ドクター・スースに関する記事で目にした「obsolete」の意味とは?
先日、ドクター・スースに関する本を紹介しましたが、その時にふと思ったのが、「なんでセオドア・ガイゼル(Theodor Geisel)さんは “ドクター・スース(Dr. Seuss)” と名乗ってはったんやろう?」ということ。
Wikipedia を見てみると、ニューヨーク・タイムズ紙(@nytimes)の記事『Dr. Seuss, Modern Mother Goose, Dies at 87』(1991年9月)を発見したので読んでみました。
すると、”Adults Are Obsolete Children” という小見出しが目に留まりました。
本文の
“I’d rather write for kids,” he later explained. “They’re more appreciative; adults are obsolete children, and the hell with them.”
という箇所から引用されています。
ポイント
“obsolete”〔発音〕は、「廃れた」という意味です。
obsolete: no longer useful, because something newer and better has been invented
(より新しく、より良いものが出てきたせいで、もはや使い物にならない、という意味なんですね〜)
セオドア・ガイゼルさんは「私は子どもたちのために書く方が良い。子どもたちの方が価値がわかるからだ。大人は廃れた子どもだ。知ったこっちゃない」と言っていたのでした。
補足:”the hell with” は “to hell with” と同じで、失望を表すイディオムです。あまり上品な言い回しではないので、また「キクエイゴ」で改めて取り上げたいと思います。
to hell with: used for showing that you are angry with someone or something and do not care about them any more
(誰か、あるいは何かに対して怒りを示し、もうそれ以上気にかけない、という意味なんですね〜)
補足
というわけでセオドアさん、めちゃめちゃ大人嫌いやったみたいですが、以下の文を読むとその原因が読み取れるように思います。
Mr. Geisel began using his middle name as a pen name for his cartoons because he hoped to use his surname as a novelist one day. But when he got around to doing a grown-up book — “The Seven Lady Godivas” in 1939 — the grown-ups did not seem to want to buy his humor, and he went back to writing for children, becoming famous and wealthy.
(ガイゼル氏は、いつか小説家になる時に名字を使うべく、漫画のペンネームにはミドルネームを使っていた。しかし、1939年に『The Seven Lady Godivas』という大人向けの本を出版したところ、どうやら大人にはそのユーモアがうけなかったらしく、彼は再び子供のために書くようになったのである。そして有名になり、富を築いていった。)
スースって、セオドアさんのミドルネームやったんですね。
セオドアさんが生まれたのは1904年。お父さんはマサチューセッツ州スプリングフィールド(Springfield, Mass)にある動物園の園長さん(Superintendent)でした。お父さんは息子に動物園を見せるのが好きで、セオドア少年は普通にライオンやトラの赤ちゃんのおりの中に入ったりしていたそうです。
セオドアさんは高校卒業後、ダートマス大学(Dartmouth College)に入学し、英語を専攻。今もある『Jack-O’-Lantern』というダートマス大学のユーモア誌に漫画を寄稿するようになり、やがて同誌の編集者になります。その後オックスフォード大学リンカーン・カレッジ(Lincoln College of Oxford University)に留学し、最初の妻であるヘレン・パーマー(Helen Marion Palmer)さんと出会って結婚。当初セオドアさんは大学教授になるつもりでしたが、彼に漫画を描くよう勧めたのは、このヘレンさんでした。
(テッドのノートはいつも素敵な動物で埋め尽くされていました。だから私は彼の仕事を方向転換したんです。ここにこんなに素晴らしい絵が描ける人がいるんです。だったら彼はそれで生計をたてていくべきです。)
一般的価値観からすると大学教授の方が “安定” した仕事に見えますが、奥さんはセオドアさんの才能を見抜き、信じていたんですね。彼女はセオドアさんのビジネス・マネジャーとなって本の編集を手伝う傍ら、自らも子供向けの本を書いていました。
セオドアさんはヴァニティ・フェア(Vanity Fair)誌など、最初は各種雑誌に寄稿していましたが、彼を有名にしたのは殺虫剤(insecticide)の広告やったそうです。
そして1937年に初の著作『And to Think That I Saw It on Mulberry Street(マルベリーどおりのふしぎなできごと)』を出版。
先ほどセオドアさんの大人嫌いのエピソードがありましたが、生涯で出版した48冊の本の中には、子どもだけでなく大人も対象にした本もありました。その中でも最も売れたのが、ドクター・スースの遺作となった『きみの行く道(Oh, the Places You’ll Go!)』(1990)。私がドクター・スース本の中で最も好きな本であり、ドクター・スースに出会ったきっかけの本でもあります。
人生における困難や迷い、スランプなどをユーモアあふれるポップなイラストで描き、勇気と希望を与えてくれるこの本は、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラー・リストに79週間掲載され続け、あっという間に卒業生への定番の贈り物として定着したそうです。
ドクター・スースさんは “現代のマザーグース” と言われ、今も多くの子どもたちに親しまれています。
ちなみに、公式サイトの紹介ページによると、”Dr. Suess” と名乗り始めたのは雑誌への寄稿時代で、自分の名前をふざけて学者っぽく “Dr. Theophrastus Seuss(ドクター・テオフラスタス・スース)” と署名したのが始まりだったとか。1年間その署名が使われた後、1928年に短縮されて “Dr. Suess” になりました。