年末年始の経済ニュースで何度も耳にした「fiscal cliff」の意味とは?

年末にニュースをチェックしていて、何度も耳にした “fiscal cliff” という単語。次のニュースにも、”fiscal cliff” という単語が登場しています。

fiscal cliff


私は経済にはあまり詳しくないので、最初「財政の崖って何やねん」と思っていたのですが、日本のニュースもチェックしてみたらやはり「財政の崖」と訳されていたので、今日はこの時事用語をがんばって理解してみたいと思います。

ポイント

“fiscal cliff” については、いろんな解説が出ているのですが、ワシントン・ポスト紙(The Washington Post)のこのビデオがわかりやすかったです。

  1. 「財政の崖(fiscal cliff)」とは
  2. ビデオで解説しているワシントン・ポスト紙のエド・オキーフ(@edatpost)連邦議会担当記者によると、”a series of budget cuts and tax increases” ということで、一連の予算削減や増税のことなんやそう。

    「アルマゲドン(Armageddon)」ならぬ “Taxmageddon” という表現も出てきていますが、同じワシントン・ポスト紙の記事『The Fiscal Cliff: Absolutely everything you could possibly need to know, in one FAQ』(2012年11月)では “austerity crisis(緊縮財政危機)” と説明されていました。もともと “fiscal cliff” は米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ(Bernanke)議長の発言から出回るようになった言葉やそうですが、いかにも「崖っぷち」という状況が伝わってきます。

    なんでこういう事態が起きるのかというと、ブッシュ政権の時に制定された減税策が、オバマ政権の時に一度失効しそうになって延長され、再び失効するのが2012年末なんですね!だからニュースで年末年始めっちゃ話題になってたんや〜

  3. 「財政の崖(fiscal cliff)」を越えると、どうなるのか
  4. 先ほどのワシントン・ポスト紙の記事『The Fiscal Cliff: Absolutely everything you could possibly need to know, in one FAQ』によると、まず5000億ドルの増税と、2000億ドルの歳出削減(spending cut)が始まります。これは GDP(国内総生産)の4%に相当します。

    具体的にいうと、オキーフ氏が話しているように、これまで引き下げられていた投資所得(investment income)率や遺産税(estate tax)、贈与税(gift tax)などがまた上がり、夫婦世帯が合算して納税申告する場合に税率が高くなるマリッジ・ペナルティー(marriage penalty)も元通りに復活します。また、児童税額控除(child tax credit)もほぼ半減すると言われています。

    これにより経済状況が厳しくなるので、失業率が9%を超えたり、不況(recession)を招いたりすると予想されています。

  5. 「財政の崖(fiscal cliff)」を越えないようにするためには
  6. 議会がなんらかの策を講じなければ、上記のような緊縮財政が年明けとともに自動的に始まるので、なんとかする必要があるんですが、民主党と共和党の間で主張が食い違っているため、もつれこんでいます。

    下のエコノミスト誌(The Economist)のビデオによると、

    <民主党の主張>

    • 富裕層がもっと税を払うようにする(The rich pay more in taxes)
    • 最高所得税率を引き上げる(Higher top-rate of income tax)

    <共和党の主張>

    • 所得税率を凍結させる(Freeze on income tax rates)
    • 社会保障などの給付金制度に対する支出を抑える(Less entitlement spending)

    という点に主な相違があるようです。

  7. 「財政の崖(fiscal cliff)」について、結局何が起きているのか
  8. 最初のビデオでも報道されているように、「財政の崖」の回避に向けた法案がまず、上院(Senate)で1日に賛成多数で可決されました。

    下のビデオによると、同法案の内容は以下の通り。

    • 今後10年間で6000億ドルの増税(Raise taxes by 600 billion over ten years)
    • 年収40万ドル以下の個人(夫婦世帯の場合は年収45万ドル以下)に対しては、これまでの減税策を延長(Extends tax cuts for those under $400,000 & Extends tax cuts for couples under $450,000)
    • 株式譲渡益や配当金に関する税は引き上げ(Taxes raised on capitol gains and dividends)
    • 代替ミニマム税の恒久的な修正措置(Permanently addresses alternative minimum tax)
    • 大学の授業料や児童などに対する税額控除を一部延長(Extends some tax credits)
    • 失業保険給付の1年延長(Extends jobless benefits for one year)
    • 国防費などの強制歳出削減も2ヶ月延期(Two month delay in cuts to Pentagon, other agencies)
    • メディケア(高齢者向け公的医療保険)患者の診療報酬削減措置の回避(Blocks cut in medicare payments to doctors)
    • 給与税の回復(Restore the payroll tax)

補足

この法案はこの後、下院(House of Representatives)も通過しました。あとはオバマ大統領の署名待ちとなっています。 

というわけで、一時的に危機は免れたようですが、これで完全に解決したわけではないので、まだしばらく “fiscal cliff” という単語は見聞きすることになりそうです。

復習

Q. 最初のビデオで年明け3時間前にジョー・バイデン(Joe Biden)副大統領(vice president)が記者団に “Happy New Year!” と言ってはりますが、年明け前でも “Happy New Year!” と言えるのでしょうか?

A. 新年の挨拶は「Happy New Year!」それとも「A Happy New Year!」?

※アイキャッチ画像:By StockMonkeys.com [CC-BY-2.0], via Flickr