日本のホストクラブに迫る海外ドキュメンタリー映画『大阪恋泥棒』
今週けっこう忙しくて帰りが遅くなる日が多かったんですけど、ある日帰ってきたら、部屋のテレビから日本語が聞こえてきました。
すぐにジェガーさんの声。「日本人の男の子ってほんまにみんなファイナルファンタジー(Final Fantasy)みたいやねんなー!」
意味がわからずテレビのところまで行くと、画面に日本のホストが映っています。
「いや、この人らは特別やからー!」
するとジェガーさん、
「日本にはホストっていう人たちがいるんやな〜」
「アメリカにはホストおらんの?」
「ホステスはいるけど、ホストはおらんのちゃうかな」
私、ホストっててっきり外国からきた文化やと思っていました。
画面に映っている日本のホストは関西弁をしゃべっています。ジェガーさんによると、『大阪恋泥棒(The Great Happiness Space: Tale of an Osaka Love Thief)』(2006・日本未公開)というドキュメンタリー映画を観ているとのこと。私も途中からですが、一緒に観てみました。
冒頭を見逃したので、しばらく状況がわかりづらかったのですが、どうやら大阪・ミナミにある『ラッキョ』というホストクラブが取材対象になっている様子。2006年の映画なので、今はまた状況が違うと思いますが、当時大阪には100軒くらいホストクラブがあって、その中でも『ラッキョ』は最も売れている店の一つだったようです。
道頓堀行くと「ホストみたいな人多いな〜」と思っていましたが、やっぱりミナミはホストクラブ激戦区なんですね〜(2:52)。
この映画では、その『ラッキョ』の中でもカリスマ的存在の壱世というホストを中心に、他のホストや客の女性を取材し、ホストクラブの仕組みを解いていきます。インタビュアーの質問が日本語だったので、日本人が制作しているのかと思いきや、制作・監督はアメリカ在住のイギリス人ジェイク・クレネル(Jake Clennell)さん。本業はドキュメンタリー映画などの撮影監督みたいで、この作品が監督デビュー作となっています。もちろん、本作の撮影も本人が担当。
撮り方も見せ方もうまいですが、何より感心したのは、本音の引き出し方。海外向けの取材ということで、インタビューされている方も本音を語ることにあまり抵抗がないように見えました。映画を観るまで私にとって一番不思議だったのは「どうしてホストにハマるのか」「ホストにつぎ込むお金はどこからきているのか」ということだったのですが、常連客の話を聞いていると表面的な理由から少しずつ複雑な背景事情が見えてきて、どの客も意識的にせよ無意識的にせよ同じような負のスパイラルに陥っていることに切実な問題を感じました。
ちなみにこの映画、2006年のエディンバラ国際映画祭(Edinburgh International Film Festival)で長編ドキュメンタリー賞を受賞。同年の英国インディペンデント映画賞(British Independent Film Awards)英ドキュメンタリー賞にもノミネートされています。
日本人の私が見ても衝撃的だったのに、ホストクラブに馴染みのない外国の人たちが彼らを観て一体どんな感想を持ったのか、とても気になります。ちなみにジェガーさんにとって一番衝撃的だったのは、やっぱり彼らの “見た目(とりわけ髪型)” だったみたいです。
※補足:邦題は『大阪恋泥棒』となっていますが、日本では公開されていないようです。