脚本家・橋本忍が語る!名作『七人の侍』と『切腹』の意外な接点

今週『スラングで使われる「2nite」「tonite」の意味とは?』という記事で、「地元の映画館でヒッチコック映画特集が開催されている」と書きましたが、その前は別の映画館で “総合格闘技映画祭”(『Fists & Fury』)という、これまたマニアックな映画特集が開催されていました。

Fists & Fury

ラインアップは、ブルース・リー(Bruce Lee)さんの名作『燃えよドラゴン(Enter the Dragon)』(1973)から、クエンティン・タランティーノ(Quentin Tarantino)監督の『キル・ビル(Kill Bill)』シリーズ(2003 & 2004)、黒沢明監督作品までさまざま。マイナーな作品も目白押しです。

ジェガーさんと私はその中から一本だけ観ることに決めてあれこれ議論を深め、なんとか1本選びました。それが、小林正樹監督の映画『切腹(Harakiri)』(1962)。

最初ジェガーさんに「ハラキリ」と言われた時は、その響きからついインチキくさいチャンバラ映画を想像してしまったのですが、映画『切腹』は第16回カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞作。仲代達矢さんをはじめ、丹波哲郎さんや三國連太郎さん、岩下志麻さんなど錚々たるキャストが揃っています。

時は寛永七年。井伊家上屋敷に芸州福島の浪人、津雲半四郎と名乗る男が姿を現した。「窮迫の浪人生活で生き恥を晒すより、潔く腹を掻っさばいて相果てたいゆえ、玄関先を拝借したい」。その申し出を受けた井伊家家老の斎藤勘解由は、かつて同じように訊ねてきた千々岩求女という浪人がいたことを想い出していた。切腹を迫る勘解由。切腹を前にして、半四郎の口から語られる驚愕の物語とは…。徳川末期の武家社会を背景に、切腹というしきたりが引き起こす侍の悲劇、封建制度のなかで行き場を失った人間の哀しさを現代的な感覚で描き切った異色傑作時代劇。

via 切腹 | あの頃映画 the BEST

徳川末期の、もはや争いのない太平の世で、格差の広がる武士社会。追いつめられた浪人の心境と、それを知る由もない武家屋敷の人間の間の温度差が際立っていて、不気味です。徳川末期の武士道の行く末を、もはや滑稽とも言えるほど痛快に皮肉っています。

Hulu で公開されていた脚本の橋本忍さんのインタビューによると、橋本さんはもともと黒沢明監督と「武士の一日」をテーマにした作品を制作する話をしていて、そのあらすじが「武士が登城の間際にささいなミスをおかして自宅に戻り、切腹する」というものだったそう。

その後、その作品は紆余曲折を経て、『七人の侍』として完成。

でも、橋本さんは切腹に対する興味を失わず、滝口康彦著『異聞浪人記』を読んで再び切腹のことを思い出し、脚本執筆に至ったそうです。

脚本を書き始めた時は『七人の侍』のうちの一人が監獄に入れられて出てきて切腹するところ」をイメージしていたそうですが、そこから「切腹の座についた侍の恨み節」をふくらませ、最終的に『切腹』として完成。まさか『七人の侍』と『切腹』にそんな接点があったとは思いも寄りませんでした。

(Hulu の映像は日本からご覧になれない可能性があります。)

また、もう一つ Hulu で公開されていた仲代達矢さんのインタビュー映像によると、当時仲代さんは30歳。映画を観ると、30歳とは思えない迫力と重厚感のある演技に驚くばかりですが、以下のインタビューを観てさらに驚いたのは、殺陣のシーンに使われている刀が全て本物だったということ。あの凄まじい緊張感は、リアルだったんですね!

(Hulu の映像は日本からご覧になれない可能性があります。)

仲代さんと小林さんは、名作『人間の条件(The Human Condition)』(1959-1961)でもタッグを組んでいるので、今度はジェガーさんとそっちも観てみたいです。

・・・が、『人間の条件』は全篇9時間半超えという脅威の作品。私たちも決死の覚悟を持って映画鑑賞に挑む必要がありそうです。