圧倒的な映像美!25カ国の映像をまとめた非言語映画『SAMSARA』

8/24(金)に公開された映画『SAMSARA』(日本公開未定)。1993年に『バラカ(BARAKA)』という作品で壮大な映像の叙事詩を繰り広げたロン・フリック(Ron Fricke)監督による最新ドキュメンタリーです。

BARAKA

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私は『バラカ』は観ていないのですが、『バラカ』を観たジェガーさんやジェガーさんの知り合いらが『SAMSARA』公開に興奮していたので、一緒に観てきました。

監督たちが5年という歳月をかけて25カ国を渡り、つなぎ合わせた映像詩。台詞は一切ありません。

私たちは5人で観に行ったのですが、映像があまりにもパワフルなため、1人は観終わった後 “I’m disturbed.(不愉快やわ)” と言っていました。彼女は妊婦さんなので、私も上映中ちょっと心配に思ったくらいです。

というのも、最初の方は雄大な自然などがたくさん映って、単純に奇麗やな〜素敵やな〜と思って観ているのですが、途中から大都市が映り始めるとだんだん恐怖感が芽生えてくるのです。私が生きているのは最初の方の奇麗な世界じゃなくて、この変に規則的で合理的で効率的で奇妙な世界の方なんやという事実を「どやっ!」と突きつけられているようで、私も息が詰まる気持ちに襲われました。

妊婦の彼女も大都市のシーンが特に “disturbing” と言っていましたが、本作はナレーションが一切なくて見た人に完全に解釈が委ねられているので、人によって感じ方は全く違うと思います。1人は大絶賛でした。ジェガーさんは「映像美に圧倒されて深い意味とか何も考えてなかった」と言っていました。

私も『SAMSARA』の映像美には本当に圧倒されまくりだったのですが、でも、同時に怖いなと思ったのは、映像が美しすぎてもう少しで思考停止になりそうだったこと。一見初めて観るような映像ばかりですが、よく考えればこの作品には、これまで何度も観てきた映像がたくさん含まれています。たとえば、日本でいうと「芸者」や「渋谷のスクランブル交差点」。アメリカだとファストフード産業。中国だと工場。アフリカだと部族。どことなくその国のイメージが画一化されていて、私には「固定観念のショーケース」にも思えました。

とはいえ、映像については本当に文句のつけようがありません。写真でしか見たことがなかったような情景も、映像になるだけで急に現実味をもって迫ってくるのが不思議です。

ちなみに、映画にも出てくる牛の巨大乳搾りシステムは、最近 Wired の記事The High Tech of Rural America: 9 Unusual Gadgets and Contraptions』でも紹介されていました。どこの国かと思ったらスウェーデンの会社みたいです。世界初の全自動搾乳ロータリーシステム(the world’s first automatic milking rotary system)で、毎時90頭を搾乳できるそうです。

このビデオは映画に出てくる映像ではありませんが、映画の方は迫力ありすぎて、逆に現実味がありませんでした・・・

ちなみに、”samsara” はサンスクリット語で「輪廻」という意味だそうです。