ゲーム『Chipotle Scarecrow』に関する記事で何度か目にした「narrative」の意味とは?

昨日メキシカン・フードチェーン『Chipotle』が制作したゲーム『Chipotle Scarecrow』を紹介しましたが、Forbes がこれについて『Chipotle Scarecrow Makes Enemies To Win Customers』(9.13.2013)という記事を書いていたので読んでみました。

Chipotle

すると、”narrative” という単語が何度か登場しました。

“The Scarecrow” is not advertising. It is a narrative.

via Chipotle Scarecrow Makes Enemies To Win Customers – Forbes

Narrative works differently in the online space.  Narrative is intended to begin a conversation.

via Chipotle Scarecrow Makes Enemies To Win Customers – Forbes

ポイント

“narrative” は「物語」という意味です。

narrative | Macmillan Dictionary

  1. [COUNTABLE] a story, or an account of something that has happened
  2. [UNCOUNTABLE] the process, methods, or skills involved in telling a story

(数えられる名詞の時は「物語」あるいは「語り」という意味になって、数えられない名詞の時は物語を伝える過程や手法、技術を意味するんですね!)

映画でも、ドキュメンタリーでない映画は “narrative movie” と言われています!

つまり一文目は「”The Scarecrow” は広告ではない。物語だ。」、そして2文目は「物語はオンライン空間では異なる働き方をする。物語は会話を始めるためのものとしてあるのだ。」と書かれていたのでした。

補足

筆者は、広告批評家。『The Scarecrow』の映像ではブランド名が最後に一瞬現れるのみなので、マーケティング効果は薄いという見方がある一方(via USA Today)、筆者はそうとは限らないという見方を示しています。

Chipotle is not trying to be fair – the brand is trying to provoke an emotional response, both from the people who agree and disagree with them. Chipotle realizes that the stronger the outcry is from people who detest the story they’re telling, the closer those who agree with them will align to the brand.

(Chipotle は公平を目指しているわけではない – 賛同する人からも反対する人からも感情的な反応を引き起こそうとしているのである。Chipotle が伝えようとしている物語に反対する人からの声が大きければ大きいほど、賛同する人はよりブランドに歩み寄ることを Chipotle は知っているのだ。)

via Chipotle Scarecrow Makes Enemies To Win Customers – Forbes

ここで、冒頭に出てきた「物語は会話を始めるためのものとしてある」という主張につながります。

Instead of touting your brand, a better viral video strategy is to use narrative to transmit brand values.  This means relying on social sharing (people embedding your video in their blog, sharing on Facebook, tweeting it) to connect the message to the brand. It’s a high-wire act for marketers who are used to controlling the brand message, but the authenticity of the message is much stronger than with paid advertising.  It ensures that nearly every view of the video is driven by a recommendation, which dramatically increases engagement.

(ブランドを押し付けるのではなく、物語を通してブランド価値を伝えるというのが、より良いバイラル・ビデオの戦略である。これはすなわち、ソーシャル・シェア〔ブログにビデオを埋め込んだり、Facebook や Twitter でシェアしたりすること〕を通してブランドとメッセージを結びつけることを重視するという意味である。かつてブランド・メッセージをコントロールしていたマーケッターたちにとっては綱渡り的な行為ではあるが、そのメッセージの信頼性は有料広告よりもずっと高く、ブランドに対する結びつきを劇的に高めると言える。)

via Chipotle Scarecrow Makes Enemies To Win Customers – Forbes

実際、昨年の『Back to the Start』は、750万回以上の視聴数を記録しています。

これは、4000万人が視聴する2012年グラミー賞で流れたコマーシャルと比べるとたいした数ではないかもしれませんが、ソーシャルの力に支えられている分、ブランドに対する結びつきはより強かった可能性があります。

もう一つ、筆者が指摘しているのは、コーズ・マーケティング(cause marketing)。

コーズマーケティング(英語: Cause marketing)若しくはコーズリレーティッドマーケティング(英語: Cause-related marketing)は、特定の商品を購入することが環境保護などの社会貢献に結びつくと訴える販促キャンペーン[1]。単なる慈善活動と違い最終的には企業のイメージアップ・収益拡大が目的である。

via コーズマーケティング | Wikipedia

コーズ・マーケティングが成功するためには、コーズが会社の本質にしっかり埋め込まれていて、顧客がブランドの一部として理解している必要があります。コーズの設定がの幅が広すぎてもうまくいきません。

その点 Chipotle は、際立ったポジショニングを獲得していて、”Food With Integrity(正直な食べもの)” というミッションを明確に打ちだしています。

Through our vision of Food With Integrity, Chipotle is seeking better food from using ingredients that are not only fresh, but that–where possible–are sustainably grown and naturally raised with respect for the animals, the land, and the farmers who produce the food.

(Chipotle は “Food With Integrity” というビジョンを通して、新鮮なだけでなく -可能であれば- サステナブルに育てられた、そして動物や土地、農家に対する敬意を持って自然に育まれた食材を使った、より良い食べものを追求しています。)

via Chipotle Investor Relations – Press Release

筆者によると、この「可能であれば」というところがポイントだそうで、Chipotle は自ら完璧な観念に基づいて運営しているというよりは、現在主流の食生産方式や食習慣に影響を与えることにより興味を持っているそう。

そのため一部の活動家からは非難も受けていますが、Chipotle がファストフードチェーンとして独自のポジションを持ち、より幅広い顧客にアピールしていることは間違いないと筆者は語っています。

この記事を読んで私が思いだしたのは、先日ツイートもしたメルボルンのメトロ(Metro Trains Melbourne)のキャンペーン広告『Dumb Ways to Die』。

メロディやキャラクターのかわいさとは裏腹に歌詞がめちゃ強烈ですが、この動画も5,800万回の視聴数を記録し、大きく話題になりました。

このシニカルでキャッチ―なテーマソングは、お説教が届かない若者にブレイク。特設ページでさまざまなソーシャルメディアでシェアできるようになっていたこのキャンペーンソングはあっという間に拡散。このキャンペーンが始まって3カ月後、事故は21%も減ったそうです。

via こんな死に方はイヤだ!人身事故を減らした、メトロのポップなキャンペーンソング「Dumb Ways to Die」[Cannes Lions2013] | greenz.jp グリーンズ

これも、ソーシャルの力をうまく利用し、今まで届きにくかった人たちにメッセージを伝えることに大きく成功していると思います。

ソーシャル・ネットワークが普及する前も、面白い CM などがあったら「あの CM 観た?」という感じで口コミは行われていましたが、今後ますます口コミが重視されていきそうです。

※アイキャッチ画像:By Chris Potter [CC-BY-2.0], via Flickr