ジャーニーのインタビュー映像で耳にした「lip-syncing」の意味とは?
今、めっちゃ観たい映画があります。
今年で結成40周年を迎えるロック・バンドの大御所ジャーニー(Journey)が、新ボーカリストを採用する過程を追ったドキュメンタリー『ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン(Don’t Stop Believin’: Everyman’s Journey)』(日本は3月16日公開)。
日本語字幕付きはこちら→ 「ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン」予告編 | YouTube
米国の大人気テレビドラマシリーズ『glee/グリー』でカバーされ、2011年の世界最多のダウンロード数を記録した名曲『ドント・ストップ・ビリーヴィン』、不朽の名バラード『オープン・アームズ』など1975年のデビュー以来、メガヒットを連発し、全盛期には8枚のプラチナ・ディスクを出すなど大記録を打ち立てたアメリカを代表するロックバンド、ジャーニー。しかし2007年、30年以上のキャリアを誇るバンドは岐路に立たされていた。70年代からの黄金時代を担ったカリスマ、ボーカルのスティーヴ・ペリーが98年に脱退。その後、新たに2人のボーカリストを新メンバーとして迎えたものの相次いで脱退。それ以降はボーカル不在で活動は停滞していた。
2007年12月、新しいリードボーカルを探し求めていたギタリストのニール・ショーンはYouTubeでジャーニーの曲を歌う無名のフィリピン人シンガー、アーネル・ピネダの映像を偶然見つける。スティーヴ・ペリーを髣髴とさせるハイトーンの声質、そして驚くべき歌唱力に衝撃を受け、すぐさまニールはアーネルに連絡を取る。まさかの電話にアーネルは悪質な悪戯だと最初はとりあわなかったが、本当にニール本人だとわかるとすぐさま渡米、オーディションを受け、正式にジャーニーの新ボーカリストとして迎えられた。そのネット時代ならではのサクセスストーリーは全米、世界中で大々的に報道された。 本作『ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン』は、ジャーニーとフィリピン人、アーネル・ピネダの身に起きた、ロック界のおとぎ話のような実話を追ったドキュメンタリー。歌うことを教えてくれた最愛の母親の死、一家離散、2年間もの路上生活… しかし彼は人生のすべてを歌に賭け、計り知れない苦労を乗り越えアメリカン・ドリームを掴んだ。これは決して夢をあきらめることをしなかったアーネルの不屈の精神とその類まれなる才能の物語でもある。
私、数年前にジャーニーに新しく加わったボーカリストが YouTube で発掘されていたことを全く知りませんでした!
YouTube でジャーニーに発掘されたアーネル・ピネダ(Arnel Pineda)さんもすごいですが、ボーカルを YouTube で見つけようと思ったジャーニーもめっちゃすごいです。なんで YouTube を使おうと思ったのか、YouTube で探すことに不安はなかったのか、YouTube でも人の才能は測れるのか・・・など、いくらでも疑問が沸いてきます。
そんなふうにあれこれ思いを巡らしながら私もいろいろ YouTube を見ていると、興味深いインタビュー映像を発見しました。その中で、キーボードのジョナサン・ケイン(Jonathan Cain)さんが
The deal for Neal was that, you know, hey, this was live. You could tell it was live, you know. There wasn’t any, you know — sort of — lip-syncing going on.(1:11)
と言ったのが気になりました。
ポイント
“lip-sync” あるいは “lip-synch” は、いわゆる「口パク」という意味です。
lip-synch: to pretend to sing or say in synchronization with recorded sound
(”lip sync” “lip synch” と書かれることもあります!)
「ニールにとって重要だったのは、これが生だったということです。生だというのはわかります。口パクみたいなものはありませんし」と、ジョナサン・ケインさんは言っていたのでした。
私がこの言葉を覚えたのは、実はオバマ大統領の就任式の時でした。この日、ビヨンセ(Beyoncé)が歌を披露する場面があったのですが、後日「ビヨンセの歌は実は口パクだった」というニュースが流れたのです。歌う条件が良くなかったのでやむをえず、ということだったみたいですが、その時に何度も “lip-sync” という言葉を耳にして、覚えました。
補足
というわけで、先ほどのジャーニーの映像によると、彼らが YouTube に目を向けたきっかけは、ジョナサン・ケインさんの兄弟が
Hey, you know, rather than getting all these CDs and stuff, why don’t you guys just look on YouTube, there’s like tons of people, you know?
(あのさ、CD とかより YouTube 見てみたら?あほほど人いるで。)(0:24)
と言ったのがきっかけやったとか。
ニール・ショーンさんも、YouTube の良さについてこう説明します。
And so I liked the idea that YouTube was live, basically, and that even if the sound quality was not good, if it was from the telephone, or wherever it came from, I knew that it was not doctored with.
(基本的に、YouTube は生であることが良いと思っています。たとえ音質が悪くても、電話とかでも何でも、後で修正されたものじゃないことはわかりますから。)
さらにニール・ショーンさんは、オーディションにかかる手間についても説明。確かにオーディションは、開催する側にとっても応募する側にとっても、労力や費用がめちゃかかります。オーディションにこだわり続けていれば、ジャーニーが当時フィリピンにいたアーネル・ピネダさんと出会うことは難しかったかもしれません。
でも、私にはまだひっかかる点が残っています。果たして YouTube でも人の才能を測ることはできるんでしょうか?
下のビデオでレポーターがニールさんに似たような質問をしていたので聞いてみると、
I’ve got a good, really well trained musical ear, and when somebody hits me they hit me, and the fur stands up on my arms.(1:42)
(私は鍛え抜かれた音楽耳を持っていますので、びびっと来る時は本当に衝撃を受けて、鳥肌が立ちます。)
とのこと。プロはやっぱり見抜く力が違うので、YouTube だから、というのは関係ないんですね〜!
私もできればニールさんが発掘したビデオを観てみたいと思い、公式サイトに載っていた予告編を頼りに探したところ、ニール・ショーン(Neal Schon)さんがクリックしたと思われる動画が見当たりました:
こ・・・これは・・・!
圧倒的歌唱力と、YouTube で聴いていることを忘れさせるほどの強烈な存在感。完全に彼の世界に引き込まれて、衝撃で心が震えました。想像以上です。
こちらが、スティーヴ・ペリー(Steve Perry)時代のジャーニー:
そしてこちらが、アーネル・ピネダを迎えた新生ジャーニー:
これはもう、どちらが良いとかいう問題ではなく、どっちも完全にジャーニーです。
それにしても、アーネル・ピネダさんの歌う『ドント・ストップ・ビリーヴィン(Don’t Stop Believin’)』の説得力の半端ないこと。彼に「信じるのをやめたらあかん」と言われることほど、胸に響くことはありません。でも、信じるのをやめなかったのは、ジャーニーの他のメンバーもそうです。そういう意味で、今回の新ボーカル採用については、『ドント・ストップ・ビリーヴィン』という名曲を生み出したジャーニーの底力を見せられた気がします。
もう『ドント・ストップ・ビリーヴィン(Don’t Stop Believin’)』が頭から離れません。早く映画を観に行きたいです。