非エンジニアにも読んで欲しい!『エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢』

シアトルで IT の仕事に関わる日本人たちが集まる SIJP(Seattle IT Japanese Professionals)の副会長をされている竜盛博さんが、この度『エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢 ~渡米・面接・転職・キャリアアップ・レイオフ対策までの実践ガイド』を上梓されました!

この本はエンジニア向けですが、非エンジニアでも大いに読む価値があります。そこで文学部卒の私が、ザ・文系の視点でレビューしてみたいと思います。

海外で働くために必要な英語力

文系でも理系でも、ます「海外で働く」と聞いたら頭に浮かぶのは英語のこと。著者の竜さんはそれについて、「活躍できる条件をすべて揃えてから渡米する人はほとんどいない」という節で以下のように語っておられます。

あらかじめ1つ言っておきたいことがあります。もしやってみたいと思うならば、
 「もっと英語が上達してから」
 「もう少し仕事を覚えてから」
 「もう少し〇〇できてから」
などの理由で先延ばしにはしないほうがいいということです。アメリカで素晴らしい活躍ができる条件をすべて揃えてから渡米する人はほとんどいません。たとえば、英語に不安があるならば、日本で上達を図るよりも、アメリカに渡ってしまったほうが上達が速くなります。完璧に準備しようと時間をかけると、人生のステージが進むに従って、実現がさらに困難になってきます。

竜盛博・著『エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢 ~渡米・面接・転職・キャリアアップ・レイオフ対策までの実践ガイド』

私もそうでしたが、どんなに準備したつもりでも、実際にアメリカに来たら自分の準備不足に嘆く人が多いです。完璧に準備できる時というのは、たぶんいつまで経っても訪れません。英語の準備よりも、心の準備を整えることの方が大切です。

とはいえ、私自身アメリカに来るまで「アメリカに行くなら英語を完璧に話せるようになりたい(& ならなければダメだ)」と思っていて、それが心の準備を邪魔しているところがありました。ところが実際にアメリカに来てみてすぐに気がついたのは、誰もが「完璧な英語」を話しているわけではないということ。

竜さんによると、シリコンバレーではなんと、家庭内で英語を話す世帯の比率が50%を切っているそうです。シリコンバレーに限らず、アメリカにはいろいろな英語を話す人がいるので、意思疎通ができれば、アクセントや発音、文法の間違いなどは意外とあまり気にされません。

仕事となるとやっぱり不安はありますが、竜さんは「どれぐらい英語ができればいいんですか?」という節で、必要な英語力について以下のように答えておられます。

私が以前から考えている一番大事な指標は、「情報伝達速度」です。仕事をする際も面接を受ける際も、相手の言っていることを理解し、自分の考えていることを伝える情報伝達が肝要です。

竜盛博・著『エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢 ~渡米・面接・転職・キャリアアップ・レイオフ対策までの実践ガイド』

結局、日本語も英語もコミュニケーション力が物を言うのです。

海外就職に至るまでの実際の流れを網羅

本書は、レジュメを送るところから採用後の交渉までかなり具体的に網羅しているので、非エンジニアでもかなり参考になります。たとえばレジュメの書き方。

一般的な「レジュメの書き方」には出てこないのですが、キーワード検索に引っかかるようにするために、単純に“Skills”の項目を作りましょう。

竜盛博・著『エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢 ~渡米・面接・転職・キャリアアップ・レイオフ対策までの実践ガイド』

これは今の時代ならではないでしょうか。なぜなら、今は LinkedIn などに代表されるウェブ上のレジュメもかなり重要だからです。それなのに私は「キーワード検索」を全然意識したことがなかったので、この対策は「なるほど!」と思いました。エンジニアであれば、「ホワイトボード面接」のくだりもめちゃくちゃ参考になるはずです。

 

Posted by エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢 on Friday, October 2, 2015

 

また採用後も、海外の慣れない環境で働くとなると些細なことまで疑問は尽きませんが、そういう疑問にも一つ一つ丁寧に答えてくださっています。

初めてアメリカで働き始める人に、強くお薦めしたい目標があります。
「1人でランチを食べない」
というものです。チームメートか席の近い人を誘って、できるだけ早く仲の良い人、顔見知りを増やしていきましょう。「英語で雑談をしなければならないランチは苦手だ」という日本人は多くいますが、同僚と仲良くなるにはランチがかなり有効です。

竜盛博・著『エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢 ~渡米・面接・転職・キャリアアップ・レイオフ対策までの実践ガイド』

「アメリカで働く」という現実

私がこの本について最も素晴らしいと思うところは、アメリカで働く良い面と悪い面のバランスがすごく意識されているところです。

ポジティブな面ばかりを強調して、ほかの面にまったく触れない一部の記事には、私は違和感を覚えていました。「働くといい」と勧めはするものの、それはつまり全体としてどういうことなのか、またそこにたどり着くにはどうしたらいいのか ―― そういうところがすっぽりと抜けているような気がしたのです。海外生活の明るい一面ばかりに過剰なほどスポットライトが当てられていて、それ以外の重要な部分についてはヒントさえも与えられない、暗黒大陸のようになっているのではないかと感じていました。
そこで、この本を書くにあたって考えたのは、「普段あまり目にしない面にも光を当てるようにしよう」ということでした。もちろん、ポジティブな面はいろいろ存在するのでそれらは記述するものの、さらにそれと同じぐらいのネガティブな面にも言及しよう、具体的な情報を伝えると同時に、何事にも存在する二面性が伝わるようにしよう、と考えました。全体として見れば、ポジティブでもなくネガティブでもなく、ニュートラルになるような記述を心がけたので、海外についてのほかの本に比べると必ずしも明るいトーンではないとは思います。このスタイルで、よりリアルに感じられる情報が伝わっていれば幸いです。

竜盛博・著『エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢 ~渡米・面接・転職・キャリアアップ・レイオフ対策までの実践ガイド』

これぞ私が「この本はエンジニアだけでなく非エンジニアも読む価値がある!」と思った一番の理由です。

海外就職や海外生活は、手の届かないものではありません。でも、イメージや先入観だけで飛びつくのは危険です。だからこそ、竜さんが今回現実を具体的に語ってくださったことは、とても大きな意味があると思います。エンジニアでも非エンジニアでも、少しでも海外志向がある人にはとてもおすすめです。

講演会も開催予定

シアトルでは、10月27日に紀伊国屋で竜さんによる出版記念ミニ講演会・サイン会が開催されます。私も参加する予定なので、楽しみです!

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「エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢 …

Posted by Seattle IT Japanese Professionals on Thursday, October 15, 2015

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