私の住んでいる米北西部ことパシフィック・ノースウェストでは今、大地震が起こる可能性が指摘されています。
その発端となったのは、ニューヨーカー誌の記事『The Earthquake That Will Devastate Seattle(シアトルを壊滅させる大地震について)』。さっそく読んでみました。
東日本大震災は「前震にすぎない」!?
記事はまず、2011年の東日本大震災の描写から始まります。米オレゴン州立大学の地震学者(seismologist)であるクリス・ゴールドフィンガー博士は当時日本にいました。
その後、2011年にマグニチュード9.0の地震が発生。クリス・ゴールドフィンガー博士は、この地震はまだ「前震(foreshock)に過ぎない」との見解を示しています。そこで警戒されているのが、ワシントン州やオレゴン州を含むパシフィック・ノースウェストです。
カスケード沈み込み帯が要注意!?
北米でよく知られている断層線といえば、カリフォルニア州を貫くサンアンドレアス断層。しかし実はその北側に、もう一つ断層線が走っています。それがカスケード沈み込み帯(Cascadia subduction zone)。米北西部を貫く700マイルの断層です。
(”Cascadia subduction zone USGS” by The original uploader was Curps at English Wikipedia Later versions were uploaded by Remember the dot at en.wikipedia. – http://earthquake.usgs.gov/eqinthenews/2004/usslav/rupture_area-nw.html, specifically http://earthquake.usgs.gov/eqinthenews/2004/usslav/rupture_area-nw.gif. Licensed under Public Domain via Wikimedia Commons.)
カスケード地震が発生する確率
米連邦緊急事態管理局(FEMA)によると、カスケード地震と津波の発生による推定死者数は13000人、推定負傷者数は27000人、避難者数は100万人、水や食料が必要な人の数は250万人。今後50年間の間にカスケード地震が発生する確率は1/3で、大災害が起きる確率は1/10だそうです。
(”Pacific Ring of Fire” by Gringer (talk) 23:52, 10 February 2009 (UTC) – vector data from [1]. Licensed under Public Domain via Wikimedia Commons.)
1700年に大地震の歴史あり
この環太平洋火山帯の中にパシフィック・ノースウェストも位置しています。しかし、小規模や中規模な地震が定期的に起こっている日本などと違い、こちらは普段まったく揺れません。
それでも1996年にネイチャー誌で発表された論文によって、1700年にパシフィック・ノースウェストでマグニチュード9.0の大地震が起こったことが明らかになっています。実は同時期に日本でも大津波が記録されており、その津波がこの地震によって引き起こされたことが証明されています。
パシフィック・ノースウェストでは、過去1万年間に沈み込み帯地震が41回起こっているそうです。平均して243年に1回起こっている計算です。1700年の大地震から数えると、現在は315年目。そろそろまた地震が起きてもおかしくありません。
もしも地震が起きたら
この圧縮波の特徴を利用しているのが日本の緊急地震速報で、日本ではさまざまな現場で広く活用されています。一方、こちらにはそんな画期的な仕組みはありません。地震対策においては、日本よりも大分遅れています。
オレゴン州では、全建造物の75%はカスケード地震に耐えられないそうです。またシアトル緊急管理事務所によると、シアトルでは地滑り(landslide)が起き、液状化(liquefaction)も発生するとのこと。シアトルの土地の15%は液化しやすいと言われています。
【記事全文はこちら】
The Earthquake That Will Devastate Seattle – The New Yorker
ジェガーさんと私が住んでいるエリアも海のすぐ側なので、めちゃくちゃ怖いです。
ちなみにこのニューヨーカー誌の記事が話題を呼んだ後、アメリカの掲示板サイト『Reddit』では、ワシントン州の地震学者であるジョン・ヴィダル氏をはじめとする地震の専門家たちが “IAmA(〜だけど質問ある?)” のスレッドに登場しました。
気になる地震発生率については、今後50年間の間に最悪の事態が起る可能性は15%としています。また、マグニチュード9.0規模の地震がこの地域で起こっているサイクルは200〜900年で、明日起きてもおかしくない一方、生きている間には起こらない可能性もあるそう。
ジョン・ヴィダル氏によると、ノースウェストでも日本の緊急地震速報のような仕組みを取り入れる動きはあるみたいで、彼のスマホにはすでにその機能が入っているようです。
Kathryn Schulz’s New Yorker story on Pacific Northwest earthquake: Geologists explain the risks.
この地域が地震対策先進国日本から学ぶべきことはたくさんありそうです。
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