年末年始の経済ニュースで何度も耳にした「fiscal cliff」の意味とは?
年末にニュースをチェックしていて、何度も耳にした “fiscal cliff” という単語。次のニュースにも、”fiscal cliff” という単語が登場しています。
私は経済にはあまり詳しくないので、最初「財政の崖って何やねん」と思っていたのですが、日本のニュースもチェックしてみたらやはり「財政の崖」と訳されていたので、今日はこの時事用語をがんばって理解してみたいと思います。
ポイント
“fiscal cliff” については、いろんな解説が出ているのですが、ワシントン・ポスト紙(The Washington Post)のこのビデオがわかりやすかったです。
- 「財政の崖(fiscal cliff)」とは
- 「財政の崖(fiscal cliff)」を越えると、どうなるのか
- 「財政の崖(fiscal cliff)」を越えないようにするためには
- 富裕層がもっと税を払うようにする(The rich pay more in taxes)
- 最高所得税率を引き上げる(Higher top-rate of income tax)
- 所得税率を凍結させる(Freeze on income tax rates)
- 社会保障などの給付金制度に対する支出を抑える(Less entitlement spending)
- 「財政の崖(fiscal cliff)」について、結局何が起きているのか
- 今後10年間で6000億ドルの増税(Raise taxes by 600 billion over ten years)
- 年収40万ドル以下の個人(夫婦世帯の場合は年収45万ドル以下)に対しては、これまでの減税策を延長(Extends tax cuts for those under $400,000 & Extends tax cuts for couples under $450,000)
- 株式譲渡益や配当金に関する税は引き上げ(Taxes raised on capitol gains and dividends)
- 代替ミニマム税の恒久的な修正措置(Permanently addresses alternative minimum tax)
- 大学の授業料や児童などに対する税額控除を一部延長(Extends some tax credits)
- 失業保険給付の1年延長(Extends jobless benefits for one year)
- 国防費などの強制歳出削減も2ヶ月延期(Two month delay in cuts to Pentagon, other agencies)
- メディケア(高齢者向け公的医療保険)患者の診療報酬削減措置の回避(Blocks cut in medicare payments to doctors)
- 給与税の回復(Restore the payroll tax)
ビデオで解説しているワシントン・ポスト紙のエド・オキーフ(@edatpost)連邦議会担当記者によると、”a series of budget cuts and tax increases” ということで、一連の予算削減や増税のことなんやそう。
「アルマゲドン(Armageddon)」ならぬ “Taxmageddon” という表現も出てきていますが、同じワシントン・ポスト紙の記事『The Fiscal Cliff: Absolutely everything you could possibly need to know, in one FAQ』(2012年11月)では “austerity crisis(緊縮財政危機)” と説明されていました。もともと “fiscal cliff” は米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ(Bernanke)議長の発言から出回るようになった言葉やそうですが、いかにも「崖っぷち」という状況が伝わってきます。
なんでこういう事態が起きるのかというと、ブッシュ政権の時に制定された減税策が、オバマ政権の時に一度失効しそうになって延長され、再び失効するのが2012年末なんですね!だからニュースで年末年始めっちゃ話題になってたんや〜
先ほどのワシントン・ポスト紙の記事『The Fiscal Cliff: Absolutely everything you could possibly need to know, in one FAQ』によると、まず5000億ドルの増税と、2000億ドルの歳出削減(spending cut)が始まります。これは GDP(国内総生産)の4%に相当します。
具体的にいうと、オキーフ氏が話しているように、これまで引き下げられていた投資所得(investment income)率や遺産税(estate tax)、贈与税(gift tax)などがまた上がり、夫婦世帯が合算して納税申告する場合に税率が高くなるマリッジ・ペナルティー(marriage penalty)も元通りに復活します。また、児童税額控除(child tax credit)もほぼ半減すると言われています。
これにより経済状況が厳しくなるので、失業率が9%を超えたり、不況(recession)を招いたりすると予想されています。
議会がなんらかの策を講じなければ、上記のような緊縮財政が年明けとともに自動的に始まるので、なんとかする必要があるんですが、民主党と共和党の間で主張が食い違っているため、もつれこんでいます。
下のエコノミスト誌(The Economist)のビデオによると、
<民主党の主張>
<共和党の主張>
という点に主な相違があるようです。
最初のビデオでも報道されているように、「財政の崖」の回避に向けた法案がまず、上院(Senate)で1日に賛成多数で可決されました。
下のビデオによると、同法案の内容は以下の通り。
補足
この法案はこの後、下院(House of Representatives)も通過しました。あとはオバマ大統領の署名待ちとなっています。
というわけで、一時的に危機は免れたようですが、これで完全に解決したわけではないので、まだしばらく “fiscal cliff” という単語は見聞きすることになりそうです。
復習
Q. 最初のビデオで年明け3時間前にジョー・バイデン(Joe Biden)副大統領(vice president)が記者団に “Happy New Year!” と言ってはりますが、年明け前でも “Happy New Year!” と言えるのでしょうか?