名作『七人の侍』と『切腹』の意外な接点
先日、地元の映画館で開催されていた “総合格闘技映画祭”(『Fists & Fury』)というマニアックな企画で、小林正樹監督の映画『切腹(Harakiri)』(1962)を大画面で観賞する機会に恵まれました。
第16回カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞作
最初ジェガーさんに「ハラキリ観よう」と言われた時は、その響きからついインチキくさいチャンバラ映画を想像してしまったのですが、映画『切腹』は第16回カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞作。仲代達矢さんをはじめ、丹波哲郎さんや三國連太郎さん、岩下志麻さんなど錚々たるキャストが揃っています。
徳川末期の、もはや争いのない太平の世で、格差の広がる武士社会。追いつめられた浪人の心境と、それを知る由もない武家屋敷の人間の温度差が際立っていて、不気味です。徳川末期の武士道の行く末を、もはや滑稽とも言えるほど痛快に皮肉っています。
「武士の一日」から派生
Hulu で公開されていた脚本の橋本忍さんのインタビューによると、橋本さんはもともと黒沢明監督と「武士の一日」をテーマにした作品を制作する話をしていたそうです。そのあらすじが、「武士が登城の間際にささいなミスをおかして自宅に戻り、切腹する」というものだったそう。
その後、その作品は紆余曲折を経て、『七人の侍』として完成しました。
でも、橋本さんは「切腹」に対する興味を失わず、滝口康彦著『異聞浪人記』を読んで再び切腹のことを思い出し、脚本執筆に至ったそうです。
脚本を書き始めた時は『七人の侍』のうちの一人が監獄に入れられて出てきて切腹するところ」をイメージしていたそうですが、そこから「切腹の座についた侍の恨み節」をふくらませ、最終的に『切腹』として完成。
まさか『七人の侍』と『切腹』にそんな接点があったとは思いも寄りませんでした!
いやむしろ、この名作2本の脚本家が同一人物ということが、何よりもの驚きです。