12年間の成長を収めた画期的な映画『6才のボクが、大人になるまで。』

観たい観たいと思っていたリチャード・リンクレイター監督の最新作『6才のボクが、大人になるまで。』が公開されたので、ついに観てきました!

2002年から12年間にわたって一人の少年の成長を追った作品で、今年の第64回ベルリン国際映画祭(Berlin International Film Festival)の銀熊賞(監督賞)受賞作です。

撮影期間、12年

普通、これだけ長い期間を描く映画の場合、数ヶ月の撮影期間内にティーンの俳優と子役を使うのが一般的。が、リンクレーターさんはなんと、同じ俳優で12年間撮影し続けています。

主人公の少年は撮影開始当初6歳だったのが、撮影終了時には18歳に成長。両親役のイーサン・ホークさんとパトリシア・アークエットさんももちろん、少年と同じように12年分年を重ねています。まさに映画の撮影手法の限界に挑んだと言える作品です。

Variety 誌の『‘Boyhood’: Richard Linklater on Ethan Hawke, Ellar Coltrane Film』という記事によると、毎年ブレインストーミングをしながら3〜4日間撮影して、それを12年間繰り返したそう。1回の撮影は15分くらいの長さにしかなっていませんが、12年分つなげると180分、およそ3時間になります。作品の上映時間が2時間45分なので、納得。

でも、たとえ1年間に撮影する期間が3〜4日だったとしても、それを12年間続けるのは並大抵のことではなかったに違いません。私は立派に自立した主人公メイソンの姿に、人の成長の奥深さを感じずにはいられませんでした。そういう意味では、フィクションでありながらドキュメンタリー映画のような、なんとも不思議な映画です。

リンクレイター監督の娘も出演

この映画には、リンクレイター監督の娘さんも出演しています。メイソンの姉サマンサを演じているのが、ローレライ・リンクレイターさん。

ハフィントン・ポスト誌のインタビューによると、ローレライさんの配役は父が望んだわけではなく、本人の希望だったみたいですが、父親としても娘の成長を自分の “作品” として残せるのはめちゃくちゃ良い機会だったに違いありません。

原題は『Boyhood』なので、基本的に息子メイソンが主人公ではあるのですが、人によってはこの映画は『Parenthood』だったでしょうし、リンクレイター監督にとってはきっと『Girlhood』だったはず。

私は以前からリチャード・リンクレイター監督のことをかなりリスペクトしているのですが、この作品を観てますますリンクレイター監督に対するリスペクトが高まりました。「ありそうでなかった映画」を作るのが本当に上手な方です。

次は映画のどんな限界に挑戦してくれるのか、今から楽しみです。

最も好きなリンクレイター作品