口にするのは要注意!日常会話でよく耳にする「pain in the ass」の意味とは?

今月アメリカの一部の都市で上映が始まり、私のいるところでは先週公開となったポール・トーマス・アンダーソン(Paul Thomas Anderson)監督の最新作『ザ・マスターThe Master)』(日本は来年3月22日公開)。

I'm still here

予告編が公開された時に一度紹介して以来、めちゃくちゃ楽しみにしていたので、さっそく公開直後にジェガーさんと観に行ってきました!

この作品は65/70ミリフィルムで撮影されているので、映画もやっぱり70ミリフィルムで上映してくれるところで観たい・・・!

2という思いを胸に2人でバスに乗って出かけていったのですが、そのバスの中でベネチア映画祭(Venice Film Festival)の記者会見(press conference)のビデオを発見して観ていたところ、ポール・トーマス・アンダーソン監督が主演のホアキン・フェニックス(Joaquin Phoenix)について

When I was writing the film I was thinking about Joaquin to be in it, I was also thinking about Phil the whole time but also thinking about Joaquin to be in it. I had asked him to be in just about every other movie that I made, and he said no–little bit of a pain in the ass, but it’s worth it–and he said yes this time.(2:43)

と言っていました。

ポイント

“pain in the ass” は「厄介」という意味で、日常生活ではよく使われています。が、”ass(尻)” という言葉はあまり聞こえがよくないので、口にするのは避けた方が無難です。同じ表現で “pain in the neck” というのがあるので、私はこちらを使うようにしています。

pain in the ass | The Free Dictionary

pain in the ass: something or someone that causes trouble; a source of unhappiness

pain in the neck | The Free Dictionary

  1. a bothersome annoying person
  2. something or someone that causes trouble; a source of unhappiness

(首の痛み、という表現が面白いですね!たしかに首の痛みはほんま厄介です。この表現も日常生活で本当によく使われています。人にも物事にも両方使えます。)

ではポール・トーマス・アンダーソンにとって一体何が “pain in the ass” やったかというと、主演のホアキン・フェニックスにずっと映画に出てもらいたかったけど、なかなか彼が引き受けてくれなかったこと。それがついに “yes” と言ってもらってほっと一安心だったみたいです。

補足

ホアキン・フェニックスは、2010年に『容疑者、ホアキン・フェニックスI’m still here)』という映画で世間を騒がせましたが、それ以来私はある意味彼を尊敬していました。この人、ただもんやないな、と。
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そしてこの映画を観てさらに尊敬度が上がりました。やっぱりこの人、ただもんやないです。

というのも、ホアキン演じるフレディ(Freddie)の、何か話す時の顔のゆがみ具合が半端じゃないんです。

あと、異様に猫背。映画を観終わった後、思わず「フレディが話す時にめちゃくちゃ顔が歪んでたのと、歩く時にめっちゃ猫背やったんは、やっぱり演技・・・やんな?」とジェガーさんに確かめたほどです。フレディはすごく短気で、感情が高ぶったら頭より体の方が先に反応しちゃうような人なんですが、不器用な性格が話す時にも表情の歪みや歩き方に表れているようで、複雑な人間性がすごく伝わってきました。

一方、フィリップ・シーモア・ホフマン(Philip Seymour Hoffman)演じる新興宗教『The Cause』の教祖ランカスター・ドッド(Lancaster Dodd)のカリスマっぷりも見物。はまり役です。でも、人前ではカリスマに見えても、妻ペギー(Peggy)の方がほんまは実権を握ってんちゃうかと思わせる描写がちらほらあって、時々鳥肌が立ちました。

このペギーを演じるエイミー・アダムス(Amy Adams)がトロント国際映画祭(Toronto International Film Festival)の記者会見で、「(物語の舞台となっている)第二次世界大戦直後というのは、男性が戦争に行っていなくなった中で女性が力をつけ始めた時代、という話をベティ・フリーダン(Betty Friedan)著の『新しい女性の創造(The Feminine Mystique)』で読んで参考にした」(16:53)と語っていたのですが、まさにそういう女性の変化を彼女の演技から感じます。

↑この記者会見にホアキン・フェニックスが出ていないのは、ポール・トーマス・アンダーソンによると “He’s too unpredictable(彼は予測できなさすぎる)” からだそうです(21:55)。

どうしてもランカスター・ドッドと新興宗教『サイエントロジーScientology)』の創始者 L・ロン・ハバード(L. Ron Hubbard)の共通点ばかり強調されがちになって、私も観に行く前は「人はどうやって宗教に関わっていくのか」「宗教は本当に心のよりどころになりえるのか」といったところがテーマとして描かれるのかなと思っていましたが、映画を観た今は、どうしてポール・トーマス・アンダーソンがこの映画を宗教と結びつけられるのを嫌がるのかちょっとわかった気がします。

というわけでこの映画、いろいろ意見はあるみたいですが、私とジェガーさんは大満足でした。私なんか相当期待して観にいったんですけど、その期待を見事に映画が上回ったと思います。予告編だけでも十分雰囲気が出ていますが、映像においても音楽においても演技においても演出においてもほんまに無駄がなくて、上映中一瞬たりとも油断できない映画体験となりました。

ホアキン・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマンはベネチア映画祭で優秀男優賞をダブル受賞していますが、ぜひアカデミー賞にもノミネートしてもらいたいです。

追記

(1.10.2012)
本日、第85回アカデミー賞ノミネートが発表され、主演男優賞にホアキン・フェニックス、助演男優賞にフィリップ・シーモア・ホフマン、そして助演女優賞にエイミー・アダムスがノミネートされました!

関連

  1. 観に行く前に書いた記事はこちら→ 初対面の会話でよく聞かれる「What do you do?」の意味とは?
  2. 映画のサウンドトラックについても取り上げています→ 『ザ・マスター』も『ノルウェイの森』も!サウンドトラックで新たな才能を発揮するレディオヘッドのジョニー・グリーンウッド