アメリカの “alt-right”(オルタナ右翼)について理解する

8月12日、バージニア州シャーロッツビル(Charlottesville)で極右団体とそれに抗議する人たちとの間で大規模な衝突があり、死傷者を含む被害が出ました。

そのニュースを追っていて知ったのが、オルタナ右翼(alt-right)の存在です。

 

“alt-right” とは?

 

“alt-right” という言葉は、リチャード・スペンサーと(Richard Spencer)いう人物が2008年頃から使い始めたと言われています。リチャード・スペンサーは、オルタナ右翼運動を育てたシンクタンク『National Policy Institute(NPI)』の代表者で、2010年に『Alternative Right』というウェブサイトを立ち上げた人です。

“alternative” は、「オルタナティブ・ロック」など、もともと音楽の世界で馴染みのあった単語でした。

The name itself makes use of the prefix alt-, which was popular among musical genres, especially in the 1990s, for denoting something that sees itself as a challenge to the traditional.

(接頭辞の “alt” は、既存のスタイルに挑戦するものとして、特に1990年代、音楽ジャンルで人気を博した。)

“We’re the establishment now”: ‘alt-right’ in the spotlight | OxfordWords blog

そんな “alternative” が、右翼の中でどう既存のスタイルに挑戦しているかというと、ずばり、インターネットを駆使して活動を拡大している点。リチャード・スペンサーのような若い白人男性たちが、ウェブサイトや掲示板を通してどんどん思想を尖らせていきました。

でも、”alt-right” が一気に世に知られるようになったきっかけを生んだのは、実はヒラリー・クリントンさんです。2016年の大統領選中、ネバダ州の演説で彼女は以下のように語りました。

These are race-baiting ideas, anti-Muslim and anti-immigrant ideas, anti-woman –– all key tenets making up an emerging racist ideology known as the ‘Alt-Right.’ Now Alt-Right is short for “Alternative Right.” The Wall Street Journal describes it as a loose but organized movement, mostly online, that “rejects mainstream conservatism, promotes nationalism and views immigration and multiculturalism as threats to white identity.”(20:55)

(これらは人種攻撃的、反ムスリム・反移民的、そして女性蔑視的な考え方であり、これらが “alt-right” として知られる人種差別的イデオロギーとして台頭しています。”alt-right” は “alternative right” の略です。ウォールストリートジャーナル紙によれば、ゆるいけれども組織化された動きで、ネット上で主に活動し、「保守本流を排斥し、国家主義を促進し、移民や多文化主義を白人アイデンティティに対する脅威とみなす」ものだとしています。)

Hillary Clinton’s alt-right speech, annotated – The Washington Post

“alt-right” を批判したつもりが、かえって知名度アップに貢献することになってしまったのは、なんとも皮肉なものです。

 

トランプ大統領と “alt-right” のつながり

 

ヒラリーさんがネバダ州の演説で “alt-right” に触れたのは、トランプさんの大統領選キャンペーンの CEO を務めたスティーブ・バノン(Steve Bannon)さんを批判するためでした。スティーブ・バノンさんは、 “alt-right” のニュースサイト『Breitbart News』の会長を務めていた人です。

選挙運動中はトランプさんのポピュリズム戦略を大々的に推進し、トランプさん当選後はその実績を買われ、ホワイトハウスの主席戦略官(chief strategist)に大抜擢。タイム誌はそんなスティーブ・バノンさんを、トランプさんの “manipulator(操り師)” と評しました。

ちなみにコメディ番組『サタデー・ナイト・ライブ(Saturday Night Live)』では死神に例えられていましたが、私のイメージではダースベイダーを作り上げたダース・シディアスに近いです。そういう存在の人です。

しかし、シャーロッツヴィルでの事件後、スティーブ・バノンさんは18日にホワイトハウスを追い出され、元の『Breitbart News』に戻りました。

リチャード・スペンサーはトランプ大統領のことを “alt-right” とは捉えていないようですが、国家主義者として支持しています。

民主派でも伝統的保守派でもないトランプさんは、極右派にとってはとっつきやすい格好の人物と言えそうです。トランプ大統領就任後、”alt-right” の勢いは止まりません。

 

シャーロッツビルで起こったこと

 

ここで冒頭に戻りますが、なぜシャーロッツビルで衝突が起こったかというと、そこにロバート・リー(Robert Edward Lee)将軍の像があり、それが撤去されることになったからです。

Lee Park, Charlottesville, VA.jpg
By Cville dogOwn work, Public Domain, Link

ロバート・リー将軍とは、南北戦争の南軍司令官。そこで撤去に反対する “alt-right” 派の呼びかけで『Unite the Right』という集会が開かれることになり、白人至上主義団体『KKK(クー・クラックス・クラン)』やナチズムを信奉する『ネオナチ(Neo-Nazis)』なども加わった大集会となったのでした。

シャーロッツビルのように、南部連合を象徴する像や記念碑はアメリカ各地にあります。

ヘイトクライムを監視する南部貧困法律センターの2016年のまとめによると、英雄にちなんだ地名や施設を含め、南部連合のシンボルとされるものは公共の場所に1500件以上ある。このうち銅像や記念碑が718件に上り、うち300件がバージニア、ノースカロライナ、ジョージアの3州に集中しているという。

米南部の英雄像や記念碑、撤去相次ぐ トランプ氏は異議:朝日新聞デジタル

現在、これらの像や記念碑のある地域では、撤去の動きが進行中。

各地で緊張感が高まっていますが、この緊張感、まだまだ続きそうです。

 

#ジェガーを探せ

本日アメリカで観測できた皆既日食。シアトルでも綺麗に見られました!地面にも自然のピンホールで日食がいっぱい写っていて幻想的。めちゃくちゃ大勢の人が日食を眺めていました。

ちなみに日食は英語で solar eclipse と言います!

Posted by ツカウエイゴ on Monday, August 21, 2017