リビアのアメリカ大使館襲撃事件のニュースで耳にした「evacuate」の意味とは?
先週9月11日夜、リビア(Libya)のアメリカ大使館(U.S. embassy)が襲撃され、クリストファー・スティーブンス(Christopher Stevens)駐リビア大使(Libya ambassador)ら4人が命を落とす事件が起きました。
その翌日のニュースを見ていると、ニュースルームにいるシニア外政担当記者の女性(senior foreign affairs correspondent)が “All Americans who were in Bengazi have now been evacuated to Europe.” と言いました(3:16)。
ポイント
“evacuate” は「避難する」という意味で、災害のニュースなどでよく耳にします。
- to leave a building or other place because it is not safe
- to make people leave a building because it is not safe
- to make people leave their homes because of a dangerous situation such as a war
- [medical] to get rid of solid waste from your bowels
(基本的に「危険な場所から避難する」という意味ですが、「(住居のある地域が危険にさらされている場合に)家から避難する」という意味でも使われます。昨年の東日本大震災のニュースでは、この b) の意味で evacuate が使われているのをよく耳にしました。2. は医療用語です。)
「ベンガジにいたアメリカ人はすでに全員ヨーロッパに避難しています」と記者さんは言っていたのでした。
補足
というわけで最初の報道が流れた時は、9・11に関連するテロ行為なのか、あるいはこの事件の起きる数時間前にエジプト(Egypt)のカイロ(Cairo)で起こった反イスラム映画暴動と関連した事件なのか、まだよくわかっていなかったようでした。
でも私はそれ以前に「反イスラム映画?誰かそんな映画作ったん?」という状況。調べてみると、どうやら “Innocence of Muslims” という映画が元凶であることがわかってきました。
Forbes の記事『‘Innocence of Muslims’ Now With 10 Million Views Worldwide』によると、この映画のクリップは YouTube ですでに1,000万人以上に視聴されているそうで、試しに私も観てみたのですが(”Innocence of Muslims” で検索すると見られます)、かなりアマチュアっぽい作りです。Bloomberg の記事『Figure Tied to Anti-Islam Film Has Criminal Fraud Record』によると、キリスト教(Christian)の家族がムスリム教徒(Muslims)に襲われるというのが大筋で、イスラム教創始者のムハンマド(Muhammad)を侮辱する内容も含まれていたようですが、私は途中で観る気を失いました。そして、一体この映画がどういう経緯で作られて、どういう経緯で中東地域に広まっていったのか、気になってきました。
Forbes の『How the ‘Muhammed’ Video Went Viral(どうして「ムハンマド」のビデオは広まったのか)』という記事によると、事の起こりは9・11の1週間前。アメリカに住むキリスト教コプト派(Coptic Christian)のエジプト人からエジプトのメディアに、「9・11のテロ行為の裏で何があったかを暴く映画を9・11当日に上映する」と連絡があったそう。
当初はちっちゃく記事になっていくつかの媒体で伝えられた程度でしたが、人気のあるテレビ局のコメンテーターが映画のクリップを流してから状況が変わり始めます。
Facebook ページが立ち上げられ、9月11日に抗議運動(protest)を起こそうという動きが活発化。アメリカ大使館にも問い合わせが入るようになりますが、その時の大使館の反応は「えっ?何のビデオ?」だったそうです。
現在抗議運動は中東だけでなくアジア地域にも拡大中。これを受けてホワイトハウスは YouTube の親会社である Google に対し、YouTube に投稿された動画を削除することを要求しましたが、「ガイドラインに反するものではない」という理由から Google 側が拒否。そのかわり Google は、暴動が起きて不安定な状況に陥っているリビアやエジプト、インド、インドネシアに対して閲覧制限を設けることで対処しています。
現在は映画を作った中心人物の事情聴取が進んでいるので、映画制作の詳しい動機などはこれから徐々に明らかになっていくと思いますが、エジプトのメディアに映画の宣伝をするあたり、私には製作者たちがこのような事態を始めからある程度想定していたようにも考えられます。