「電話」の意味ではない「call」の意味とは?

先週、アメリカのネットニュースサイト『Gawker』で騒動が起きました。ある記事が問題となり、編集部の反対にも関わらず、経営陣の決定で削除となったのです。

その記事とは、雑誌『VOGUE』や『GQ』などを手がける大手出版社、コンデナストCondé Nast)の CFO(最高財務責任者)による男娼買い疑惑を伝えたもの。

記事は現在削除され、『This post has been removed.(この記事は削除されました)』というページになっています。

そのページに Gawker の CEO ニック・デントン氏の声明へのリンクが貼ってあったので読んでみると、”call” という単語が数回出てきました。

It was an editorial call, a close call around which there were more internal disagreements than usual.

Taking a post down

Every story is a judgment call.

Taking a post down

 

“ポイント”/

 

“call” にはいろいろな意味がありますが、この場合は「決定」という意味で使われています。

1. when you speak to someone on the telephone
2. if someone such as a doctor or engineer is on call, they are ready to go and help whenever they are needed as part of their job
3. shout/cry
4. a visit, especially for a particular reason
5. a request or order for something or for
6. decision
7. a message announced at an airport that a particular plane will soon leave

(”judgement call” は “a decision based on your personal judgement of a situation(個人的判断)” と説明されていました!)

call | Longman Dictionary

つまり前述の文章はこう書かれていたのでした。

It was an editorial call, a close call around which there were more internal disagreements than usual.

(編集部の決定だった。内部の反対も通常より多い中、ぎりぎりのところだった。)

Taking a post down

Every story is a judgment call.

(記事というものは個人的意見である。)

Taking a post down

ちなみに “close call” は「危ういところ」という意味です!

close call: something bad that almost happened

(悪いことがもう少しで起こる手前の状態なんですね!)

close call | Cambridge Dictionaries (American English)

 

P.S.

 

事実誤認(factual error)や法的措置以外で重要なニュース記事を削除するのは、今回が初めてだったそうです。

デントン CEO の考えのベースにあるものは、「読者」。読者数が今ほど多くなかった初期には真実を晒すだけで良かったものの、読者が増えた今は、彼らにとって「意味のあるもの」を記事として出す必要性を説いています。

これに対し、編集部は編集部で『A Statement From the Gawker Media Editorial Staff(Gawker Media 編集スタッフからの声明)』という記事を公開。それを読むと、彼らの視点はまた全く異なることがわかります。

編集部でも記事に対する評価は確かに賛否両論だったみたいですが、編集部が批判しているのは、編集に関わる決定が編集に関係のない経営陣たちによってなされたこと。

削除に関する意思決定は経営陣グループ6名による投票において4-2で決まりましたが、反対した2名は記事の編集に関わった人たちでした。残りの4名は広告担当責任者、CSO(最高戦略責任者)、COO(最高執行責任者)、そして CEO。

ここから察するに、ニック・デントン CEO の語る「読者」とは「メディアを支えてくれる人」であり、「メディアに対価を支払ってくれる人」でもあり、つまり「広告主」が含まれていることが考えられます。彼らを大切にすることはもちろん大事ですが、彼らにおもねることはジャーナリズムにとって危険でもあります。編集部が許せないのはまさにそこです。

しかし、内部で起こっている論争を双方が文字に起こして記事として発信しているところに、私はこのメディアの誠実さを感じざるを得ません。Gawker はちょうどこの春、『BuzzFeed』が広告主の圧力で記事を削除した際、編集が経営側の圧力に屈したことを責める記事を書いていました。

もしも今回の事件が他のメディアで起っていた場合、やはり Gawker がどこよりも熱心に報道していたかもしれません。今、Gawker は内部で起こっている事件を自ら熱烈に取材報道しているように見えます。

週明け、Gawker では編集トップが2名辞職しました。