名作パズルゲーム『ポータル』をご存知でしょうか。空間移動ができる「ポータル」を作って部屋に仕掛けられたパズルを解き、次の部屋に進んで行くというゲームです。パズルゲームが好きな私も、ジェガーさんと一緒に一時期はまりました。
『ポータル』はただのパズルゲームではなく、物語性も込められています。特にファンが愛してやまないのが、「グラドス(GLaDoS’)」と呼ばれる冷徹なコンピューターの声。Siri の愛想がないバージョンという感じで、淡々と嫌みを投げかけてくるのですが、この声にはまる人が続出しました。
その「グラドス」の声を担当している声優さんに、私は会ったことがあります。
夫婦共に声優
それは、あるパーティーに参加した時のこと。ジェガーさんの知り合いのご夫婦と盛り上がっていると、ふと「この人がグラドスの声の人やで」と紹介されて、びっくり。目の前で「ふふふ」と笑う穏やかな女性は、どっからどう見ても冷徹な「グラドス」とイメージが一致しません。
しかも、旦那さんもゲーム『チームフォートレス2』というゲームに出てくるスナイパーの声の人だと聞いてさらにびっくりしました。
ジェガーさんと二人の繋がりのきっかけは、ジェガーさんが二人を取材して記事にしたこと。この記事で紹介している引用は、すべてジェガーさんが書いた Motherboard の記事『GLaDOS and The Sniper: A Voice Acting Love Story』のものです。
元は音楽家と女優
2人とも、もともと声優だったわけではありません。夫のジョン・パトリック・ローリーさんは元音楽家で、妻のエレン・マクラインさんは元ブロードウェイ女優。2人の出会いは、ブロードウェイ・ミュージカル『ショウ・ボート(Show Boat)』のヨーロッパ・ツアーでした。
そのミュージカルでヒロインのマグノリア役を務めたのがエレンさん。ジョンさんは舞台下のオーケストラ団の中にいたそうです。ところが楽団員よりも俳優の方が稼ぎが良いことを知ったジョンさんは、俳優のオーディションに挑戦。見事役柄を勝ち取り、アンディ船長の代役として舞台に出たのがジョンさんの初舞台となりました。(ジョンさんはオーケストラ団の中でバンジョーを弾いていて、バンジョーを舞台の上に持ち込むアイデアを提案したそうです。)
それでジョンさんとエレンさんは恋に落ちますが、2人には大きな障害がありました。なんと、2人ともそれぞれ婚約者がいたのです。でも、どちらも婚約者と別れる決断をし、2人は一緒に。
そんなドラマチックな展開ってほんまにあるんや、という感じですが、その後2人は現在に至るまで、28年間仲睦まじく過ごしておられます。
偶然から生まれたグラドス
シアトルには特にあてもなく移って来たそうですが、シアトルはゲーム業界のメッカの一つ。まもなく2人の才能はゲーム制作者に発見されました。
ところが結果的に、エレンの声で人工知能に人間味が出たことで、ゲームのストーリーも大きく進化。伝説のエンディングシーンで流れる『Still Alive』という曲も、エレンさんが歌っています。(ネタバレが気になる人は閲覧にご注意ください。)
コンピュータの声として定着
このゲームで彼女の声は一躍有名となり、映画『パシフィック・リム』(2013)にも登場。
NASA とのコラボレーションまで実現しています。
実は密かに、『Portal』の制作元 Valve の留守番電話の声も、エレンさんだそうです。
そんなエレンさん、実は『Still Alive』以外にもう一曲、ジョンさんと作曲してはりました。その曲も現在 YouTube でも聞けるようになっています。
ジェガーさんと私も、ジョンさんとエレンさんのように、時代の流れに柔軟に適応できる夫婦であり続けたいです。
ジェガーママから "If Riho was a squirrel." というメッセージとともにこの写真が送られてきました。異論はありません。
ツカウエイゴさんの投稿 2015年4月8日水曜日