米ゲームサイト『Destructoid』の新課金サービスを紹介する記事で目にした「perk」の意味とは?

先週ゲームの祭典『PAX Prime 2013』に行って、ジェガーさんは精力的にパネル・ディスカッションを回っていたのですが、その中で一番良かったというのが米ゲームサイト『Destructoid』のパネル・ディスカッションでした。

『Destructoid』は、小さい頃からゲームが好きだったヤニール・ゴンザレス(Yanier Gonzalez @dtoidniero)さんが、2006年に友達から「ブログ持ってたら E3(Electronic Entertainment Expo)に招待してもらえるらしいで」と教えてもらい、プレスパスをもらうために一日で作ったのが始まり。

今では最もよく知られたインディペンデント系ゲームサイトの一つへと成長し、複数のライターを抱えています。

『Destructoid』の特徴は主に3つ。

  1. 速報性・専門性
  2. Wikipedia の説明によると、『Destructoid』は一日に平均50本の記事を投稿しているそう。最新情報をいち早く提供することによって、個人だけでなく業界人も頻繁にチェックし、一目置かれる存在になっています。

  3. 個性
  4. 『Destructoid』と言えば、ロボットのマスコットが有名。ヤニールさんがゲーム・イベントでのプロモーション活動の一環として、エアコン(air conditioner)と車の部品を使ってロボットのかぶりものを自作したのが誕生のきっかけだったそうです。今では「サイトの顔」になっているだけでなく、XBOX のゲーム『ボンバーマン ライブBomberman LIVE)』に登場するキャラクターの一つにもなっています。
    Destructoid

    (BY Dalvenjah FoxFire via [CC BY-SA 2.0], via Flickr

  5. コミュニティ
  6. そして、最も特徴的なのが、コミュニティの結びつきの強さ。『Destructoid』には、編集スタッフが記事を投稿する「ニュース & レビュー」の他に、コミュニティ・メンバーが記事を投稿できる「コミュニティ・ブログ」、活発なやりとりが繰り広げられる「チャット・フォーラム」、ゲームを売買したり交換したりできる「Buy/Sell」など、さまざまなセクションが用意されています。これにより、ただ情報を発信するだけでなく、『Destructoid』を通して人々が交流する流れを作りだしているのです。ジェガーさんも最初は記事を読んでいるだけだったのですが、今ではフォーラムなどに参加して、フォーラムで結成されたグループでオンライン・ゲームをするなどの交流を深めています。

そんな『Destructoid』のパネル・ディスカッションに参加して、ジェガーさんは驚いたそう。なんと、『Destructoid』が新たな課金プラン『HUGE』を発表したというのです。

そこで、私もさっそくそのプランに関する記事『 HUGE: Destructoid rolls out ad-free memberships』(9.1.2013)を読んでみました。すると、何度か “perk” という単語が出てきました。

You also get a bunch of new perks, which we’ll detail below.

via HUGE: Destructoid rolls out ad-free memberships | Destructoid

Want perks?  We’ve got them – and a PERKS dashboard helps you keep track of them

via HUGE: Destructoid rolls out ad-free memberships | Destructoid

ポイント

“perk”〔発音〕はこの場合、「特典」という意味で使われています。

perk | Macmillan Dictionary

  1. an extra payment or benefit that you get in your job
  2. a benefit or advantage that you get from a situation

(1. のように、仕事で得られるボーナスや特典を意味することもあります。例文は “Free theater tickets are one of the perks of this job.〔無料の劇場チケットがもらえるのも、この仕事の特典の一つです。〕” となっていました!)

つまり、最初の文は「また、新しい特典がたくさんついてきます。詳細は以下をご覧ください。」、そして次の文は「特典が欲しいですか?用意していますよ — 特典をチェックできるダッシュボードもあります」と書かれていたのでした。

補足

というわけで、これまで『Destructoid』の収入源は主に広告費だったのですが、昨年の夏の調査でスポンサー広告のおよそ36%がブロックされていることが判明し、広告に頼る収入モデルを見直すことになったそうです。

そこで考えられたのが、『HUGE』という会員制プログラム。メンバーになると、『Destructoid』が現在運営する4つのサイト全てで広告を非表示にでき、他にも特典がいろいろついてきます。会員費は月額2.99ドル、年間29.99ドル。この一人のメンバーシップ料を広告だけで得ようとすると、3,000人が広告を見る必要があり、これはサイト運営にとって大きな違いをもたらすそうです。この会員費用は、満足しなければ返金も可能です。

The math is compelling: it can take roughly 3,000* people viewing ads to match the contribution of 1 membership. Your membership can make a huge difference.

*That’s 3,000 people visiting an average of 2 pages, or 6,000 pageviews multiplied by 3 ads, which makes 18,000 impressions. The national average of network ads is $1 per thousand, minus commission, but don’t have sponsors for 100% of our readers. Many country origins go unsold or for pennies.

via HUGE | Destructoid

特典の中で最も魅力的なのは、編集スタッフと直接チャットができるようになること。スタッフが新しく始める動画番組で、会員になると特別に直接スタッフとチャットでやりとりをすることが可能になります(視聴は誰でもできます)。

広告がなくなるため、ページの読み込み時間も高速化。サイトのカスタマイズも自由で、職場でバレないような「ステルス」テーマというのもあるそうです。

他には、『Destructoid』が現在運営する4つのサイト全てにおいて自動的に懸賞に応募することが可能になったり、サイトのショップで割引がもらえたり、会員専用コードの発行によってゲームがいち早くプレイできたり、便利なダッシュボード機能で特典を確認することができたりします。また、年間メンバーシップ料の3%はチャリティに寄付されます。

これで月2.99ドルなら、なかなか良いかもしれません。『Destructoid』はもともとコミュニティの結びつきが強いので、単に『Destructoid』を支えたいという人も多い気がします。

アメリカでも「広告に頼らない課金モデル」についてはしばらく議論が続いていて、大手サイトも含めてさまざまな試みが行われていますが、『Destructoid』も語っている通り、私はペイウォール(paywall)制度にあまり魅力を感じません。

We want to offer more, but also respect our readership too much to block access to our archives behind a paywall.  Let’s try something else: I’ve built up the courage to ask if our readers are crazy enough to support us directly instead of relying on the ad industry at all.

via HUGE: Destructoid rolls out ad-free memberships – Destructoid

ペイウォールは毎月一定本数のオンライン記事を無料で提供し、それ以上読みたい人に課金するという仕組みで、ニューヨーク・タイムズ紙(The New York Times @nytimes)なども取り入れています。でも、制限に対するストレスがあるので、よっぽどそのメディアに対する思い入れが強くないと、むしろそのメディアから遠ざかってしまいがちになってしまうのです。

一方、『Destructoid』の課金モデルは、お金を払わない人に制限が加えられるわけではありません。お金を払わない決断をした人でも、今まで通り無制限にサイトが閲覧できます。

私はこの『Destructoid』のパネル・ディスカッションには行けなかったのですが、この話をジェガーさんから聞いて、すごく興味を持ちました。今後このモデルが主流になっていく可能性もあると思うので、『Destructoid』の動向をしばらく追ってみようと思います。