元アポロ11号船長ニール・アームストロング氏のインタビューで耳にした「decade」の意味とは?
今月25日に他界した元アポロ11号(Apollo 11)船長のニール・アームストロング(Neil Armstrong)氏。
「1人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍だ(That’s one small step for [a] man, one giant leap for mankind.)」という名言を残したことで有名ですが、彼が生前この名言についてインタビューに答えていたビデオが紹介されていたので、見てみました。
アームストロング氏によると、この名言は月面に着陸するまで全く頭に思い浮かばなかったそう。アームストロング氏が月面着陸して最初に発した言葉は “The eagle has landed.” でしたが、どちらかというと大統領の目的を果たしたという意味で語ったこちらの言葉の方が重要だと思っていたとのこと。(鷲はアメリカの国鳥です。)それについて話している下のビデオで、”decade” という言葉が使われているのを耳にしました(リンク先の Part 3 の映像の 7:47 に登場しています)。
CPA Australia presents An Audience with Neil Armstrong
ポイント
“decade” という言葉は、私はこちらに来るまで正直あまり馴染みがなかったのですが、日常生活でよく耳にします。日常会話でもよく聞く言葉です。
- A period of ten years
- a period of ten years beginning with a year whose last digit is zero
- a group, set, or series of ten
(一般的に 1. と 2. の意味で使われることがほとんどだと思います。2. の使用例は “the decade of the 1980s” となっていました!発音は [DECK-aid] が近いみたいです。)
つまり “That was the signature line for achieving the presidential goal that we had been working on for a decade.(あれ [= “The eagle has landed.”] は、10年もの間取り組んできた大統領の目的を果たしたことを意味する決め台詞でした。)”(0:32)ということで、1. の意味で使われていたのでした。
ここで話されている「大統領」とは、ジョン・F・ケネディ(John F. Kennedy)大統領のこと。1962年に、ケネディ大統領がスピーチで「この10年の間に人間を月に送る」と宣言したことに基づいているんですね。
We choose to go to the Moon! We choose to go to the Moon in this decade and do the other things, not because they are easy but because they are hard, because that goal will serve to organize and measure the best of our energies and our skills …
↑ ここでは “in this decade” と言ってはるので、2. の意味で使われていることがわかります。
補足
元記事には他にもビデオがたくさんあって、月面着陸に関する裏話がいろいろ紹介されていました。
たとえばアポロ1号がテスト時に炎上し、仲間を失ったこと。そのため計画が2年遅れてしまったけれども、結果的に宇宙船の質が大幅に改善されたこと。月に行って戻ってこれる可能性は90%くらいだったけど、月面に着陸できるかどうかの可能性は50%しかなかったこと。探査機『キュリオシティ』もそうでしたが、やはり事前にテストを繰り返しても、実際にうまくいくかどうかについては不確かな部分が多かったんですね。
こうやって話を聞くと、彼らがいかに困難な状況をいくつも乗り越えてこれだけの偉業を達成したかが、改めてよくわかります。
ちなみに、”That’s one small step for [a] man, one giant leap for mankind.” の [a] の表記については、前のブログで書きました。
月面着陸の際に「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である
(That’s one small step for a man, one giant leap for mankind))」という有名なセリフをニール・アームストロング宇宙飛行士(当時)が言った際、あろうことか実況放送中のキャスターが「ちょっと何を言ったかよく分かりませんね〜」と言っているんです。雑音か何かではっきり聞き取れていなかったようです。おっちゃん、そこめっちゃ重要やん!と2人で突っ込んでいたら、誰かに教えてもらったらしく後でちゃんと言い直していました。ただ、おっちゃんもおっちゃんですが、なんとこのアームストロングさんも、”That’s one small step for a man” と本来言わなければならないところを “That’s one small step for man” と a を言い忘れているんです。a 1つ言い忘れるだけで、”一人の人間にとっては小さな一歩だが” という本来の意味が “人類にとっては小さな一歩だが” となってしまい、後半の “人類にとっては大きな飛躍である” につながらなくなってめっちゃ致命的な間違いになってしまっています。
ウィキペディアなどにも “That’s one small step for [a] man, one giant leap for mankind.” と書いてあるんですが、この [a] は、”どっちでも良い” ということではなく、本来は a を入れなあかんけどアーム・ストロングさんが a を言ってないから引用文としてこうしないといけない、という意味だそうです。
via You spilled it on me. | Are You A Normal Japanese Girl?(2009年7月)
NBC News の記事『‘One Small Step for Man’: Was Neil Armstrong Misquoted?』によると、どうやらアームストロング氏本人はちゃんと a と言っていたらしいですが、うまくレコーディングできていなかったみたいです。
私もいまだに普段話していて a とか the を間違えますが、冠詞って本当に重要です!