よく耳にするけどあまり品の良い言葉ではない「Goddammit」の意味とは?
私たちの住むところには非営利の映画館がひとつあるのですが、いつもマニアックな映画を上映するので、ジェガーさんも私も好きでよく行っています。その映画館が先日、クラウドファンディングサービス Kickstarter を使ってデジタルシネマパッケージ(DCP)という新上映技術の導入を実現しようとしているとのことで、ジェガーさんが支援していました。
Digital Cinema at Northwest Film Forum by Northwest Film Forum | Kickstarter
トピック・ジャーナル9月号「“劇場のデジタル化”とは?」| キネマ旬報映画総合研究所
プロジェクトは見事ゴールを達成し、映画館は DCP を導入。それで DCP 導入後初の上映会にジェガーさんが招待されたので、私も一緒に行って来ました。
その記念すべき上映作品とは、マイケル・チミノ(Michael Cimino)監督の『天国の門(Heaven’s Gate)』(1980)。当時莫大な予算(約4,400万ドル)をかけて制作されたにも関わらず、325分というおそるべし長さになってしまい、219分に編集して公開するも失敗、その後149分に縮めてもダメで、結局惨憺たる興行成績に終わったという悪名高い作品です。
どれくらい惨憺たる興行成績だったかというと、チャップリン(Charlie Chaplin)、メアリー・ピックフォード(Mary Pickford)、ダグラス・フェアバンクス(Douglas Fairbanks)、D・W・グリフィス(D. W. Griffith)が創立し、『モダン・タイムス(Modern Times)』(1936)や『お熱いのがお好き(Some Like It Hot)』(1959)、『ウエスト・サイド物語(West Side Story)』(1961)、初期007シリーズなどの名作を残した制作会社、ユナイテッド・アーティスツ(United Artists)を倒産寸前に追いつめたほど。
ところがその後30年以上経った昨年秋、第69回ベネチア国際映画祭(Venice Film Festival)で219分バージョンが改めて上映され、アメリカ国内で今再評価の熱が高まっています。
私たちが今回映画館で観た『天国の門』は、まさにその219分バージョンでした。
映画では何度か “Goddammit.” という表現を耳にしましたが、上の予告編でも、クリス・クリストファーソン(Kris Kristofferson)がイザベル・ユペール(Isabelle Huppert)に “Goddammit, it’s different this time.”(1:08)と言っています。
ポイント
“Goddammit” は、苛立ちを露にする時によく使われます。
goddammit: used when you are angry or annoyed. Some people consider this word offensive.
耳にする機会は多いと思いますが、決して品の良い表現ではないので、使うのはあまりオススメしません!
クリス・クリストファーソンは「畜生。今回は違うんだ」と言っていたのでした。
補足
というわけで『天国の門』、私は個人的に素晴らしい作品だと思いました。この作品は、1890年代前半にワイオミング(Wyoming)州で実際にあった “ジョンソン郡戦争(Johnson County War)” と呼ばれる事件を描いています。
この時期は、アメリカに移民がたくさん訪れた頃。新しく来た入植者たちと、その土地に住み着いていた牧畜業者たちの間でしばしば衝突があり、ワイオミングでは牧畜業者たちが入植者たちを殺すために傭兵を雇うという悲惨な事件に発展しました。
過激なシーンが多く、219分でも完全版ではないため話のつながりが不自然なところもありますが、映画全体を通して目を瞠るのは映像の美しさ。撮り方が美しすぎます。もともと長い映画をよく観ているせいもあるかもしれませんが、219分という長さは特に長く感じませんでした。
上映後は知り合いにもけっこう会ったので、みんなで映画談義。1980年の公開時に劇場で149分バージョンを観たおっちゃんは、当時は映画の途中で映画館を出たそうですが、今回の219分バージョンを観ても「やっぱりこの映画好きになれへんわ」とのこと。
その場にはそのおっちゃんくらいしか当時映画館でこの映画を観た人がいなくて、他は今回初めて『天国の門』を観る人ばかりだったので、そこからはおっちゃんに「一体どのシーンが新たに加わってたんですか?」「最後の終わり方はどちらも一緒でしたか?」といった質問攻めがしばし続きました。
おっちゃんが最後に「でもこの映画、映画史に残る作品にはなるやろな」と言ったのが印象的でしたが、私もこの作品は、時が経てば経つほど評価が高まっていく作品になるのではないかと思っています。
映画というよりもはや芸術作品。大衆を意識したというよりも、マイケル・チミノ監督がとことんこだわりを突き詰めた作品のように見えるところが、私は好きです。
再評価の動きがさらに高まれば、そのうち325分バージョンも観られるようになるかもしれません。・・・5時間25分の映画なんて観たことありませんが。
関連
この映画に関するドキュメンタリー映画も、YouTube で観られます→ ▶ Final Cut: The Making and Unmaking of Heaven’s Gate (Part 1 of 8) – YouTube