脚本家・監督ノーラ・エフロンの訃報記事で目にした「wind up」の意味とは?
先月26日に他界した、脚本家・監督のノーラ・エフロン(Nora Ephron)さん。彼女の作品はとても好きだったので、ニューヨーク・タイムズ紙(The New York Times)の訃報記事を読んでみました。
すると、こう書いてありました。
In a commencement address she delivered in 1996 at Wellesley College, her alma mater, Ms. Ephron recalled that women of her generation weren’t expected to do much of anything. But she wound up having several careers, all of them successfully and many of them simultaneously.
Writer and Filmmaker With a Genius for Humor | The New York Times(2012年6月)
ポイント
“wind up” はもともと「ねじを巻き上げる」という意味で、話や会議などに使うと「終わりにする」、人に使うと「怒らせる」、そして物事の展開などに使うと「結局〜になる」という意味になります。
- end something
- be in a place/situation
- trick someone with lies
- make someone angry
- make clock/watch work
(この場合は2番目の意味で使われているんですね!)
「1996年に母校ウェルズリー・カレッジ(Wellesley College)の卒業式で行ったスピーチで、ノーラ・エフロンさんは同世代の女性があまり期待されていなかったことについて語っていたけれども、結果的に彼女はいくつものキャリアを築いて成功したうえ、多くはほぼ同時に成し遂げた」と記事は伝えています。
補足
ノーラ・エフロンさんと言えば、代表作は『恋人たちの予感(When Harry met Sally)』(1989・脚本)、『めぐり逢えたら(Sleepless in Seattle)』(1993・監督/脚本)、『ユー・ガット・メール(You’ve Got Mail)』(1998・監督/脚本)など。
一番最近のヒット作は、『ジュリー&ジュリア(Julie & Julia)』(2009・監督/脚本)でした。
ほかにも随筆家(novelist)や劇作家(playwright)など、さまざまなジャンルで活躍していので、まさに「いくつものキャリアを築いて成功」していたスーパーウーマンだったと言えます。
このニューヨーク・タイムズ紙の記事によると、彼女は4人姉妹の長女(the eldest of four sisters)で姉妹全員が作家になったんだそう。両親ともハリウッドの脚本家(screenwriter)だったんですね。
Nora Ephron was born on May 19, 1941, on the Upper West Side of Manhattan, the eldest of four sisters, all of whom became writers. That was no surprise; writing was the family business. Her father, Henry, and her mother, the former Phoebe Wolkind, were Hollywood screenwriters who wrote, among other films, “Carousel,” “There’s No Business Like Show Business” and “Captain Newman, M.D.”
映画業界に入る前、彼女は記者でした。最初に就いた職は、ニューズウィーク誌(Newsweek)の “メール・ガール”。「郵便配達係」ということで、「メール・ボーイはいなかった」と記事に書いてあるので、おそらく「お茶汲み」のような事務的な仕事だったではないかと想像します。その後、ニューヨーク・ポスト誌(The New York Post)がストライキ中、同誌の記事のパロディを書いて送り、記者として働くきっかけを手に入れます。
After graduation from college in 1962, she moved to New York, a city she always adored, intent on becoming a journalist. Her first job was as a mail girl at Newsweek. (There were no mail boys, she later pointed out.) Soon she was contributing to a parody of The New York Post put out during the 1962 newspaper strike. Her piece of it earned her a tryout at The Post, where the publisher, Dorothy Schiff, remarked: “If they can parody The Post, they can write for it. Hire them.”
彼女が映画業界に入ったのは、ウォーターゲート事件を暴いたことで知られるカール・バーンスタイン(Carl Bernstein)記者との結婚がきっかけ。ウォーターゲート事件についてカール・バーンスタインとボブ・ウッドワード記者が共著した本『大統領の陰謀―ニクソンを追いつめた300日(All the President’s Men)』を映画化する話が進んでいた時に、脚本が気に入らず2人で書き直しをしたのだそう。脚本は結局使われることはありませんでしたが、その後さまざまな名作をヒットさせていきました。
Ms. Ephron got into the movie business more or less by accident after her marriage to Mr. Bernstein in 1976. He and Bob Woodward, his partner in the Watergate investigation, were unhappy with William Goldman’s script for the movie version of their book “All the President’s Men,” so Mr. Bernstein and Ms. Ephron took a stab at rewriting it. Their version was ultimately not used, but it was a useful learning experience, she later said, and it brought her to the attention of people in Hollywood.
私は『ユー・ガット・メール』を観たことがなかったので、ぜひ観てみたいと思います。メール・システムが古くてちょっと懐かしいです。エッセイも面白そうなので、読んでみたいな〜
ちなみに彼女が卒業したウェルズリー・カレッジは、私はよく知らなかったのですが、アメリカの名門女子大で、政治家のヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)もここの卒業生だそうです。
最後に、彼女が母校の卒業式で1996年に行ったスピーチを YouTube で発見したので、シェアします。
スピーチ全文はこちら→ Nora Ephron ’62 addressed the graduates in 1996. | Wellesley College
ご冥福をお祈りします。
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