脳科学者の茂木健一郎氏がイギリスの教育雑誌で発表した論文で目にした「Meiji Restoration」の意味とは?
偶然目にした脳科学者の茂木健一郎さんのブログ記事『Times Higher Educationに、私のエッセイが掲載されるまでの顛末記。』(2013年1月)を読んで気になったので、Times Higher Education の原文記事を読んでみました。
Times Higher Education – From Where I Sit – Linguistically closed for business(2013年1月)
すると、
The Meiji Restoration of 1867 brought modernisation to Japan.
と書いてありました。
ポイント
“Meiji Restoration” は「明治維新」のことです。
Meiji Restoration: A turning point in Japanese history in 1868 when the last shogun was overthrown and the emperor assumed direct control over the nation. The following Meiji Period (1868–1912) was marked by Japan’s opening to the West and the establishment of a strong centralized government.
(この辞書の説明、「明治維新って何?」と聞かれた時の説明にもそのまま使えそうですね!)
“restoration” 自体は「修復」「返還」などの意味があります。
- [COUNTABLE/UNCOUNTABLE] the process of putting something such as a piece of art or a building back into its original condition so that it looks cleaner and better
- [COUNTABLE/UNCOUNTABLE] the act of returning something that was lost, stolen, or removed
- [UNCOUNTABLE] [COMPUTING] the process of returning the original software programs to a computer after it has been repaired
茂木さんは「1867年の明治維新で日本に近代化がもたらされた」と書いてはったのでした。
補足
というわけで、今日は茂木さんの記事を私なりに紹介します。と思ったら、茂木さんご自身が翻訳された内容がすでにアップされていました!
「(日本の大学は)言語的に閉じている」(茂木 健一郎)| BLOGOS(ブロゴス)(2013年1月)
でも日本語訳も私にはちょっと難しかったので、両方照らし合わせつつ、頑張って解釈してみたいと思います。
まず前置きの後、茂木さんが寄稿した Times Higher Education が毎年発表する世界大学ランキングにおいて、東京大学が27位であったことが述べられています。
The Times Higher Education World University Rankings put the University of Tokyo, Japan’s highest-placed university, in 27th position. But of the five criteria evaluated by THE – teaching, research, citations, industry income and international outlook – Tokyo’s score for the final measure is disproportionately poor. This is symptomatic of deeper concerns.
「教育」「研究」「論文引用回数」「産業活動」「国際化」の5つの評価基準のうち、「国際化」の評価が極端に悪いと指摘されていますが、原文の図を見ると、確かに「国際化」のところで伸び悩んでいます。
ここで茂木さんは、歴史を振り返ります。かつて明治維新を迎え、積極的に外国の制度や文化を取り入れていった日本。この頃に西洋風の大学が設立され、東京大学もその初期にできました。当初、東京大学の授業は英語で行われていたそうですが、その後日本語でも講義ができるように日本語の見直しが進められ(この時に「科学」「社会」「経済」などの新しい言葉が考案されたそうです)、今では多くの授業が日本語で行われるようになっています。
The Meiji Restoration of 1867 brought modernisation to Japan. The new government, keen to learn from and catch up with the West, established European-style universities. Tokyo was among the first and has been considered Japan’s most prestigious academic institution.
At first, lectures at Tokyo were delivered in English and other major European languages, then efforts were undertaken to update the native tongue so that they could be given in Japanese. Many new terms created in this process (including expressions corresponding to “science”, “society” and “economy”) enriched the language, making it possible to conduct teaching and research in Japanese, especially in the humanities.
こうして大学を通して西洋の科学や技術、文化が輸入され、急速な近代化につながっていったようですが、現在は今までのやり方が通用しないところに来ていると茂木さんはおっしゃっています。
Modern Japanese universities started as machinery to import Western science, technology and culture. The fact that they were largely successful is evidenced by the nation’s rapid modernisation. When the rules of the game change, however, resources accumulated in the past become obstacles, not assets.
要は、今のウェブ時代においては多くの分野の知識を統合していく必要があるのに対し、日本の大学の卒業生は言語の障壁によって有望な最新領域に入り込むことが難しくなってきているとのこと。このように日本の大学が言語的に閉じていることが日本の経済停滞の原因になっている可能性がある、と指摘し、日本の大学の再設計を提唱されています。
The closed nature of Japanese universities in linguistic terms could be the cause of the nation’s economic slump. In order to create high-tech devices in the web era, it is necessary to organically integrate knowledge from many fields. Graduates of Japanese universities are unable to tap into the potentially lucrative integration of today’s state-of-the-art disciplines because the linguistic divide between the natural sciences (English-oriented for papers) and the humanities (Japanese-oriented) makes it difficult to communicate beyond borders.
茂木さんご自身の翻訳全文→ 「(日本の大学は)言語的に閉じている」(茂木 健一郎)| BLOGOS(ブロゴス)
ちなみに、東大の登場する27位までの順位は以下の通りとなっていました。
- カリフォルニア工科大学(California Institute of Technology)
- オックスフォード大学(University of Oxford)(同率2位)
- スタンフォード大学(Stanford University)(同率2位)
- ハーバード大学(Harvard University)
- マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)
- プリンストン大学(Princeton University)
- ケンブリッジ大学(University of Cambridge)
- インペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College London)
- カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)
- シカゴ大学(University of Chicago)
- エール大学(Yale University)
- チューリッヒ工科大学(ETH Zürich – Swiss Federal Institute of Technology Zürich)
- カリフォルニア大学ロサンゼルス校 / UCLA(University of California, Los Angeles)
- コロンビア大学(Columbia University)
- ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)
- ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)
- ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(University College London)
- コーネル大学(Cornell University)
- ノースウエスタン大学(Northwestern University)
- ミシガン大学(University of Michigan)
- トロント大学(University of Toronto)
- カーネギーメロン大学(Carnegie Mellon University)
- デューク大学(Duke University)
- ワシントン大学(University of Washington)
- テキサス大学オースティン校(University of Texas at Austin)(同率25位)
- ジョージア工科大学(Georgia Institute of Technology)(同率25位)
- 東京大学(University of Tokyo)
World University Rankings 2012-2013
上位のほとんどが米英の大学で占められていること以上に、名門ハーバード大学が4位に落ちていることが驚きですが、下のビデオによると、トップは僅差のよう。ハーバード大学の評価が落ちたというよりは、オックスフォード大学などの評価が上がったと捉える方が正しいみたいです。
ビデオでは、Times Higher Education の編集長フィル・バティー(Phil Baty)さんが「今後はアジアの大学に注目」と言っていたのも気になりました。
今年度の結果を見てみても、シンガポール国立大学は昨年の40位から29位に、中国の清華大学は71位から52位に、ソウル大学は124位から59位に大幅アップしています。
今のところアジアのトップはまだ東京大学ですが、来年あたりどうなっているかわかりませんね〜
ちなみに、このランキングは、”Teaching”(30%)、”International outlook”(7.5%)、”Industry income”(2.5%)、”Research”(30%)”Citations”(30%)の5つの基準をもとに決定されています。5つの基準に分かれているとはいえ、「教育」「研究」「論文引用」が特に重視されているようです。