切なくて美しい新海誠監督のアニメーション映画「雲のむこう、約束の場所」
先週、新海誠監督のアニメーション映画『秒速5センチメートル(5 Centimeters Per Second)』(2007)について書いたところ、こんなツイートをいただきました!
@tsukaueigo 新海誠監督の作品はどれも映像が素晴らしく良くてどれも切ないですがハズレ無しです。私的には、秒速5センチメートルの前作の「雲のむこう、約束の場所」 ow.ly/ky7KL がおススメです!
— 古角 聡明 (@kokadoAquent) April 30, 2013
・・・これはチェックしないと!
さっそくNetflix で調べてみると、こちらでも借りられることがわかったので、即レンタル。英題は『The Place Promised in Our Early Days』となっていました。
補足:新海誠監督の映画は、デビュー作の短編アニメーション映画『ほしのこえ(Voices of a Distant Star)』(2002)も Netflix にありました!2011年の『星を追う子ども』はまだありませんでした。
この作品は、南北に分断統治された日本が舞台。北海道はユニオン統治下に置かれて “蝦夷” と呼ばれ、本州側は米国占領下に置かれています。その “蝦夷” に建設された巨大な「塔」を、津軽海峡を挟んで眺める2人の中学生が主人公です。
2人は好奇心から、小型飛行機を組み立てて「塔」を目指そうとします。そこに加わるのが、サユリという女の子。2人の憧れの存在で、髪が長くて声が透き通っていて、天使みたいな子です。でも、計画が実現する前にサユリがいなくなり、残された2人も別々の道を歩むことに。やがて思わぬ事実が発覚します。
この作品を観て、私の心に最も強く残ったキーワードは「約束」でした。タイトルにも「約束」という言葉が使われていますが、約束って、青春の象徴の一つとも言える気がします。約束を通して描かれる男女の距離感が、切なすぎます。
その切なさをさらに強調するのが、美しい風景描写。「監督自身、風景に対して特別な思いを持っているのでは」と思ったら、やはりニコニコ動画のインタビューでこう語っておられました。
思春期の困難の時期ってみんなあると思うんですけど、そういう時期に − いろいろ大変なこともあったんだけど − 風景の美しさにいつもこう、自分自身救われてきたような気がするんですよ。毎日電車の外の風景を、毎日毎日見逃さないように・・・いつもなにか見どころがあって、見逃さないようにしてた思い出がすごく強いんですね。大変な時も、そんな風に風景にこう励まされてきたことが多いので、そういう感覚を映画の中に込められたらという気持ちはずっと一貫してあります。そういうものになってるんだったら嬉しいですけどね。(8:22)
いやもう、めちゃ「そういうもの」になっています。映像が美しすぎて、心救われます。もし映像がこれほどまで美しくなかったら、どんなにストーリーが良くても、ここまで感情は揺さぶられなかったかもしれません。
一つ興味深いのは、女性の描かれ方。『秒速5センチメートル』の明里も、『雲のむこう、約束の場所』のサユリも、共に守ってあげたくなるような、はかなげな雰囲気があります。新海誠監督は先ほどのニコニコ動画のインタビューで「サユリは “手の届かない初恋の象徴”」と語っていましたが、いわゆる男性にとっての「理想の女性像」というのがまさに明里やサユリなのかもしれません。
『秒速5センチメートル』も『雲のむこう、約束の場所』も、女性はどちらかというと象徴的に描かれている一方、男性の心理描写がめちゃくちゃ細かくて、どきっとするほど新鮮でした。
Twitter で教えていただいたおかげで、ますます新海監督作品のファンになりました。この場をお借りして改めてお礼申し上げます!