アカデミー賞主演女優賞に最高齢 & 最年少でノミネート!エマニュエル・リヴァ & クワヴェンジャネ・ウォレスに注目
米時間1/10(木)に発表されたアカデミー賞ノミネート。その中で最も話題を集めているカテゴリの一つが、主演女優賞です。
今年主演女優賞にノミネートされたのは、
- ジェシカ・チャステイン(Jessica Chastain)- 『ゼロ・ダーク・サーティ(Zero Dark Thirty)』(2月15日日本公開)
- ジェニファー・ローレンス(Jennifer Lawrence)- 『世界にひとつのプレイブック(Silver Linings Playbook)』(2月22日日本公開)
- エマニュエル・リヴァ(Emmanuelle Riva)- 『愛、アムール(Amour)』(3月9日日本公開)
- クワヴェンジャネ・ウォレス(Quvenzhané Wallis)- 『ハッシュパピー バスタブ島の少女(Beasts of the Southern Wild)』(4月日本公開)
- ナオミ・ワッツ(Naomi Watts)- 『インポッシブル(The Impossible)』(2013年日本公開)
の5名。このうち、エマニュエル・リヴァが85歳、クワヴェンジャネ・ウォレスが9歳ということで、なんとアカデミー賞主演女優賞史上最高齢 & 最年少のノミネートとなりました。
<エマニュエル・リヴァ>
私のいるところではまだ 『愛、アムール』は公開されていないのですが、ニューヨーク・タイムズ紙(The New York Times)のインタビュー記事『Looking Directly at Life’s Decline』(2012年5月)によると、ミヒャエル・ハネケ(Michael Haneke)監督は脚本を執筆する際、はじめから夫役にはジャン=ルイ・トランティニャン(Jean-Louis Trintignant)を想定していたそう。
でも妻役は決まっていなかったため、オーディションが行われました。この時、かなり早い段階でハネケ監督はエマニュエル・リヴァを気に入っていたそうです。演技力ももちろんですが、何といってもジャン=ルイ・トランティニャンと組んだ時に2人が「魅力的でごく自然な夫婦に見える」というのが大きな理由やったとか。
記事の中でハネケ監督は「若い頃、『二十四時間の情事』という映画で彼女に魅了されたけれども、それから見かけなくなってしまった(As a young man, I’d been captivated by Emmanuelle Riva in “Hiroshima Mon Amour” but after that I lost her from view)」と語ってはりますが、実際彼女はここ20年映画に出演してはりませんでした。自分に合う映画の役を見つけるのに苦労した時期があったそうで、しばらく活躍の場を舞台へ移し、そのあと詩の活動に従事していたそうです。
それで80歳をすぎて映画に復活し、最高齢でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされるんやから、あっぱれです。
ちなみに、先ほどのニューヨーク・タイムズ紙のインタビュー記事によると、この映画はハネケ監督の個人的な経験がもとになっているそうですが、主人公の2人はハネケ監督の両親をモデルにしているわけではないとのこと。ただ、アパートはハネケ監督の両親が住んでいたアパートがモデルになっていて、ハネケ監督はオーストリア出身のため、調度品などをフランス風に変更したと語ってはりました。
<クワヴェンジャネ・ウォレス>
彼女もエマニュエル・リヴァと同様、主役の座をオーディションで勝ち取った一人。All About のインタビュー記事『Exclusive Interview with ‘Beasts of the Southern Wild’ Director Benh Zeitlin』によると、ベン・ザイトリン(Benh Zeitlin)監督が会ったのは4000人で、Yahoo! Movies の記事『Five things you need to know about youngest Oscar nominee Quvenzhané Wallis』(2013年1月)によると『ハッシュパピー バスタブ島の少女』のオーディション枠は6〜9歳やったそうですが、母親が年齢をちょいとごまかし、当時5歳にして役を見事ゲットしはります。
クワヴェンジャネ・ウォレスは映画の撮影が行われたニューオリンズ州の郊外にあるホーマという土地の出身で、それまで演技経験はありません。ザイトリン監督は、地元の人々を起用することに強いこだわりがあったようで、AV Club の記事『The director and stars of Beasts Of The Southern Wild discuss mining realism from fantasy』によると、ハッシュパピー(Hushpuppy)の父ウィンク(Wink)を演じたドワイト・ヘンリー(Dwight Henry)さんは、もともとオーディション会場の向かいのパン屋の主人やったそう。
演技の経験が全くない2人の素質を最大限にいかすべく、ザイトリン監督はたくさん話し合いをし、「この2人だったらここではこんな反応をするかもしれない」といって脚本を変更したり、「このセリフを自分の言葉で言ってみてください」と言ってセリフを変えたりしながら、登場人物の人柄と2人のパーソナリティーをどんどん融合していったそうです。
私はこの映画を映画館で観ましたが、予備知識がゼロだったので、物語については正直あまり意味がよくわかりませんでした。でも、ニューオリンズ州と言えば、ハリケーンの多い場所。この物語の舞台となっている架空のバスタブ島も、嵐の影響で島が水に沈むという危機にさらされます。先ほどの AV Club の記事によると、元パン屋のドワイト・ヘンリーさん自身も2歳の時に似たような体験をしたそうで、ニューオリンズ州の人々にとって自然の脅威はものすごく身近なのだと再認識。同時に、そのような脅威をハッシュパピーという子どもの視点でファンタジーたっぷりに描くことによって、非日常的な状況の中でたくましく生きる土地の人々をより生き生きと、ダイナミックに描くことに成功しているのだと思い至りました。
私が最も感心したのは、この映画が時系列で撮られているということ。映画によっては、シーン別にばらばらに撮っていって最後につなぎ合わせるものも多いですが、この作品は始めのシーンから順番に撮っているので、クワヴェンジャネ・ウォレスの映画の中での成長と実際の成長が見事に合致しています。最初と最後で全然彼女の顔つきが違うというのは、物語上においてもかなり説得力がありました。
というわけで、2人とも本当に素晴らしいので、主演女優賞の発表がめちゃくちゃ楽しみです。どちらかが主演女優賞を受賞することになるのでしょうか??
第85回アカデミー賞ノミネート一覧→ 2013 Oscar Nominees | 85th Academy Awards Nominees
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