、伝統的ホラー映画の手法に基づいて制作されています。
ファイナル・ガール
「伝統的なホラー映画の手法」と言えば、以前ジェガーさんが『Men, Women, and Chainsaws: Gender in the Modern Horror Film 』という本を読んでいて、その本で提示される「ファイナル・ガール」のコンセプトを説明してくれたことがありました。
ハリウッド製のホラー映画やパニック映画には、
「数かずの困難を克服し、最後までひとりだけ生きのびる女性」
がしばしば登場します。こうした女性キャラクターは、映画研究者のあいだでは『ファイナルガール』とよばれています。『悪魔のいけにえ』や『ターミネーター』、『バイオハザード』のヒロインが、「ファイナルガール」の代表的な例です。
『Men, Women, and Chainsaws: Gender in the Modern Horror Film 』では、この「ファイナル・ガール」はたいてい処女であり、男女どちらにも使われる名前(あるいは男性らしい名前)を持っていると言われています。
『イット・フォローズ 』の主人公も、名前は「ジェイ(Jay)」。ジェガーさんもミドルネームが「ジェイ」なので、「ジェイ」は男女どちらにも使える呼び方と言えるでしょう。
また、ジェイはとてもピュアな女の子。19歳の大学生で、以下の予告編の冒頭では、初めての恋人とのデートに胸を躍らせる場面が描かれます。
全ての映画が「ファイナル・ガール」の条件に完全に合致するとは言えませんが、『イット・フォローズ 』は確実に「ファイナル・ガール」を意識していると思われます。
連続する恐怖の刺激
『イット・フォローズ 』の「何かが後をつけてくる」というアイデアは、ミッチェル監督が9〜10歳の頃に何度も見た悪夢が元になっているそうです。
Mitchell is clearly a horror fanboy, and It Follows serves as both an homage to films that inspired him, and a continuation of their tradition of favoring simmering tension over constant spikes of stimulation.
(ミッチェルは明らかにホラー映画ファンで、『イット・フォローズ』は彼に影響を与えた作品に対するオマージュであり、連続する刺激を通して緊張状態を生み出す伝統的手法の継承でもある。)
そんなミッチェル監督の最も好きなホラー映画は、ジョージ・A・ロメロ監督作『ゾンビ (Dawn of the Dead)』(1978)。
また『イット・フォローズ 』は、ホラー映画で恐怖を煽る重要な要素の一つでもある音楽にシンセサイザーが使われていますが、シンセサイザーといえばホラー映画の巨匠、ジョン・カーペンター監督。ミッチェル監督の好きなホラー映画のもう一本も、やはり『ハロウィン (Halloween)』(1978)だそうです。
最近、リメイク以外でこういうホラー映画らしいホラー映画を観ていなかったように思うので、逆に新鮮でした。
でも、この映画が夢だったら、確かにめっちゃ怖いです。