東日本大震災は前震!?カスケード大地震の可能性

私の住んでいる米北西部ことパシフィック・ノースウェストでは今、大地震が起こる可能性が指摘されています。

その発端となったのは、ニューヨーカー誌の記事『The Earthquake That Will Devastate Seattle(シアトルを壊滅させる大地震について)』。さっそく読んでみました。

東日本大震災は「前震にすぎない」!?

記事はまず、2011年の東日本大震災の描写から始まります。米オレゴン州立大学の地震学者(seismologist)であるクリス・ゴールドフィンガー博士は当時日本にいました。

For decades, seismologists had believed that Japan could not experience an earthquake stronger than magnitude 8.4. In 2005, however, at a conference in Hokudan, a Japanese geologist named Yasutaka Ikeda had argued that the nation should expect a magnitude 9.0 in the near future—with catastrophic consequences, because Japan’s famous earthquake-and-tsunami preparedness, including the height of its sea walls, was based on incorrect science.

(何十年もの間、地震学者たちはマグニチュード8.4以上の地震は日本に起こらないと信じていた。しかし2005年に北淡で行われた会議で、日本の地質学者の池田安隆氏が、近い将来日本で大災害を伴うマグニチュード9.0の地震が起こる可能性を主張。地震と津波に対する日本の名高い備えは、防波堤の高さなどに見る不正確な科学に基づいていると語った。)

The Earthquake That Will Devastate Seattle – The New Yorker

その後、2011年にマグニチュード9.0の地震が発生。クリス・ゴールドフィンガー博士は、この地震はまだ「前震(foreshock)に過ぎない」との見解を示しています。そこで警戒されているのが、ワシントン州やオレゴン州を含むパシフィック・ノースウェストです。

カスケード沈み込み帯が要注意!?

北米でよく知られている断層線といえば、カリフォルニア州を貫くサンアンドレアス断層。しかし実はその北側に、もう一つ断層線が走っています。それがカスケード沈み込み帯(Cascadia subduction zone)。米北西部を貫く700マイルの断層です。

Cascadia subduction zone USGS.png

(”Cascadia subduction zone USGS” by The original uploader was Curps at English Wikipedia Later versions were uploaded by Remember the dot at en.wikipedia. – http://earthquake.usgs.gov/eqinthenews/2004/usslav/rupture_area-nw.html, specifically http://earthquake.usgs.gov/eqinthenews/2004/usslav/rupture_area-nw.gif. Licensed under Public Domain via Wikimedia Commons.)

n the Pacific Northwest, everything west of Interstate 5 covers some hundred and forty thousand square miles, including Seattle, Tacoma, Portland, Eugene, Salem (the capital city of Oregon), Olympia (the capital of Washington), and some seven million people. When the next full-margin rupture happens, that region will suffer the worst natural disaster in the history of North America.

(パシフィック・ノースウェストのうち I-5 の西側全域は数百四十平方マイルで、シアトル、タコマ、ポートランド、ユージーン、オレゴン州の州都セイラム、ワシントン州の州都オリンピアを含み、人口は700万人に及ぶ。次に最大限度の亀裂が起これば、この地域は北米の歴史上最大の自然災害に見舞われるだろう。)

The Earthquake That Will Devastate Seattle – The New Yorker

カスケード地震が発生する確率

米連邦緊急事態管理局(FEMA)によると、カスケード地震と津波の発生による推定死者数は13000人、推定負傷者数は27000人、避難者数は100万人、水や食料が必要な人の数は250万人。今後50年間の間にカスケード地震が発生する確率は1/3で、大災害が起きる確率は1/10だそうです。

Almost all of the world’s most powerful earthquakes occur in the Ring of Fire, the volcanically and seismically volatile swath of the Pacific that runs from New Zealand up through Indonesia and Japan, across the ocean to Alaska, and down the west coast of the Americas to Chile.

(全世界の強い地震のほぼ全ては環太平洋火山帯の中で起こっている。環太平洋火山帯は火山的にも地震的にも不安定な地帯で、ニュージーランドからインドネシアや日本を通って北はアラスカまで、そこから米西海岸を通って南はチリまで伸びている。)

The Earthquake That Will Devastate Seattle – The New Yorker

Pacific Ring of Fire.svg

(”Pacific Ring of Fire” by Gringer (talk) 23:52, 10 February 2009 (UTC) – vector data from [1]. Licensed under Public Domain via Wikimedia Commons.)

1700年に大地震の歴史あり

この環太平洋火山帯の中にパシフィック・ノースウェストも位置しています。しかし、小規模や中規模な地震が定期的に起こっている日本などと違い、こちらは普段まったく揺れません。

それでも1996年にネイチャー誌で発表された論文によって、1700年にパシフィック・ノースウェストでマグニチュード9.0の大地震が起こったことが明らかになっています。実は同時期に日本でも大津波が記録されており、その津波がこの地震によって引き起こされたことが証明されています。

At approximately nine o’ clock at night on January 26, 1700, a magnitude-9.0 earthquake struck the Pacific Northwest, causing sudden land subsidence, drowning coastal forests, and, out in the ocean, lifting up a wave half the length of a continent. It took roughly fifteen minutes for the Eastern half of that wave to strike the Northwest coast. It took ten hours for the other half to cross the ocean. It reached Japan on January 27, 1700: by the local calendar, the eighth day of the twelfth month of the twelfth year of Genroku.

(1700年1月26日のおよそ午後9時頃、マグニチュード9.0の地震がパシフィック・ノースウェストを襲った。急な地盤沈下が引き起こり、沿岸の森は沈み、大陸の半分の長さに及ぶ津波を引き起こした。15分後、津波の東側半分はノースウェスト沿岸を直撃。西側半分は10時間かけて太平洋を横断し、1700年1月27日の午後5時頃日本に到達した。まさに現地時間の元禄12年12月8日である。)

The Earthquake That Will Devastate Seattle – The New Yorker

パシフィック・ノースウェストでは、過去1万年間に沈み込み帯地震が41回起こっているそうです。平均して243年に1回起こっている計算です。1700年の大地震から数えると、現在は315年目。そろそろまた地震が起きてもおかしくありません。

もしも地震が起きたら

The first sign that the Cascadia earthquake has begun will be a compressional wave, radiating outward from the fault line. Compressional waves are fast-moving, high-frequency waves, audible to dogs and certain other animals but experienced by humans only as a sudden jolt.

(カスケード地震の初期兆候は、断層線から放射された圧縮波となる。圧縮波の動きは早く、間隔も短く、犬や特定の動物には聞こえる一方、人間には突然の振動として伝わるのみだ。)

The Earthquake That Will Devastate Seattle – The New Yorker

この圧縮波の特徴を利用しているのが日本の緊急地震速報で、日本ではさまざまな現場で広く活用されています。一方、こちらにはそんな画期的な仕組みはありません。地震対策においては、日本よりも大分遅れています。

オレゴン州では、全建造物の75%はカスケード地震に耐えられないそうです。またシアトル緊急管理事務所によると、シアトルでは地滑り(landslide)が起き、液状化(liquefaction)も発生するとのこと。シアトルの土地の15%は液化しやすいと言われています。

ジェガーさんと私が住んでいるエリアも海のすぐ側なので、めちゃくちゃ怖いです。

ちなみにこのニューヨーカー誌の記事が話題を呼んだ後、アメリカの掲示板サイト『Reddit』では、ワシントン州の地震学者であるジョン・ヴィダル氏をはじめとする地震の専門家たちが “IAmA(〜だけど質問ある?)” のスレッドに登場しました。

気になる地震発生率については、今後50年間の間に最悪の事態が起る可能性は15%としています。また、マグニチュード9.0規模の地震がこの地域で起こっているサイクルは200〜900年で、明日起きてもおかしくない一方、生きている間には起こらない可能性もあるそう。

ジョン・ヴィダル氏によると、ノースウェストでも日本の緊急地震速報のような仕組みを取り入れる動きはあるみたいで、彼のスマホにはすでにその機能が入っているようです。

この地域が地震対策先進国日本から学ぶべきことはたくさんありそうです。

 

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