東日本大震災の漂流物のニュースで目にした「debris」の意味とは?
先ほどニュースを見ていたら、こんな見出しを発見しました。
Large boat found on North Shore may be tsunami debris | Hawaii News Now(2013年2月)
さっそく読んでみると、短い記事の中に見出しも含めて計4箇所、”debris” という単語が出てきました。
Another large piece of apparent debris from the Japanese tsunami nearly two years ago has washed up on an Oahu shore.
The boat has Japanese writing on it and is covered with barnacles similar to other tsunami debris that has come ashore in recent months.
The state has been notified and says they will send a team to investigate and confirm if this is tsunami debris.
ポイント
“debris” は「がれき」という意味です。
- the pieces of something that are left after it has been destroyed in an accident, explosion etc
- [technical] pieces of waste material, paper etc
(東日本大震災関連のニュースでは “tsunami debris〔津波によって発生したがれき〕” という表現で見聞きする機会が多いです。)
というわけで、1番目は「約2年前に日本で起きた津波によって発生したがれきと見られる大きな物体が、オアフ海岸に打ち上げられました」、2番目は「ボートには日本語が書かれており、ここ数ヶ月の間に浜に上がった他の津波によるがれき同様フジツボ(barnacle)に覆われています」、そして3番目は「果たしてこれが津波によるがれきなのか、チームを派遣して調査し、確認する見通しです」と書かれていたのでした。
こちらが、今日(米13日)オアフ島沖に漂着したボートです。
補足
一方、昨日は昨日で『Millions of tonnes of tsunami debris approaching B.C.’s coastal communities』(2013年2月)という記事がありました。この春にたくさんの漂流物が北米西海岸付近に流れ着く予定やそうです。
震災で海に流れ出たがれきの量は、ハワイ大学の科学者たちによると推定1800万トン以上。中には2500万トンに達するという見方もあるようですが、「日本の環境省はわずか500万トンが海に流れ出たと述べている」と書かれています。
Just how much debris is swirling in the sea is hotly debated.
Scientists at the University of Hawaii have estimated the amount at more than 18 million tonnes. Other estimates are as high as 25 million tonnes. Yet the Japanese Ministry of the Environment says just five million tonnes washed out to sea.
18 million tonnes of tsunami debris drifting to B.C. | CBC News(2011年10月)
気になって首相官邸の『東日本大震災による洋上漂流物Q&A』(最終更新2012年11月)を参照したところ、
Q. 洋上漂流物は全部でどのくらいあるのですか?
A. 東日本大震災発災直後において、150万トン程度が洋上漂流物となったと推計されていますが、 既に陸に引き上げられたものや時間の経過とともに海中に沈んでしまっているものもあると考えられるため、現在漂流しているものは、それよりもさらに少ない量であると考えられます。
東日本大震災により、被災三県において生じたがれきの総量は、2,000万トン以上と推定されています。東日本大震災発災直後においては、このうちの500万トン程度が津波により太平洋に流出し、その7割程度(350万トン程度)が日本沿岸付近等の海底等に堆積し、残りの3割程度(150万トン程度)が洋上漂流物となったと推計されています。
ただし、洋上漂流物の中には、既に陸に引き揚げられたものや時間の経過とともに海中に沈んでしまっているものもあると考えられるため、現在漂流しているものは、150万トン程度よりもさらに少ない量であると考えられます。
○総量推計結果はこちら
と書かれていて、産経新聞の記事『震災がれき 北米漂着、来年2月には4万トン超 生態系に悪影響懸念』(2012年10月)には、
太平洋へ流れ出たがれきは推計480万トン。7割程度は海底へ沈んだとみられ、環境省は残りの133万トンが漂流がれきになったと推定している。海流と偏西風に乗り、人間が歩くほどの速さで東へ漂流。今月には1・2トンが北米の沿岸域へ到達し、その量は12月に3万1千トン、来年2月には4万1300トンに上ると推計される。
とありました。
米国海洋大気庁(NOAA)には、日本政府が見積もった推定値が書かれていました→ Marine Debris Program – Marine Debris Info
これに対し、先ほどの『Millions of tonnes of tsunami debris approaching B.C.’s coastal communities』(2013年2月)に書かれていた漂流がれきの量は150万〜300万トン。これはカリフォルニア州の大きさに相当するそうで、今年から来年にかけてこれらがカリフォルニアからアラスカまでの海岸に漂着すると見られています。
数字はどれが正しいのかわかりませんが、今の状況から察するに、大量漂着の時期はだいたい合っていると考えて良さそうです。
The majority of the debris is expected to sink or to end up caught in the eddies of the North Pacific garbage patch.
But that could still leave millions of tonnes afloat at sea — recent estimates put the number at 1.5 to 3 million tonnes. That represents an ocean of garbage some experts think could be the size of California — and the bulk of this is expected to hit the Pacific Coast, from California to Alaska — in 2013-14.
Irving said the U.S. National Oceanic and Atmospheric Administration (NOAA) has warned coastal B.C. communities to expect the first big increase in debris in April.
“Right now it has levelled off, but they think it is really going to show up in April. They see quite large volumes arriving,” Irving said.
記事には、最も難しいのは小さい漂着物やとも書かれていました。確かに、小さいとそれだけ津波によるものなのか判別しにくくなるでしょうし、大きい物体よりも長期にわたって漂着し続ける可能性があります。
“The most challenging debris are the smallest pieces,” Osborne said.
“We will be able to deal with large objects, one way or another, but I’m very concerned about the possible amount of tiny styrofoam and plastic pieces that may be washing ashore for years to come.
“It’s challenging to distinguish the source of debris on local beaches, whether it is from the Japan tsunami or from a fishing vessel or some other source.
ちなみにこれらの漂着物のうち、プラスチックやガラスや木、その他再生可能な素材の多くはリサイクルし、残りは廃棄するそうです。
As part of their preparations, Ucluelet set up dedicated tsunami debris bins at the local public works yard. Ultimately, much of the plastic, glass, wood and other reusable materials are expected to be recycled, the rest disposed of.
がれきが放射能で汚染されているかもしれないという恐れに対しては、原子力発電所問題が起きる前にがれきの大半が海に流れ出ていたという見方が下されていますが、それでも念のためサンプル・テストは行うとのこと。(2012年9月の時点で放射能が検出された例はなし)
The group also played down fears that some of the debris could be contaminated with radioactivity from Fukishima, noting that “the majority of the debris will have been swept away from Japan during and immediately following the earthquake and tsunami – prior to the issues with the nuclear reactor.”
Despite this, the province will do some sample testing of debris as a safeguard. To date, no test has detected radiation, according to the September 2012 update from DFO.
今のところ、漂流物の問題は各州政府に任されていますが、先ほどの産経新聞の記事『震災がれき 北米漂着、来年2月には4万トン超 生態系に悪影響懸念』(2012年10月)に
漂流がれきは今後、海に沈みにくい倒壊家屋の木材や流木、漁船などが多く打ち上げられると予測される。米海洋大気局は7月、アラスカからカリフォルニアまでの西岸4州とハワイ州に清掃費用などとして5万ドル(約400万円)ずつ拠出すると発表したが、費用不足が懸念されている。
日本政府は9月、米国とカナダへ1州当たり100万ドル、計600万ドルを資金供与すると伝えた。環境省は、「国際法上は流れ着いた先の国が処理することになっているが、震災では両国に支援してもらったこともあり、義援金として拠出することになった」(海洋環境室)と説明する。
とあった通り、費用の問題も深刻そう。うまく義援金が役立てられて各州のがれき処理がスムーズに進むことを期待しています。
※アイキャッチ画像:by Fox News Insider [CC-BY-2.0], via Flickr