映画史上最も素晴らしい映画と、それに対する酷評レビュー
先日、英国映画協会(BFI)が発行している Sight & Sound 誌 が、「批評家が選ぶ映画史上最も素晴らしい映画トップ10(The Critics’ Top 10 Greatest Films of All Time)」と「映画監督が選ぶ映画史上最も素晴らしい映画トップ10(The Directors’ Top 10 Greatest Films of All Time)」を発表しました。
これは1952年から10年ごとに発表されている投票調査(poll)なのですが、今回は一段と話題になりました。というのも、「批評家が選ぶ映画史上最も素晴らしい映画」において、これまでおよそ半世紀ものあいだ王座を守り抜いてきたオーソン・ウェルズ(Orson Welles)監督の『市民ケーン(Citizen Kane)』(1941)がついに取って代わられたからです!『市民ケーン』を抜いて栄光を手にしたのは、アルフレッド・ヒッチコック(Alfred Hitchcock)監督の『めまい(Vertigo)』(1958)。
これまでもランキング入りはしていましたが、毎回少しずつ順位を挙げて首位にたどり着いたみたいです。
この記事では最初このランキングを普通に紹介しようと思っていたのですが、ジェガーさんが Facebook でシェアしていた記事が面白かったので、それを一緒に紹介したいと思います。Ultra Culture の企画記事なんですが、「批評家が選ぶ映画史上最も素晴らしい映画」の10作品に映画データベースサイト IMDb で10点満点中1点の評価をつけた酷評レビューを紹介していくというもの。1点レビューを書いたのは批評家ではなく一般人ですが、どれもユニークです。
一点レビューの元記事→ Sight & Sound’s 10 Greatest Films of All Time, and their one-star IMDb reviews | Ultra Culture(2012年8月)
<批評家が選ぶ映画史上最も素晴らしい映画>
- めまい(Vertigo)1958・アメリカ
- 市民ケーン(Citizen Kane)1941・アメリカ
- 東京物語(Tokyo Story)1953・日本
- ゲームの規則(La Règle du jeu)1939・フランス
- サンライズ(Sunrise: A Song for Two Humans)1927・アメリカ
- 2001年宇宙の旅(2001: A Space Odyssey)1968・アメリカ
- 捜索者(The Searchers)1956・アメリカ
- カメラを持った男(Man With a Movie Camera)1929・ロシア
- 裁かるゝジャンヌ(The Passion of Joan of Arc)1928・フランス
- 8 1/2(8½)1963・イタリア/フランス
これに対して1点レビューをつけた人:
運転シーン多すぎて他の映画100本分の運転シーンよりもたぶん多い
この人のレビューは、半分くらいが運転シーンに関するコメントです。・・・どんなけトラウマになってんねん。でも、もし私がレビューを書いたら、キム・ノヴァク(Kim Novak)のまゆげに関するコメントで半分くらい埋まる可能性があります。
これに対して1点レビューをつけた人:
1941年当時はクラシックやったかもしれんけど・・・今観るとマジ退屈
この人は “boring(退屈)” という単語をレビュー後半で立て続けに使ってはります。ちなみに『市民ケーン』は私もジェガーさんも大好きです。24歳でこんな映画を撮り、新聞王ケーンをここまで貫禄たっぷりに演じるなんてことができたのは、映画史上オーソン・ウェルズだけなんじゃないでしょうか、と熱く語っちゃうくらい好きです。
これに対して1点レビューをつけた人:
半分くらい観て、これは2人の年寄りが家から家を渡り歩いてどれだけ眠れたかについて話している物語だと気づいた
・・・まあそうなんですけど、『東京物語』が好きな立場で一言言わせてもらうと、読みが浅い!でもジェガーさんも2回観て2回とも途中で寝たんですよね・・・。ちなみにこの父親役の笠智衆(りゅう・ちしゅう)は撮影当時49歳。母親役を演じた東山千栄子とはその2つ前の『麦秋(Early Summer)』(1951)で親子関係を演じていたので、『東京物語』を観た時はびっくりしました。
これに対して1点レビューをつけた人:
フランス人の金持ちグループが屋敷で出会って狩りをして、混乱と予期せぬ色恋沙汰が起きまくる
これは正直、このあらすじのまんまだと思います。混乱と予期せぬ色恋沙汰、起きまくりです。ちなみに監督のジャン・ルノワール(Jean Renoir)も「オクターヴ(Octave)」役で出演してはります。衣裳素敵やなと思ってたら、衣裳担当はココ・シャネル(Coco Chanel )でした!
これに対して1点レビューをつけた人:
既婚の農夫と街からやってきた女の話やけど、女は悪女ってすぐわかる。なぜなら煙草を吸っているから
どんな独自理論やねん・・・と思って YouTube のビデオを観てみたら、確かにちょっと悪女の匂いがします。煙草のせいかどうかはわかりませんが・・・。これは私は観ていないのですが、ジェガーさんは2回観たそうです。
これに対して1点レビューをつけた人:
一般的に『視覚芸術の傑作』と言われる場面の多くにおいて、思わず早送りしてた(映画観てて早送りしたの初めて)
私はこれ、初めて観た時に途中で寝ました。リチャード・ストラウス(Richard Strauss)の「ツァラトゥストラはかく語りき(Also sprach Zarathustra)」が始まると起きるのですが、寝て起きて寝て起きての繰り返しで、ある意味早送り状態になっていました。おかげで2回目に映画館で観た時は、全く別の映画を観ている気分でした。映画館で観て最も良かった映画の一つです。
リリース:2009-04-13(Soundtrack)
価格:150円 – (視聴する)
(アルバム:ベスト・サウンドトラック・30・トラックス・プラス 〜オールタイム・ベスト〜の8曲目に収録されています)
これに対して1点レビューをつけた人:
ジョン・ウェイン(John Wayne)の役柄がいかに “ミステリアス” で “複雑” かというのを好む人が多いみたいやけど、正直たいしたことないし、なんでみんながそんなに騒ぐんかようわからん
これ、私観てないんで何とも言えません・・・!
これに対して1点レビューをつけた人:
批評家を鵜呑みにしたらあかん – 批評家はぶっちゃけ駄作を知らんから
ある意味名言ちゃうかと思えるこの一言。確かに批評家の中には何でも褒める人もいますが、これも私観てないんで何ともいえません・・・!
これに対して1点レビューをつけた人:
(ジャンヌ・ダルクを演じた)ルイーズ・ルネ・ファルコネッティ(Renée Jeanne Falconett)の演技は薬物で幻覚症状を引き起こしてる人みたい
これ私、途中で寝ました(ジェガーさんは起きてました)。普段映画観ていて寝ることってあまりないんですが、こうして振り返ってみると、偉大と言われている作品で寝てる確率高めです・・・
これに対して1点レビューをつけた人:
こんなひどい映画を観るくらいなら、小学校の時に友達と一緒に撮ったくだらんビデオを片っ端から観る方がまだまし
これは私とジェガーさん、2人揃って寝ました。私たちは「きっと疲れてただけやって!」と信じ、2回目挑戦を検討中です。
一方、「映画監督が選ぶ映画史上最も素晴らしい映画」においては、なんと小津安二郎監督の『東京物語』が1位を獲得。BFI の記事 によると、外国語映画が首位に輝くのは、1952年に1位に選ばれた『自転車泥棒(Bicycle Thieves)』(1948・イタリア)以来の快挙なんだそう!
<映画監督が選ぶ映画史上最も素晴らしい映画>
- 東京物語(Tokyo Story)1953・日本
- 2001年宇宙の旅(2001: A Space Odyssey)1968・アメリカ
- 市民ケーン(Citizen Kane)1941・アメリカ
- 8 1/2(8½)1963・イタリア
- タクシードライバー(Taxi Driver)1976・アメリカ
- 地獄の黙示録(Apocalypse Now)1979・アメリカ
- ゴッドファーザー(The Godfather)1972・アメリカ
- めまい(Vertigo)1958・アメリカ
- 鏡(The Mirror)1975・ロシア
- 自転車泥棒(Bicycle Thieves)1948・イタリア
これらをまとめて、IBF が発表した「映画史上最も素晴らしい映画トップ50」は以下の通り。
- めまい(Vertigo)1958・アメリカ
- 市民ケーン(Citizen Kane)1941・アメリカ
- 東京物語(Tokyo Story)1953・日本
- ゲームの規則(La Règle du jeu)1939・フランス
- サンライズ(Sunrise: A Song for Two Humans)1927・アメリカ
- 2001年宇宙の旅(2001: A Space Odyssey)1968・アメリカ
- 捜索者(The Searchers)1956・アメリカ
- カメラを持った男(Man With a Movie Camera)1929・ロシア
- 裁かるゝジャンヌ(The Passion of Joan of Arc)1927・フランス
- 8 1/2(8½)1963・イタリア/フランス
- 戦艦ポチョムキン(Battleship Potemkin)1925・ロシア
- アタラント号(L’Atalante)1934・フランス
- 勝手にしやがれ(Breathless)1960・フランス
- 地獄の黙示録(Apocalypse Now)1979・アメリカ
- 晩春(Late Spring)1949・日本
- バルタザールどこへ行く(Au hasard Balthazar)1966・フランス/スウェーデン
- 七人の侍(Seven Samurai)1954・日本
- ペルソナ(Persona)1966・スウェーデン
- 鏡(The Mirror)1975・ロシア
- 雨に唄えば(Singin’ in the Rain)1952・アメリカ
- 情事(L’avventura)1960・イタリア/フランス
- 軽蔑(Contempt)1963・フランス/イタリア
- ゴッドファーザー(The Godfather)1972・アメリカ
- 奇跡(Ordet)1955・デンマーク
- 花様年華(In the Mood for Love)2000・香港
- 羅生門(Rashomon)1950・日本
- アンドレイ・ルブリョフ(Andrei Rublev)1966・ロシア
- マルホランド・ドライブ(Mulholland Dr.)2001・アメリカ/フランス
- ストーカー(Stalker)1979・ロシア
- ショア(Shoah)1985・フランス
- ゴッドファーザー PART II(The Godfather: PART II)1974・アメリカ
- タクシードライバー(Taxi Driver)1976・アメリカ
- 自転車泥棒(Bicycle Thieves)1948・イタリア
- キートンの大列車追跡(The General)1926・アメリカ
- メトロポリス(Metropolis)1927・ドイツ
- サイコ(Psycho)1960・アメリカ
- ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマン(Jeanne Dielman, 23 quai du Commerce 1080 Bruxelles)1975・ベルギー
- サタンタンゴ(Sátántangó)1994・ハンガリー
- 大人は判ってくれない(The 400 Blows)1959・フランス
- 甘い生活(La Dolce Vita)1960・イタリア
- イタリア旅行(Journey to Italy)1954・イタリア/フランス
- 大地のうた(Pather Panchali)1955・インド
- お熱いのがお好き(Some Like It Hot)1959・アメリカ
- ガートルード(Gertrud)1964・デンマーク
- 気狂いピエロ(Pierrot le Fou)1965・フランス/イタリア
- プレイタイム(Play Time)1967・フランス
- クローズ・アップ(Close-Up)1990・イラン
- アルジェの戦い(The Battle of Algiers)1966・イタリア/アルジェリア
- ゴダールの映画史(Histoire(s) du cinéma)1998・フランス
- 街の灯(City Lights)1931・アメリカ
- 雨月物語(Ugetsu)1953・日本
- ラ・ジュテ(La Jetée)1962・フランス
The Top 50 Greatest Films of All Time | BFI
いや〜観てない映画いっぱいです!