メキシカン・フードチェーン『Chipotle』が制作したゲームのオープニング映像で耳にした「defy」の意味とは?

先日、ジェガーさんが「なあなあ、ちょっと iPad mini 貸してくれへん?」と言ってきました。ええよ、と言って渡すと、なんかダウンロードしています。



何ダウンロードしてんねん、と思ったら、ゲームのアプリをダウンロードしてはりました。

Chipotle Scarecrow

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(2013.09.19時点)
posted with ポチレバ

「何ダウンロードしてんの?」
「『Chipotle』が制作したゲームがちょっと話題になってて、気になったからダウンロードしてみた」
「『Chipotle』って、メキシカン・フード・チェーンの『Chipotle』?」
Chipotle

(By User:proshob (Own work) [(CC-BY-SA-3.0 or GFDL], via Wikimedia Commons

「せやで。そのオープニングでフィオナ・アップル(Fiona Apple)が歌ってるらしいねん。」

ジェガーさんも私もフィオナ・アップルが好きです。さっそくオープニングを一緒に観てみました。すると本当にフィオナ・アップルが歌っています!

改めて歌詞にじっくり耳を傾けてみたところ、”What we’ll see will defy explanation” というところが気になりました。

ポイント

“defy” は人や物事に使われると「拒否する」、理屈や論理に使われると「逆らう」、そして信念や理解に使われると「理解不能だ」という意味になります。

defy | Macmillan Dictionary

  1. to refuse to obey someone or something
  2. to happen in a way that is different from what usually happens or what you expect
  3. if something defies description, belief, or understanding, it is strange and almost impossible to describe, believe, or understand

ここでは “defy” の後ろに “explanation” が来ているので、「目にするものは説明不能だろう」と歌われていたのでした。

補足

でも、私の心を曲以上に捉えたのは、このかかし(scarecrow)の物語そのもの。ゲームのオープニングなのに、めちゃ切ないです。

そもそも何で主人公がかかしなのか、というところが私はひっかかったのですが、メイキング・ビデオによると、かかしはもともと農作物をカラス(crow)などの害から守るために畑などで活躍していたものの、昨今は農業の工業化によりかかしも活躍の場を失っていた、というところが背景になっているそう。

主人公のかかしは皮肉にも “Crow Foods” で工場勤務をすることになりますが、”ALL NATURAL” と書かれた工場の裏側では鶏がステロイドを打たれていたり、牛が小さな箱に押し込められて憐れな目をしていたりと、悲惨な家畜の状況を目の当たりにしてどんどん気分が落ち込んでいきます。

興味深いのは、この物語に使われている曲が “Pure Imagination” であるところ。『チャーリーとチョコレート工場(Willy Wonka & the Chocolate Factory)』(1971)に使われているあの曲です。

あの映画では、チョコレート工場の中は “パラダイス” として描かれていました。でも、かかしが見る工場の中はパラダイスとはほど遠い世界です。フィオナ・アップルの声が余計に物悲しく、哀愁を誘います。

かかしはぐったりして帰宅。そして庭先でふと唐辛子を発見します。そこでかすかな希望を感じ、自分の信念に基づいたメキシカン・フードを作ることを決意します。

そこからゲームが始まるという設定になっているのですが、フード・チェーンがゲームを作るという発想が私にはとても新鮮に感じられました。

『Chipotle』は昨年『Back to the Start』という映像を製作してカンヌライオンズ(旧称・カンヌ国際広告祭)フィルム部門グランプリを受賞。今年はそこからもう一歩先に進んでいる感じがします。

単に広告を打ってコンセプトを伝えるだけでなく、ゲームを通して顧客や見込み客を「教育していく」という発想。

私個人はもともとあまりゲームに対して強い興味を持っていませんでしたが、ジェガーさんの影響で時々ゲームをするようになって、だんだんゲームと教育の相性の良さを強く実感するようになりました。

たとえば、以前紹介した『Papo & Yo』というゲームは、「父親の虐待」が一つのテーマになっています。モンスターに豹変した父はカエルを食べると勢いを増すのですが、その父を元に戻そうと奮闘する中で、だんだんモンスターやカエルが象徴しているものの正体が見えてきて、すごく興味深いです。

ゲームは疑似体験を通して、教えられるのではなく自分で気づくことができるので、教育にも向いていると感じます。

Chipotle のように商品とともにコンセプトを強く売り出したい企業の場合、広告だけでなく、こういう手法もすごく効果がありそうです〜