米英の “笑い” の違いに関する記事で目にした「for the record」の意味とは?
先日、”sarcastic” という単語について紹介した時に・・・
私は “sarcastic” を教えてもらった時、関西の笑いにちょっと似てるかも、と思いました。
でも、それを言うとよく言われるのが、「イギリスの人はもっと “sarcastic” やで」ということ。これについては、イギリスのコメディアンでアメリカでも活躍するリッキー・ジャーヴェイス(@rickygervais)さんが2年ほど前に TIME 誌で『The Difference Between American and British Humour』という記事を書いていたので、今週の<ヨムエイゴ>で改めてご紹介したいと思います。
と書いたので、今日はその記事を読んでみました。すると、一番最後に
Oh and for the record I’d rather a waiter say, “Have a nice day” and not mean it, than ignore me and mean it.
via Ricky Gervais: Is There a Difference Between British and American Humor | TIME.com
と書いてありました。
ポイント
“for the record” は「念のために記しておくと」という意味です。日常会話でも使われます。
(just) for the record: used for giving a piece of information that you want people to know
(ちょっとだけ情報を付け加えたい時に使うんですね!)
リッキー・ジャーヴェイスさんは「あっ、念のため付け加えると、私はウェイターが実際に思っていなくても『よい一日を』と言ってくれる方が、本心で無視されるより良いです」と書いていたのでした。
補足
上記の文は、以下の最初の段落の「よい一日を」のくだりに準じています。米英の国民性について書かれていて興味深かったので、ちょっと長いですが抜粋します。
It’s often dangerous to generalize, but under threat, I would say that Americans are more “down the line.” They don’t hide their hopes and fears. They applaud ambition and openly reward success. Brits are more comfortable with life’s losers. We embrace the underdog until it’s no longer the underdog. We like to bring authority down a peg or two. Just for the hell of it. Americans say, “have a nice day” whether they mean it or not. Brits are terrified to say this. We tell ourselves it’s because we don’t want to sound insincere but I think it might be for the opposite reason. We don’t want to celebrate anything too soon. Failure and disappointment lurk around every corner. This is due to our upbringing. Americans are brought up to believe they can be the next president of the United States. Brits are told, “It won’t happen for you.”
(何事も一般化するのは危険を伴うことが多いですが、それを承知の上で、私はアメリカ人の方がもっと「前向き」だと思います。アメリカの人は希望や怖れを隠しません。野心を讃え、成功に対して堂々と見返りを与えます。一方イギリス人は、人生の敗者に対してより居心地の良さを感じます。負け犬が負け犬でなくなるまで、私たちは負け犬を受け入れるのです。権威をやりこめるのが私たちは好きなんです。何となく。アメリカ人は実際にそう思っていなくても、「よい一日を」と言います。イギリス人は恐れ多くて言えません。それはきっと不誠実に聞こえるのが嫌だからだと思うでしょうが、私はその反対だと思います。私たちは何事もそんなにすぐ祝福したくないのです。失敗や落胆は至るところに潜んでいるからです。これは育てられ方の問題でしょう。アメリカ人は次の米大統領になれると信じるように育てられます。一方、イギリス人はこう言われます。「それはあり得ない。」)
via Ricky Gervais: Is There a Difference Between British and American Humor | TIME.com
その続きに、イギリス人の “sarcastic” な性分についても述べられていました。
There’s a received wisdom in the U.K. that Americans don’t get irony. This is of course not true. But what is true is that they don’t use it all the time. It shows up in the smarter comedies but Americans don’t use it as much socially as Brits. We use it as liberally as prepositions in every day speech. We tease our friends. We use sarcasm as a shield and a weapon. We avoid sincerity until it’s absolutely necessary. We mercilessly take the piss out of people we like or dislike basically. And ourselves. This is very important. Our brashness and swagger is laden with equal portions of self-deprecation. This is our license to hand it out.
(イギリスでよく言われることわざに、アメリカ人は皮肉を理解しないというものがあります。これはもちろん嘘です。でも、アメリカの人が常に皮肉を言わないのは事実です。知的なコメディには登場しますが、アメリカ人はイギリス人ほど社交的に皮肉を使いません。イギリス人なんて日常会話で前置詞並に頻繁に皮肉を使いますから。友人をからかいますし、”sarcasm” を身を守る盾として、また武器として使います。どうしても必要にならない限り、誠実にはなりません。基本的に好きな人も嫌いな人も容赦なくおちょくるんですよ。自分自身も。これはとても重要です。自分を卑下するのと同じくらい、ずうずうしさや威張った態度があるわけです。それが私たちの私たちたる証なんです。)
via Ricky Gervais: Is There a Difference Between British and American Humor | TIME.com
それは、リッキー・ジャーヴェイスさんの手がけたコメディ番組『The Office』のイギリス版とアメリカ版の違いにも表れているそうです。
たとえば、アメリカ版『The Office』の “上司” であるマイケル・スコット(スティーヴ・カレル)は、イギリス版のデヴィッド・ブレント(リッキー・ジャーヴェイス)よりもちょっとだけ優しくて、ちょっとだけ楽観的な設定にしたとのこと。子どもっぽくて心許なくて、うんざりする時もありますが、そこまでいじわるではありません。でもイギリス人は、悲劇的な出だしからハッピーエンディングにつながると、思わぬ喜びを感じるそうです。単に大勢の人が楽しい時間を過ごしているだけの物語を観るのは、イギリスの人はあまり好きじゃないみたいです。
イギリス版:
アメリカ版:
確かにデヴィッド・ブレントとマイケル・スコットはキャラが少し違います。
ちなみにリッキー・ジャーヴェイスさんは現在、コメディアンとしてもプロデューサーとしても活躍中ですが、彼が今もっともはまっているものは YouTube。『The Ricky Gervais Channel』というチャンネルを作って、オリジナル・ビデオをたくさんアップしています。リッキー・ジャーヴェイスさんが英語を教えてくれるビデオもありました。
これだけ有名な人がこういうオリジナル・チャンネルを作る試み、すごく面白いと思います。ちなみに私はリッキー・ジャーヴェイスさんの笑い方が大好きで、彼が笑っているのを見ると、絶対つられて笑ってしまいます。