映画『Blue Jasmine』で耳にした「phony」の意味とは?
少し前にちらっと紹介したウディ・アレン(Woody Allen)監督最新作『Blue Jasmine』(日本公開未定)を観てきたのですが、その中で主人公のジャスミン(ケイト・ブランシェット)が “phony” と呼ばれていました。
下の予告編でも、”She’s a phony.” と言われています。
ポイント
“phony” は「本物でない」という意味です。本物を偽ることによって人を騙そうとする不誠実なニュアンスがあります。
- false or not real, and intended to deceive someone
- someone who is phoney is insincere and pretends to be something they are not
(イギリスやオーストラリアでは “phoney” と表記されます。カナダではどちらも使われるみたいですが、どちらかというと “phony” と表記する方が一般的みたいです!via Grammarist)
有名どころでいうと、”phony” はサリンジャー著『ライ麦畑でつかまえて(The Catcher in the Rye)』でも何度も使われていました。
a phony smile: 作り笑い サリンジャー著野崎孝訳『ライ麦畑でつかまえて』 白水uブックス p. 25(The Catcher in the Rye)
be so phony: インチキなにおいがする サリンジャー著野崎孝訳『ライ麦畑でつかまえて』 白水uブックス p. 166(The Catcher in the Rye)
the phonies: 気取った奴ら サリンジャー著野崎孝訳『ライ麦畑でつかまえて』 白水uブックス p. 219(The Catcher in the Rye)
a phony kind of: インチキみたいな サリンジャー著野崎孝訳『ライ麦畑でつかまえて』 白水uブックス p. 43(The Catcher in the Rye)
でも軽蔑的なニュアンスがあるため、見聞きすることは多くても実際に使うのはおすすめしません!
補足
とはいえ、この映画に出てくるジャスミンは、キャラが強烈すぎて “phony” と呼ばれてもおかしくないほどです。実際、ジャスミンも本名ではありません。
そもそも彼女は実業家(アレック・ボールドウィン)と結婚してニューヨークでセレブ生活を謳歌していたのですが、なんやかんやあって独り身になり、お金に困って西海岸に住む妹のジンジャー(サリー・ホーキンス)を頼って来ます。それなのに、飛行機はファーストクラス。服は全身ブランド服で、スーツケースは全てヴィトン。完全にセレブ症候群の後遺症が残っています。
精神もかなり病んでいて、何があってんという感じですが、そんな疑問に答えるように、物語が進むにつれて “離婚原因” が少しずつ浮き彫りになっていきます。
この作品、私は近年のウディ・アレン作品の中で最も好きかもしれません。昨年アカデミー賞でオリジナル脚本賞を受賞した『ミッドナイト・イン・パリ(Midnight in Paris)』(2011)より好きです。
ケイト・ブランシェットの演技のキレっぷりが素晴らしく、「ケイト・ブランシェットってこういうキャラやったっけ?」というくらいド厚かましいです。彼女にはもうぜひアカデミー賞主演女優賞にノミネートしていただきたいところ。
個人的には、”理想の自分” を失ってアイデンティティ崩壊に陥る姉が妹には哀れに見える一方、一度セレブ生活を体験している姉にとっては庶民暮らしをする妹が “負け犬” に見えるという描写が最も印象に残りました。実際のところ、セレブになれば幸せが手に入るとは限りませんし、セレブでなければ “人生の負け組” であるということもありません。でも、そこを勘違いしている女性はけっこういるかもしれないと思わされました。